テーマ:マーケット

三大都市圏における賃貸マンションの収益性

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 1月号

この記事の概要

J-REITが大都市圏※1に保有する賃貸マンションの運用実績データによると、

  • 東京圏では、賃貸マンションの収益性は回復基調。平均稼働率は、コロナ前に近い水準~超過水準まで戻しており、賃料収入単価は前年同期比プラスが継続。これにより純収益であるNOIも増加基調。東京23区では、コロナ後の需要回復から、単身向けのワンルーム、コンパクト、ファミリー向けの全タイプで収益性の向上が確認される。
  • 大阪圏では、賃貸マンションの収益性は緩やかに回復。名古屋圏は平均稼働率の上昇が弱く賃料収入単価も低下しており、コロナ後の収益性は弱含んだ状況。

コロナ発生以降の賃貸マンションの収益性を把握するため、J-REITが保有する賃貸マンションの運用実績データ※2を用いて、大都市圏別に平均稼働率、賃料収入単価、NOIの動向を概観する。

【東京圏】

平均稼働率はコロナ下において東京圏の中心エリアである東京23区(都心3区、周辺20区)で落ち込みが大きかったが、両エリアとも2021年下期を底に大きく回復、コロナ前の水準(2018年上期~2019年下期の4半期平均(以下、同様))に近づいている[図表1]。2024年上期時点の平均稼働率は、都心3区がコロナ前の水準から0.46%pt低い97.0%、周辺20区が0.06%pt低い97.2%まで戻している。コロナ下における平均稼働率低下の要因としては、転勤者減少やコロナ不況業種の従業者退去の影響が大きいと考えられる。また、テレワークの進展で郊外への転居の動きが一部に生じたことも平均稼働率低下に作用したと考えられる。経済活動の正常化や東京圏中心部への人口回帰の進展などを背景に、賃貸マンション需要が回復、平均稼働率の回復につながっている。23区以外の東京圏では、コロナ下の落ち込みは軽微で、その後の回復により2024年上期の平均稼働率はコロナ前の水準から0.54%pt高い97.4%となっている。

賃料収入単価は上昇基調にあり、都心3区、周辺20区、23区以外の東京圏ともに2023年上期以降、前年同期比プラスで推移している[図表1]。平均稼働率の回復、賃料収入単価の上昇基調により、純収益であるNOIも改善基調で、3エリアとも2023年上期以降、前年同期比概ねプラスで推移している。

[図表1]東京圏賃貸マンションのエリア別にみた平均稼働率、賃料収入単価、NOI(J-REIT保有物件)

[図表1]東京圏賃貸マンションのエリア別にみた平均稼働率、賃料収入単価、NOI(J-REIT保有物件)

データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」

[図表2]東京23区賃貸マンションの住戸タイプ別にみた平均稼働率、賃料収入単価(J-REIT保有物件)

[図表2]東京23区賃貸マンションの住戸タイプ別にみた平均稼働率、賃料収入単価(J-REIT保有物件)

データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」

平均稼働率の回復幅が大きい東京23区において、住戸タイプ別※3の収益動向を概観する。平均稼働率はワンルームとコンパクトタイプで大きく落ち込んだ後に急回復をみせ、コロナ前の水準に近づいており、ファミリータイプでは上下動を伴いながら比較的安定的に推移している[図表2]。賃料収入単価は3タイプとも直近の2023年下期、2024年上期に上昇傾向にあり、平均稼働率の回復と賃料収入単価の上昇により、総じて収益性は改善傾向にある。主に単身者向けのワンルーム、コンパクトタイプでは、社会経済活動の正常化や東京圏中心部への人口回帰などによる需要回復が収益性を押し上げ、ファミリータイプでは高額化する分譲マンションの取得を見送る層の賃貸マンションへの入居需要も収益性の押し上げ要因になっていると考えられる。

【大阪圏、名古屋圏】

大阪圏では、平均稼働率の緩やかな回復と賃料収入単価の安定的な推移により2023年下期以降NOIは増加基調にあり、収益性は改善基調にある(2024年上期の平均稼働率はコロナ前の水準から0.22%pt低い97.2%)[図表3]。

名古屋圏では、平均稼働率の水準自体が低いことに加え、コロナ前の水準から低位で横ばいに推移している(2024年上期の平均稼働率はコロナ前の水準から0.41%pt低い95.2%)[図表3]。賃料収入単価は低下傾向にありNOIは減少基調で、収益性は緩やかな悪化基調で弱含みの状況にある。

  • ※1:東京圏は東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県。大阪圏は大阪府、京都府、兵庫県、奈良県。名古屋圏は、愛知県、岐阜県、三重県。なお東京圏は、都心3区(千代田区、港区、中央区)、周辺20区(都心3区以外の20区)、23区以外の東京圏(一都3県で東京23区以外)に分けている。
  • ※2:分析期間中においてデータが連続して得られる物件を対象
  • ※3:タイプはおおよその専有面積で区分(ワンルーム:30㎡以下、コンパクト:30㎡超60㎡以下、ファミリー:60㎡超)

[図表3]大阪圏、名古屋圏賃貸マンションの平均稼働率、賃料収入単価、NOI(J-REIT保有物件)

[図表3]大阪圏、名古屋圏賃貸マンションの平均稼働率、賃料収入単価、NOI(J-REIT保有物件)

データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」

大都市圏における賃貸マンションの投資利回り

3大都市圏の賃貸マンションでは、投資利回りの低下が続いている。2024年上期時点で、東京圏は都心3区が3.3%、周辺20区が3.5%と3%台にあり、23区以外の東京圏が4.2%となっている。大阪圏は3.9%、名古屋圏は4.1%と4%前後の水準にある[図表4]。コロナ前2019年上期との比較では、いずれのエリアも約0.5~0.6%ptの下落幅となった。

他方、各エリアとも直近期の2024年上期に大幅に下げ幅を縮め横ばいに転じており、下げ止まりの傾向もみられる。

注)投資利回りはJ-REIT保有物件における期末鑑定評価上の直接還元利回りで代替

[図表4]エリア別の投資利回り推移(J-REIT保有物件)

[図表4] エリア別の投資利回り推移(J-REIT保有物件)

データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成協力:株式会社都市未来総合研究所 研究部

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