2025年も持ち家の取得をはじめ、既存住宅の長寿命化や性能向上に対するさまざまな税制優遇制度が用意されました。毎年見直しがなされる税制ですが、住宅取得にまつわる税制については前年の優遇措置をほぼ踏襲している格好です。ただし2024年は内容や要件が大きく変わったものもあり、古い情報を覚え込んでいる方もいるようです。
確認の意味も含めて、今年こそマイホームを手に入れたいとお考えの方に向け、以下の活用しやすい3つの税制優遇制度をご紹介します。
- ・住宅ローン減税
- ・住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置
- ・既存住宅の子育て対応リフォームに係る特例措置
これらの概要と上手な使い方について個別にご説明していきましょう。
住宅ローン減税は誰もが恩恵を受けられるわけではない!
まず1つ目の住宅ローン減税制度とは、返済期間が10年以上の住宅ローンを活用して、一定の要件を満たした住宅を購入・建設した時、最長13年間、年末時点の住宅ローン残高の0.7%分を所得税から控除できるというものです。ただし、一定の広さや住宅性能などの条件があり、また申込者の年齢や所得によっても差があります。
私の周りでも勘違いされている方が案外多いのですが、2024年より住宅ローン減税は新築住宅・買取再販において省エネ性の高い住宅にしか適用されなくなりました(2023年までに新築の建築確認をした場合を除く)。2025年4月から、新築住宅で一定の省エネ性能の付与が義務化されるため、適用されない新築物件は少ないかと思いますが、今やローンを組みさえすれば半ば自動的に減税されるという仕組みにはなっていないことを知っておく必要があります。
(表1)住宅ローン減税(2025年)の概要

- *本制度における「子育て世帯等」とは、「19歳未満の子を有する世帯」または「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯」と規定されています。
- *新築の「その他の住宅」について、2023年までに建築確認を実施したものについては住宅ローン減税を使用できますが、現時点からの選択肢としては考えられにくいため、本表から除外しています。
減税の内容について、住宅の仕様や住宅ローンの利用者の属性によって細かく区分されていることが分かるかと思います。簡単に言うと、「①新築住宅・買取再販において住宅に一定の省エネ性能がないと適用されない」「②中古より新築の方が借入限度額が多い」「③子育て世帯には優遇措置がある」、この3点が2025年の住宅ローン減税のポイントといえます。
まず①についてですが、表を見ればお分かりの通り、「その他の住宅」には新築住宅・買取再販において、住宅ローン減税が適用されません。「省エネ基準適合住宅」であることが住宅ローン減税の大前提となっているわけです。この「省エネ基準適合住宅」というのは、省エネ法に基づく「断熱等性能等級」の等級4以上の性能を有している住宅ということです。等級4の基準は1999年に制定されたため、2000年以降に建てられた住宅が多く適合していますが、これまで義務ではなかったので、すべての2000年以降の住宅が適合しているわけではありません。ただし、中古住宅については省エネ基準を満たしていない「その他の住宅」についても2,000万円の借入限度額が設定されています。
②について、新築と中古住宅とでは減税額や控除期間に差が設けられています。年間の控除額が「その年の年末のローン残高の0.7%」という基本ルールは新築・中古共通ですが、新築が最大13年控除できるのに対し、中古は最大10年になります。また、減税に適用される住宅ローンの借入額についても、新築は3,000〜5,000万円なのに対し、中古住宅は2,000〜3,000万円が限度になっています。
また③ですが、ここでの「子育て世帯」とは、「19歳未満の子を有する世帯」または「夫婦のいずれかが40歳未満の世帯」を指し、該当する方は住宅ローン減税の借入限度額が一般の方より500〜1,000万円アップします。また、通常50㎡以上の住宅でないと適用されませんが、新築に限り、子育て世代については40㎡以上と緩和されており、国が若い世代への住宅取得を後押ししている格好です。
贈与税の非課税枠も省エネ住宅の方が優遇
「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」とは、住宅の新築取得・増改築のための資金について、父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受けた場合に、一定額までの贈与につき贈与税が非課税になる制度です。贈与を受けた方の合計所得が2,000万円以下、建築・取得する住宅の床面積が50㎡以上であること(所得が1,000万円以下の場合は40㎡以上)などの要件がありますが、通常10%前後の贈与税が住宅取得に限って非課税になるわけで、親からの住宅資金援助を期待できる方にとってはぜひとも使いたい制度です。
(表2)住宅取得等資金に係る贈与税の非課税限度枠

(表3)住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置における「質の高い住宅」の基準(以下のいずれかに該当すること)

見ての通り、性能の高い住宅の方が非課税枠が大きくなっており、こちらも高性能の住宅取得への誘導がうかがえます。ただし、省エネ性能が低くても一定の耐震性能があれば適用可能など、物件の選択肢はそこそこ広いように思います。
築古の中古住宅はリフォームで性能向上させたい
前記2つと違い、ご紹介する3つ目の「既存住宅の子育て対応リフォームに係る特例措置」は、その名の通り既存住宅を対象とした優遇税制であり、住宅取得でなく持ち家のリフォームに適用される制度です。また本制度は、先に紹介した「子育て世帯」が、子育てに対応した住宅にするためのリフォームについて、標準的な工事費用相当額の10%などを所得税から控除するというものです。
一般の方でも、耐震・省エネ・バリアフリーなどの性能向上リフォームを行うことで、所得税の控除などが受けられますが、この制度は、子育て世代の居住環境の改善の観点から、性能向上リフォームだけでなく、一定の子育て対応改修工事も対象に加わっており、より手厚い支援になっています。
(表4)「既存住宅の子育て対応リフォームに係る特例措置」の主な控除額

- *カッコ内は太陽光発電設備を設置する場合
- *その他、対象工事の限度額超過分及びその他増改築等工事についても一定の範囲まで5%の税額の控除が受けられる
(図1)子育てに対応した住宅への主なリフォームイメージ

以上、2025年に活用可能な3つの税制優遇制度をご紹介しましたが、適用に当たって個々に細かな要件が課せられていますので、各制度の詳細については国土交通省のWEBサイトなどでご確認ください。
最後に、物件価格や住宅ローン金利の上昇が続く昨今、これらの制度を存分に活用してコスパの高いマイホームを購入したいとお考えでしたら、原則として基本性能の高い物件を選びたいところです。中古住宅であれば、さしずめ以下のような選択肢が挙げられるでしょう。
- ・現行の省エネ性能基準を満たした物件を選ぶ(断熱等性能等級4以上。2000年以降の物件に多い)
- ・買取再販物件など、住宅性能を高めた「リフォーム/リノベ済み物件」を選ぶ。ただし内装や設備更新だけの“お化粧リフォーム”だけではダメ
- ・築古の中古住宅を選ぶ場合、住宅購入後に省エネなどの性能向上リフォームを行う
前出の通り、耐震や断熱性能など、住宅性能の高いストックの方がより多くの優遇措置を受けられます。とくに住宅ローン減税などは、ローン金利のアップ分を補ってあまりある魅力的な制度ですから、価格は多少高めでも現行の省エネ基準を満たした物件を検討することも大切かと思います。逆に、「中古+リフォーム」前提にする選び方も考えられます。物件価格は低い分、省エネなどのリフォームに費用をかけ、リフォーム減税でコスパを高めていくという考え方です。
住宅は高い買い物ですし、こうした減税制度はせっかくの国の後押し策ですから、ぜひ活用を検討ください。