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価格上昇続く分譲マンション
東京都区部平均1.1億円に 先行きに不透明感 用地、建築費とも上昇・高止まり

みずほ不動産販売 不動産ニュース 12月号

この記事の概要

  • マンション価格の高騰が続いている。低金利とはいえ、東京都区部の新築マンションの平均価格が1億円を超える水準となると、さすがに購入層は限られ、先行きに懸念が募る。供給が抑制されていることで、根強い実需を背景に市況は大きく崩れてはいないが、その状況は微妙な需給バランスの上に成り立っているようでもある。新築の先行指標といわれる中古市場では、3カ月連続で成約件数が減少するなど、頭打ち現象も表れている。住宅ローン金利は、当初想定より上昇ペースが抑制されているものの、マンション市況もいよいよ正念場を迎えている。

価格上昇続く分譲マンション 東京都区部平均1.1億円に 先行きに不透明感 用地、建築費とも上昇・高止まり

需要、市場先細り懸念も

不動産経済研究所がまとめた「首都圏新築分譲マンション市場動向」によると、24年度上半期(4~9月)の新規発売は8238戸(前年比29・7%減)と過去最少にとどまる一方、平均価格(7953万円)と1㎡単価(120・9万円)は2年連続の上昇で最高値を更新した。

エリア別供給戸数が最も多い都区部(3242戸)は平均1億1051万円(前年比4・5%上昇)、1㎡単価171・5万円(同3・8%上昇)と、平均的な面積の2LDK・3LDK住戸でも1億円を超える高値水準となった。

さすがにここまで価格が高くなると、売れ行きは絶好調とはいかず、月間契約率は首都圏で64・3%、都区部で61・7%と好不調の分かれ目・70%を割り込んでいる。

それでも市況はやや減速程度にとどまり、事業各社も適度の利益が確保できていることから、今のところ“不況感”は出ていない。むしろ現状は縮小均衡ながら「堅調な実需に支えられている」と見る関係者が多い。

だが、こうした契約率70%を確保できない低調さが長引き、販売在庫(9月末時点で5025戸)の増加傾向が続くと市場の空気は一変する。すでに実需層の購入能力と物件価格のかい離による市況の不透明感は、徐々に強まりつつある。

都区部の新築価格が平均で1億1000万円を超え、平均坪単価560万円台にもなると、購入できる需要層は限定される。いくら夫婦共働きのパワーカップルといっても、「合算所得が1500万円程度では、購入できる物件が限られ、決定までに時間がかかったり、最終的に購入をあきらめる人も出ている。物価高の家計への影響もあって、販売環境は少しずつ厳しくなっている」(供給大手担当者)のが現状だ。

そんななかでも事業各社は、需要喚起に躍起だ。商品企画面では多様な幅広い需要層を取り込めるような住戸構成を採用したり、販売手法では事前準備期間を長く取って、見込み客をより多く確保する。また期分けを細分化したりと、以前にも増してきめ細やかな対応で、市況の潮目の変化をしのごうとしている。

そうした効果か、物件ホームページ開設して以降、数千から1万件程度のエントリー客を集める大型人気物件も少なくない。そうした事前人気が今後、着実に成約を伸ばしていくことにつながるかどうか。マンション市場の先行きを占うバロメーターとなりそうだ。

市場急変時と今

マンション各社は、経済情勢や金利、顧客動向から同業他社との競合、用地仕入れから商品企画、建設工事の発注、販売態勢まで、開発を巡る全方位に注意を払いながら事業を推進している。かつて業界はバブル崩壊とリーマンショックという2つの市場急変を経験した。それと同じような急変の兆しはないのか。

バブル崩壊時、業界には価格高騰を「高所恐怖症」と警戒しながら、ほぼ全体で崩壊の痛手を被った苦い経験がある。またミニバブルの後、外資系金融機関の撤退とともに一挙に市場が冷え込んだ2008年のリーマンショック(世界同時金融不況)でも事前の警戒感を生かし切れず、再度憂き目に立たされた。

マンション市場はバブル崩壊を経て、1990年代後半から拡大。供給戸数は年間8万戸前後まで拡大した後、リーマンショックで冷や水を浴びせられた。中堅企業の縮小・撤退もあって市場規模は徐々に縮小傾向をたどった。ここ数年は3万~4万戸時代で、大手企業の事業シェアが拡大して今日に至っている。

国際比較の中ではロンドン、ニューヨークなどの欧米だけでなく、アジア諸国の主要都市と比べて、東京は“割安”と言われる水準にあるが、富裕層・高額所得層はともかく、価格高騰で一般実需層が購入できない水準にあるのは、好ましい状況とは言えない。

実質所得が伸び悩み、むしろ物価高でマイナスが続くなかで、市場は適正な規模や需給バランスを保つことができるのか。マンションを供給する事業者としての社会的責務、将来像をどういう形で描いていくかとも関係してくるだろう。

今のところ、新築マンションは開発適地の不足や競合によって用地高が続く一方、原材料高と人手不足・労務費の上昇による建築コストの上昇・高止まり(都内物件の場合、坪単価は150万円前後とも言われる)が加わり、先行きに価格を引き下げる材料は見当たらない。供給面でも首都圏では年間発売戸数が3万戸台から2・5万戸程度まで減少して縮小均衡が続き、事業者間の販売競争なども起きにくい。

需要者にとっては、厳しい選択の眼を前に、供給側が以前に増して切磋琢磨する状況が好ましいが、ベクトルはその方向にはない。マンション事業の将来にとって好ましいとは言えず、その壁を乗り越え、需要層を拡大していく方向こそが求められるのではないか。

「週刊住宅」(株式会社週刊住宅タイムズ)2024年10月28日号
「住生活月間特集記事」より転載

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