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東京圏における中古マンションの流通動向New

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 3月号

この記事の概要

  • 東京圏では中古マンションの流通量が2024年に入りピークアウトし反転減少が見られた
  • 流通量を大きく伸ばしてきた1億円以上、7~9千万円台の高額価格帯での反転減少が特徴的

2024年はこれまで流通増を続けてきた高額価格帯で成約件数の反転減少がみられた

東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)における中古マンション(既存マンション)市場では、2024年第1四半期に成約件数が直近のピークを付けた後、第2四半期、第3四半期にかけて落ち込みを見せた[図表1]。2020年中盤から成約件数を大きく伸ばしてきた価格帯※1億円以上、7~9千万円台の高額価格帯での落ち込みが大きいのが特徴として挙げられる[図表2]。新築分譲マンションに対して割安感のある中古マンションにおいて、価格の上昇による買い控え等の行動から一部で実需層の需要減退が発生した状況とも考えられる。

以下、価格帯の高い順に、流通量の動きを新築分譲マンションとの比較を交えながら概観する。

【1億円以上】

  • ・成約件数は、2024年第2四半期に2019年第1四半期の4.0倍へと大きく伸長した[図表2]。この時期に新築分譲マンションの発売戸数は2.3倍まで伸長したが[図表3]、中古マンションではこれを上回る伸びを示した。
  • ・2024年第2四半期をピークに、中古マンションの成約件数は落ち込んでおり、2024年第3四半期時点で、ピークから-13%と1割以上減少した。
  • ・エリア別では、成約件数のほとんどを占める東京都で-12%の減少となった。東京都では中古マンションの成約価格(単価)が2023年以降も大きく上昇している[図表4]。とくに高額物件が多く分布する千代田区、中央区、港区の都心3区でその傾向が顕著であり、価格の急激な上昇から実需層を中心に需要が減退する局面に入った可能性がある。

【7~9千万円台】

  • ・成約件数は、2024年第1四半期に2019年第1四半期の2.4倍へと大きく伸長した[図表2]。この時期に新築分譲マンションの発売戸数に伸びは見られず[図表3]、中古マンションが流通量をカバーしてきた。
  • ・2024年第1四半期をピークに、中古マンションの成約件数は大きく落ち込み、2024年第3四半期時点で、ピークから-26%と1/4ほど減少した。減少幅は全価格帯の中で最も大きくなっている。エリア別では、成約件数の最も多い東京都と2番目に多い神奈川県で、ピークからそれぞれ-27%、-24%と大きく減少している。

【4~6千万円台】

  • ・成約件数は2020年第3四半期以降、比較的安定した推移がみられる[図表2]。2023年以降、新築分譲マンションの発売戸数は減少傾向にあり[図表3]、中古マンションが流通量を下支えしてきた。
  • ・ただし足元で中古マンションの成約件数に減少、頭打ちの傾向がみられる。東京圏全体では、2024年第1四半期から2024年第3四半期にかけて-15%の減少を示した。エリア別では成約件数の最も多い東京都で足元減少傾向にあり、成約件数を伸ばしてきた神奈川県、埼玉県、千葉県でも足元で減少あるいは頭打ちの傾向がみられる。

【3千万円台以下】

  • ・成約件数は漸減傾向にあったものの2022年第3四半期以降、安定的に推移している[図表2]。この時期に新築分譲マンションの発売戸数は減少を続けており[図表3]、中古マンションが流通量をカバーしている。
  • ・エリア別では全エリアとも漸減傾向にあったものの2022年第3四半期以降、安定的に推移している[図表5]。
  • ※3千万円台以下/4~6千万円台/7~9千万円台/1億円以上の4区分とした。中古マンションでは、~4,000万円/~7,000万円/~10,000万円/10,000万円~を当てはめ、新築分譲マンションでは、4000万円以下/7000万円以下/9999万円以下/10000万円以上を当てはめた。

[図表1]中古マンションの成約件数推移

データ出所:(公財)東日本不動産流通機構「マーケットウォッチ」

[図表2]中古マンションの成約件数(指数)推移

データ出所:(公財)東日本不動産流通機構「マーケットウォッチ」

[図表3]新築分譲マンションの発売戸数(指数)推移

データ出所:(株)不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向」

[図表4]中古マンションの価格(成約坪単価)推移

データ出所:(公財)東日本不動産流通機構「マーケットウォッチ」

[図表5]中古マンションの価格帯別エリア別の成約件数推移

データ出所:(公財)東日本不動産流通機構「マーケットウォッチ」

新築分譲マンションの発売戸数

東京圏の分譲マンション発売戸数は、2021年後半から2022年にかけて増加したものの、2023年から減少傾向に入り、2024年も9月まで減少基調で推移した。

2023年以降の傾向を価格帯別にみると、4~6千万円台の減少が大きく、3千万円台以下でも発売戸数の落ち込みが顕著となっており、比較的低い価格帯での発売戸数減が目立つ。他方、7~9千万円台、1億円以上では、2023年終盤以降、一段高い水準で推移した。1億円以上では都心部を中心に大量の発売が見られたことで大きく増加した。

以上の動きは、建設費の上昇等に伴い、供給側で採算性の比較的高い高額物件の発売にシフトしていることも背景となっている。

[図表6]新築分譲マンションの価格帯別発売戸数推移

データ出所:(株)不動産経済研究所「首都圏新築分譲マンション市場動向」

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成協力:株式会社都市未来総合研究所 研究部

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