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この記事の概要
「不動産情報ライブラリ」は、国や自治体のオープンデータを活用し、不動産情報や地域情報を一元化したWebGISシステム(Webをベースとした地理空間情報の統合プラットフォーム)です。確認したい地域にアクセスすることで、そのエリアの防災・都市計画に関する情報や学区、公共施設などの地域・周辺情報や、地価や中古住宅の取引価格などの不動産情報について一元的に確認でき、不動産売買の際にもいろいろ役立つ便利なツールです。
出典:「不動産情報ライブラリ」トップページ
以前は国、都道府県、地方自治体などとバラバラに公開していたため欲しい情報にたどり着くのが非常に手間でしたが、今回1つのシステムに統合されたうえ、1枚の地図上に重ねて閲覧できるようになったことで利便性が格段に高まっています。閲覧はPCのほかスマートフォンやタブレットなどからも可能で、アプリのインストールは不要です。
「不動産情報ライブラリ」でチェックできる情報としては、大きく「地域や周辺施設」に関する情報と、土地や中古住宅などの「不動産価格情報」に大別できます。このうち、地価公示や都道府県地価調査、不動産取引価格情報についてはこれまで「土地総合情報システム」で公開していましたが、「不動産情報ライブラリ」が引き継いだ恰好です。
(表)「不動産情報ライブラリ」の掲載情報
出典:国土交通省「不動産情報ライブラリの概要について」
例えば、皆さんが不動産購入を検討する際は、用途地域を確認したり、ハザードマップで防災面に問題がないかをチェックしたりするかと思いますが、そうした情報を1枚の画面上で確認できます。近隣にどんな医療施設や保育園・幼稚園があるかなどの情報もすぐに分かりますし、公園やバス停留所の近さも確認できます。学区の表示もできるので、希望する学区内に建つマンションを探していくといった、“逆引き”的な検討なども可能です。背景地図には大型スーパーやコンビニエンスストアなど、民間の商業施設なども表示可能です。
「不動産情報ライブラリ」は膨大な情報を網羅したシステムですが、操作はとても簡単です。住所や路線、駅名など入力すれば地図が表示されるので、確認したい情報にチェックを入れることで情報が重ねて表示されていきます。
左が基本情報となる地図情報。右は同じ場所で「用途地域」と「小学校区」について表示させた例になります。1つの学区内でもさまざまな用途地域があり、希望する物件の絞り込みなどに使えそうです。
こちらは基本情報に「陰影起伏図」と「防災情報」を加えて表示した画面。陰影起伏図は土地の高低差の確認が可視化され、坂道の有無の確認などに使えそうです。防災情報は洪水、土砂災害、津波、高潮などさまざまな災害について確認でき、ハザードマップそのものとして活用できます。
また、不動産の価格データベースからは、国土交通省の地価公示や都道府県の地価調査の価格が示されます。中古マンションや戸建て住宅(土地+建物)の不動産取引価格や成約価格情報も年別に検索できますから、検討している物件の価格が周辺相場と比較して高過ぎないかなどのチェックにも使えそうです。
これは、とある地点の「不動産取引価格情報」と「成約価格情報」を抽出した検索結果画面。所在地や駅からの距離、取引金額などでソート(並べ替え)できるので、地域の周辺相場感の確認にも役に立ちそうです。
これらのデータベースは賃貸経営をされている、あるいはこれから開始する不動産投資家にとっても有用な情報の宝庫といえそうです。例えば、鉄道最寄り駅の1日の乗降数を確認できたり、国勢調査に基づく人口分布が確認することができます。人口は500mメッシュで示されるうえ、その人口について0〜14歳、15〜64歳/65歳以上に区分けされており、エリア内にどのような世帯が住まうかの参考情報となり得ます。
出色なのは、将来の推計人口も確認できることで、5年間隔で2050年までの人口が示されるので、賃貸経営される方は、賃貸層に向けて、どのような広さや間取りにニーズがあるのかといったよき検討材料としても活用できそうです。
こちらは現在の地価公示に、2050年の将来人口を重ねて表示した画面。不動産投資家にとっては、近隣で地価の比較的安いエリアを探したり、地域ニーズに合った賃貸物件であるかの参考情報になるのではないでしょうか。
さて、この「不動産情報ライブラリ」に掲載している情報について、国はオープンデータとしてAPI(ソフトウェアやアプリケーション機能の一部を共有すること)で無償公開しており、許諾を得ることで第三者が利活用できるようになっています。そのため、今後はこれらの情報を組み合わせ、あるいは独自情報を加えるなどした新たなサービスが登場していくことも考えられます。
「不動産情報ライブラリ」自身も今後、利用者アンケートなどによってニーズを把握し、より利便性の高いシステムづくりにしていくとのことです。最終的に私たちが当たり前に使うプラットフォームとなるのか、それとも民間の新しいサービスと競い合っていくのかはまだまだ未知数ですが、これからはこうしたワンストップ的なサービスの積極活用が、進んでいくように思います。
谷内 信彦 (たにうち・のぶひこ)
建築・不動産ライター / 編集者。主に住宅を中心に、事業者や住まい手に向けて暮らしや住宅性能、資産価値の向上をテーマに展開している。近年は空き家活用や地域コミュニティーにも領域を広げる。著書に『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP・共著)
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
※ 2024年5月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。
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