テーマ:マーケット

不動産価格指数にみる住宅取引価格の動向

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 10月号

この記事の概要

  • 全国ベースの「不動産価格指数(住宅)※1」は、2020年8月から上昇が続いている。マンションの価格指数の上昇幅が大きいほか、新型コロナ下に小幅マイナスとなった住宅地の価格指数は2021年以降は上昇が継続し、戸建住宅の価格指数は2023年以降はほぼ横ばいの推移となった。
  • 都市圏別には、東京圏、名古屋圏、京阪神圏別ともにマンションの価格指数は上昇が継続した。なかでも、東京圏、京阪神圏では、上昇幅が大きく、住宅地も一貫して上昇したため、価格指数全体を押し上げた。

全国の不動産価格指数(住宅)は上昇が継続。都市圏別では東京圏、京阪神圏の上昇幅が大きい。

全国の不動産価格指数(住宅総合)(2010年平均=100。以下同じ)は、2020年8月以降前年同月比プラスが継続し、今年4月には141.7(前年比4.8%、原数値)となった[図表1、2]。大都市圏や中核都市の駅近など利便性の高い地域のマンション需要の高まりからマンションの価格指数の上昇幅が大きく、2013年3月から134カ月連続の前年比プラスで、4月には202.3となった。住宅地も、新型コロナ感染拡大時に一時的にマイナスとなった以降、プラスが継続した。一方、戸建住宅は2023年以降、ほぼ横ばいで推移した。

東京圏では、マンションの価格指数が一貫して上昇し、住宅地も2021年以降は上昇が続いた。戸建住宅は、2024年以降はほぼ横ばいで、前年比マイナスの月もみられたが、東日本流通機構※2によれば、中古戸建住宅の成約件数は2024年からプラス基調となっており、成約価格も上昇した。リモートワーク定着により広さを確保しやすい戸建住宅へのニーズは一定程度あると思われることなどから、当面の間、戸建住宅の価格指数が大幅に下落する可能性は少ないと考えられる[図表3~5]。

名古屋圏では、取引件数が少なく、価格指数の前年比変動幅は大きく、2023年以降の価格指数は、マンション、住宅地、戸建住宅ともに振れを伴っていたものの、傾向としてみれば、ほぼ横ばいであった。中部圏不動産流通機構※2によれば、中古マンションの成約件数や成約価格は上昇傾向で、中古戸建住宅の成約件数も2023年以降はプラス基調であり、当面、価格指数の大幅な落ち込みの可能性は少ないと考えられる[図表3~5]。

京阪神圏では、マンションの価格指数の上昇幅が大きく、また、住宅地、戸建住宅ともに緩やかな上昇が継続した。近畿圏不動産流通機構※2によれば、中古マンションの成約件数は2023年10月以降は概ね前年を上回り、中古戸建住宅の成約件数も回復がみられており、当面、価格指数の大幅下落の可能性は少ないと考えられる[図表3~5]。

  1. ※1:不動産価格指数(住宅)は、国土交通省が実施する「不動産の取引価格情報提供制度」により蓄積されたデータをもとに、個別物件を同一品質に調整し、月ごとの変化を把握出来るよう作成された指数。内訳は、住宅地、戸建住宅、マンション(区分所有)
    図表1、3は、原数値の後方12カ月移動平均値。2024年4月時点(速報値)までの数値による。指数は、2010年の平均=100
    東京圏:埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県。名古屋圏:岐阜県、愛知県、三重県。京阪神圏:京都府、大阪府、兵庫県
    住宅地は宅地で土地のみの取引。マンションは「区分所有建物」もしくは「区分所有建物の敷地」として所有権移転登記がなされたもので主に中古マンションが対象
  2. ※2:公益社団法人東日本不動産流通機構、公益社団法人中部圏不動産流通機構、公益社団法人近畿圏不動産流通機構による中古マンションや中古戸建住宅の取引は会員不動産会社の登録、報告によるものであり、都市圏における対象県も異なり市場全体の動向を示すものではないが、速報性や需給動向をみる上で参考となるため取り上げている。

[図表1]全国不動産価格指数(住宅)の推移

[図表1]全国不動産価格指数(住宅)の推移

データ出所:国土交通省「不動産価格指数(住宅)」

[図表2]対前年同月比の推移(原数値)

[図表2]対前年同月比の推移(原数値)

データ出所:国土交通省「不動産価格指数(住宅)」

[図表3]東京圏、名古屋圏、京阪神圏(左から)における不動産価格指数の推移(後方12カ月移動平均)

[図表3]東京圏、名古屋圏、京阪神圏(左から)における不動産価格指数の推移(後方12カ月移動平均)

データ出所:国土交通省「不動産価格指数(住宅)」

[図表4]東京圏、名古屋圏、京阪神圏(左から)における不動産価格指数の対前年同月比の推移(原数値)

[図表4]東京圏、名古屋圏、京阪神圏(左から)における不動産価格指数の対前年同月比の推移(原数値)

データ出所:国土交通省「不動産価格指数(住宅)」

[図表5]首都圏、中部圏、近畿圏(左から)における中古戸建住宅の成約件数の推移

[図表5]首都圏、中部圏、近畿圏(左から)における中古戸建住宅の成約件数の推移

データ出所:公益社団法人東日本不動産流通機構・中部圏不動産流通機構「マーケットウォッチ」、
公益社団法人近畿圏不動産流通機構「マンスリーレポート」

地域別(9ブロック)にみた不動産価格指数について

地域別の2024年4月時点における不動産価格指数(2010年平均=100)(後方12カ月移動平均)をみると、マンションの価格指数と住宅総合の価格指数ともに全国を大きく上回ったのは、外国人などに人気の高い観光リゾート地や半導体工場や関連企業が進出する北海道、九州・沖縄の2地域であった。これらの地域は、マンションの価格指数(図表6の縦軸)が上位2位と高水準にあり、住宅総合(図表6の横軸)の価格指数を押し上げた。

マンションの価格指数と住宅総合の価格指数ともに全国を下回ったのは、北陸、四国、中部の3地域であった。これら地域は、住宅地の地価が中心地区の一部を除き下落基調にあり、大都市圏に比べ、一戸建て住宅が好まれる傾向がある。住宅地もほぼ横ばいで、マンションの価格指数の上昇幅が他地域より小さく、住宅総合の価格指数の上昇幅は全国に比べ限定的であった。

[図表6]地域別の不動産価格指数(住宅総合・マンション、2024年4月時点)

[図表6]地域別の不動産価格指数(住宅総合・マンション、2024年4月時点)

データ出所:国土交通省「不動産価格指数(住宅)」

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成協力:株式会社都市未来総合研究所 研究部

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※2024年10月16日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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