- コロナ禍の影響で2020年度はリフォーム受注額が減少した。2021年度以降は、「巣ごもり」やテレワーク対応のリフォーム需要などで1件あたりの金額が増加、市場規模の拡大が続いている。
- 築浅(築後10年未満)と経年住宅(同25年以上)で、リフォームに多くの費用をかける傾向がある。
- 外壁と屋根のリフォームを含む分、戸建住宅の平均費用はマンションよりも100万円ほど高い。
コロナ禍後、リフォーム受注額の増加続く。一般の住宅に遅れて2023年度は賃貸住宅のリフォームが急伸
コロナ禍によるリフォーム会社の営業自粛や海外工場でのリフォーム関連製品の生産遅延などから、2020年度は住宅リフォーム※の受注額が落ち込んだ[図表1]。しかし翌2021年度には、前年度からの反動に加えて、居室まわりの充実を図るいわゆる「巣ごもり」やテレワーク対応のリフォーム需要などからコロナ前(2019年度)を上回る額に増加し、以降も市場規模が拡大している。2023年度は件数が前年度比で減少したが、1件あたりの金額が伸びて、受注額は[図表1]に示す増改築と改装、維持の3区分ともコロナ後の最高額となった。
リフォームが増加した過程で、まず初めに賃貸用途以外の一般の住宅リフォームが上記の背景で2021年度から増加し、コロナ以前から減少ないし横ばい傾向で推移していた賃貸住宅のリフォームも2023年度に前年比22.8%と急伸した[図表2]。
「巣ごもり」やテレワーク対応に関連する、建具をはじめ水まわり・内装などのリフォームが増勢
2022年度から2023年度にかけて建具のリフォームが2018年度比約5割増で、収納部位や部屋の使い勝手改善が盛んであるとみられる。ほかにも水まわりや内装のリフォームが増加している[図表3]。
マンションと戸建住宅では、トイレや浴室、キッチンなどの水まわりをはじめ多くの箇所でマンションのリフォーム実施率が高く(複数回答、2023年度)、戸建住宅は、マンションにはない工事個所の外壁と屋根のリフォームがある一方、屋内箇所のリフォーム実施率は相対的に低かった[図表4]。
- ※本稿では、住宅建築物の増築・一部改築と改装・改修、維持・修理を住宅リフォームという。
[図表1]住宅リフォームの内容別受注額と受注件数
![[図表1]住宅リフォームの内容別受注額と受注件数](/Portals/0/resources/article/common/images/img_report_202412_01.jpg)
データ出所:国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査」
[図表2]一般の住宅と賃貸住宅のリフォーム受注額
![[図表2]一般の住宅と賃貸住宅のリフォーム受注額](/Portals/0/resources/article/common/images/img_report_202412_02.jpg)
データ出所:国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査」
[図表3]リフォームの部位別にみた件数推移
![[図表3]リフォームの部位別にみた件数推移](/Portals/0/resources/article/common/images/img_report_202412_03.jpg)
データ出所:国土交通省「建築物リフォーム・リニューアル調査」
[図表4]マンションと戸建住宅のリフォーム箇所の違い
![[図表4]マンションと戸建住宅のリフォーム箇所の違い](/Portals/0/resources/article/common/images/img_report_202412_04.jpg)
データ出所:(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査(2023年度)」2024年2月
リフォームの費用は、築浅(築後10年未満)と経年住宅(同25年以上)の二極で高額となる傾向
築後の年数階層別にみたリフォームの平均費用は、5年未満と5年~10年未満が400万円を超えて高く、500万円以上の大規模リフォームの割合も他より大きい傾向だった[図表5]。劣化が進んだ築後25年以上の平均費用も高いが、これらを上回っている。同じ調査でリフォームのきっかけは、『築後10年未満では、居住人数の変化や特定の目的の部屋スペースが欲しいなどが上位』とされる。築浅の住宅で修理・修繕リフォームを迫られるケースは相対的に少なく、リフォームを行う場合は、スペースの有効活用や趣味対応など、任意性の高い大掛かりなリフォームとなる傾向があるためと思われる。
マンションのリフォーム平均費用は300万円前後、戸建住宅は400万円前後
マンションと戸建住宅でリフォーム費用を比較すると、マンションは2021年度から2023年度の平均を均して303.3万円[図表6]、戸建住宅は同400.9万円だった[図表7]。各年度推移もマンションと戸建住宅で異なるが、詳細は不詳で、調査対象のばらつきに起因する可能性が考えられる。
費用を金額階層別にみると、100~300万円の価格帯のリフォームが40%前後の割合を占めて主流だが、マンションでは300万円以上のリフォームが27.9%、対して戸建住宅は38.9%で上回る。戸建住宅では外壁と屋根のリフォーム費用が一般的に100~150万円程とされ、こうした建築関係要素が戸建住宅の費用を押し上げているとみられる。
[図表5]築後年数にみたリフォーム費用
![[図表5]築後年数にみたリフォーム費用](/Portals/0/resources/article/common/images/img_report_202412_05.jpg)
データ出所:(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査」各年度版
[図表6]マンションのリフォーム費用の分布と平均
![[図表6]マンションのリフォーム費用の分布と平均](/Portals/0/resources/article/common/images/img_report_202412_06.jpg)
データ出所:(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査」各年度版
[図表7]戸建住宅のリフォーム費用の分布と平均
![[図表7]戸建住宅のリフォーム費用の分布と平均](/Portals/0/resources/article/common/images/img_report_202412_07.jpg)
データ出所:(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームに関する消費者(検討者・実施者)実態調査」各年度版
成約平均価格が51か月ぶりに下落(8月度)した、首都圏の中古マンション市場
(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が公表する中古マンションの成約状況で、2024年8月度の首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)の成約平均価格が51か月ぶりに下落(前年同月比-1.1%)した[図表8]。成約平均㎡単価は同0.9%で僅かに上昇したが、新規登録件数が6か月連続で減少、成約件数も2か月続いて減少する引き締まり状況での価格下落となったため、一部に市況の調整局面入りを懸念する見方もあった。
10月10日に公表された9月度の実績は、成約平均価格が前年同月比5.3%上昇し、成約平均㎡単価も同4.7%上昇で、市況は持ち直している。しかしながら、住宅ローン金利が上昇に転じた中で、価格上昇が続くことは購入者の取得能力からみて限界があり、先行きの価格動向については慎重な見極めが必要と考えられる。
[図表8]首都圏の中古マンションの成約平均価格とその変動率
![[図表8]首都圏の中古マンションの成約平均価格とその変動率](/Portals/0/resources/article/common/images/img_report_202412_08.jpg)
データ出所:(公財)東日本不動産流通機構「月例Market Watch」直近のデータは2024(令和6)年9月度