“特殊”なエリア・物件に引っ張られているだけともいえる
今や分譲マンションは全国的に“高嶺の花”になってしまったのでしょうか。そうではないことを確かめるためにも、データをもう少し細分化して整理してみましょう。
首都圏に関していえば、新築マンションの平均価格を大きく引っ張っているのは東京23区の億ション群です。中でも山手線の内側にも位置する港区、千代田区、中央区などの都心エリアの物件については、タワーマンションなどが林立するなど超高額物件が目白押しで、これが平均価格を大きく押し上げています。
(表1)東京23区新築マンション平均価格(1位〜10位)

出典:LIFULL HOMES「東京23区新築マンション平均価格(区単位)」2023年6月発表
(表2)東京23区新築マンション平均価格(11位〜23位)

出典:LIFULL HOMES「東京23区新築マンション平均価格(区単位)」2023年6月発表
確かにベストテンの10区については平均価格がみな1億円以上ですし、港区や千代田区、新宿区の3区については平均で2億円超えというすさまじさです。しかし11位以下はぐんと平均値が下がり、足立区や墨田区は5,000万円を下回るなど、23区内であってもエリアによって相当に差異があることが確認できます。
実は2023年には、規格外の新築物件がいくつか竣工しているのです。例えばその1つ、「三田ガーデンヒルズ」(東京都港区)は、一番コンパクトな30㎡の物件が1億500万円からで、最高額物件は45億円という超・超・富裕層向け物件です。それらが第1期の分譲で700戸も供給されたわけですから、市場に特異な数字が残され、首都圏のみならず全国的なマンション価格の平均値を押し上げました。
では、首都圏全体ではどうでしょうか。こちらもやはりエリアによってかなり差がついていることが分かります。
(表3)新築マンションの地区別平均価格(首都圏・2023年)
地区 |
平均価格 |
平均㎡単価 |
対前年上昇率 |
東京都(都区部) |
1億1,483万円 |
172.7万円 |
39.4% |
東京都(都下) |
5,427万円 |
81.5万円 |
3.7% |
神奈川県 |
6,069万円 |
93.2万円 |
12.2% |
埼玉県 |
4,870万円 |
76.7万円 |
-7.5% |
千葉県 |
4,786万円 |
70.2万円 |
4.0% |
首都圏平均 |
8,101万円 |
122.6万円 |
28.8% |
出典:不動産経済研究所「全国 新築分譲マンション市場動向 2023年」2024年1月
東京都の都区部(23区)の突出ぶりがよく分かるかと思います。平均価格、㎡単価、対前年上昇率ともに、首都圏の平均を押し上げているため、こうした数字がひとり歩きして「新築マンションはことさらに高額」のイメージをつくり上げているわけですが、他のエリアはさほど上昇しているわけではありません。埼玉県のように対前年上昇率がマイナスのエリアさえあります。
こうしてみると、新築マンシヨンは確かに上昇基調ではあるものの、都心3区の超富裕層向け物件など一部の突出した数字がひとり歩きし、実態としては全国的なバブル期のような急騰を見せているわけではないことが分かります。