このように一戸経営、一棟経営それぞれに独自のメリットが存在するわけですが、一棟マンション/アパート経営ならではのメリットとして「キャッシュフローの安定性」と「運用の自在性」が挙げられるかと思います(もちろん賃貸経営上の努力や工夫、必要な投資が前提になりますが)。
まず「安定性」ですが、一戸経営の場合、入居者が付けば即満室(入居率100%)となりますが、その方が退去すると次の入居者が決まるまで入居率が0になってしまい、その間1円の入金もなくなってしまいます。100か0のわけです。それに対し、一棟経営の場合、入居率100%の維持は難しいものの、1人の賃借人の退去でいきなりキャッシュフローが0になるわけではありません。管理戸数の多いことが投資上、一定のリスクヘッジにつながっていくわけです。
また「運用の自在性」としては、維持管理やバリューアップの時期や規模を自在にコントロールできる点が大きな魅力でありアドバンテージとなります。マンション/アパート問わず、すべての建物や設備は経年とともに劣化や陳腐化は避けられませんが、一棟経営であればそれらの実施時期を自在にコントロールできます。建物の老朽化によって周辺物件との競争力が衰えていくと賃料のダウンなどを迫られたりもしますが、建物の内外装全般のリニューアルによって競争力を回復・向上させることで、賃料アップさえ可能になります。しかも、その実施時期を部屋の稼働状況に応じて変化させたり、実施部位を一部/全部と自在に設定できたりするわけです。一戸経営だと室内のリニューアル期間中は賃料収入がありませんが、一棟経営なら一定のキャッシュフローを確保しつつ、空室が生じた部屋を一室単位でリニューアルさせていくことも可能なわけです。このように、一棟マンション/アパート経営は、一戸経営より戦略的なマネジメントが可能であり、利回りを高める、あるいは安定的に稼働させるなど、ご自身の投資スタイルに合った、より幅広い運用を実現できます。
予算規模やコントロール範囲などの面から、ワンルームマンションなどの一戸経営は不動産投資の入口として取り扱いやすいことは確かです。ただ一方で、物件規模は大きくなるものの、その安定性や運用の自在性に投資上の可能性と魅力を見出し、最初から一棟単位で賃貸経営されるオーナー(投資家)が大勢いることを、これから不動産投資を始めようと考える方にもぜひ知っておいてほしいものです。
一棟マンション/アパート投資を「高所得者やベテラン投資家の経営手法」などと決めつけないことで、不動産投資の選択肢がより幅広く多彩なものになるはずです。