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地価LOOKレポートにみる三大都市圏等の地価動向

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 6月号

この記事の概要

  • 2023年第4四半期(2023年10月1日~2024年1月1日)は、東京圏では前期から上昇が1地区増加し、35地区中34地区が上昇となった。大阪圏と名古屋圏では全地区の上昇が継続した。
  • 全住宅地では、マンション需要に引き続き堅調さが認められ、7期連続で全地区が上昇した。
  • 全商業地では、上昇地区が1地区増加し、57地区中56地区が上昇となった。

2023年第4四半期は地価の回復が継続

2023年第4四半期(2023年10月1日~2024年1月1日。以下、当期という。)の地価LOOKレポート※1によると、東京圏では前期から上昇が1地区増加し、35地区中34地区が上昇となった[図表1]。上昇地区の内、都市機能の更新が進んでいる新宿区歌舞伎町や豊島区池袋東口、中野区中野駅周辺、横浜市西区みなとみらいの商業地では、上昇区分が0~3%から3~6%に移行した[図表2]。国内の富裕層等に加えて外国人観光客による消費が旺盛な状況が続く中央区銀座中央では前期から引き続き3~6%上昇した[図表2]。

大阪圏では2022年第4四半期から全地区の上昇が継続し、京都市の下京区京都駅周辺では前期から引き続き3~6%上昇した[図表1と2]。名古屋圏も2021年第4四半期から全地区の上昇が継続した[図表1]。

地方圏(地方中心都市等)を含めた調査対象の全住宅地※2は、2022年第2四半期から7期連続で全地区が上昇した[図表3]。利便性や住環境に優れた地区におけるマンション需要に引き続き堅調さが認められたことが住宅地の上昇継続の要因で、福岡市の中央区大濠では2022年第1四半期から3~6%以上の上昇が続いている[図表2]。全商業地※2では立川駅至近の立川市立川が横ばいから上昇に転じ、57地区中56地区が上昇となった[図表2と3]。

  1. ※1:先行的な地価動向を明らかにするため、主要都市の高度利用地等を対象に国土交通省が四半期毎に公表する地価動向。対象地区は2022年第1四半期から東京圏35地区、大阪圏19地区、名古屋圏8地区、地方中心都市等18地区の計80地区。東京圏は埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県、大阪圏は京都府、大阪府及び兵庫県、名古屋圏は愛知県。なお、2024年1月1日午前0時以降に発生した能登半島における地震による影響は、本四半期では反映されていない。
  2. ※2:住宅地(住宅系地区)とは高層住宅等により高度利用されている地区、商業地(商業系地区)とは店舗、事務所等が高度に集積している地区

[図表1]三大都市圏の地価動向(上昇・横ばい・下落地区数の割合の推移)

[図表1]三大都市圏の地価動向(上昇・横ばい・下落地区数の割合の推移)

データ出所:国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告 ~地価LOOKレポート~」

[図表2]2023年第4四半期の各地区の詳細情報(抜粋)

[図表2]2023年第4四半期の各地区の詳細情報(抜粋)

データ出所:国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告 ~地価LOOKレポート~」

[図表3]調査対象の全住宅地/全商業地の地価動向(上昇・横ばい・下落地区数の割合)

[図表3]調査対象の全住宅地/全商業地の地価動向(上昇・横ばい・下落地区数の割合)

データ出所:国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告 ~地価LOOKレポート~」

地価と金利の長期推移

国内の地価(全用途)は平成バブル期の1991年をピークに下落に転じ、その後はファンド・バブル期の2006年から2008年等の一時的な上昇を除き、低迷した。しかし、日銀による異次元緩和(大規模な金融緩和策)が始まった2013年以降は、良好な資金調達環境と低金利で運用難の状況下、相対的に安定した収益が得られる国内不動産への投資需要が旺盛となり、新型コロナウイルス感染拡大による2021年の一時的な下落を除き、上昇基調で推移している。

日銀は、今年3月の金融政策決定会合において、「賃金と物価の好循環」の強まりを確認したとして、マイナス金利の解除などの大規模な金融緩和策の転換を決定した。金利の上昇は、不動産取得における借入利息負担を増加させ、物価上昇は建物維持管理コストの増加につながる等、不動産価格の下押し要因となりうる。ただし、日銀は“緩和的な金融環境が継続する”との見解を示しており、不動産市場への影響は軽微にとどまる可能性がある。他方、金利が一定程度上昇する場合でも継続的な企業収益改善、賃金上昇等といった経済の好循環(景気拡大)を背景とする金利上昇であれば物件収益の向上につながり、金利・コスト負担増を相殺して不動産価格を下支えする可能性がある。

[図表4]公示地価(全国・全用途)と長期金利(10年日本国債利回り)

[図表4]公示地価(全国・全用途)と長期金利(10年日本国債利回り)

データ出所:国土交通省「地価公示」、財務省「国債金利情報」

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成協力:株式会社都市未来総合研究所 研究部

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