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2023年に公表された1棟賃貸マンションの売買動向New

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 4月号

この記事の概要

  • 売買取引額は6,380億円で、2000年以降で2番目の高水準
  • 複数物件一括取引が売買市場をけん引している構造は変わらないが、2023年は単体取引も伸長
  • 一般事業法人等による取得が前年比3倍と大幅増加

1)売買取引額は6,380億円で、2000年以降で2番目の高水準

都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」によると、2023年に公表された、J-REITや不動産会社などの主に法人による1棟賃貸マンションの売買取引額は6,380億円で、2年連続して増加し、2000年以降で2番目に高い水準であった※1。売買取引件数は222件で、3年連続して増加し、アベノミクスの影響で市況が好転した2013年以降で最多となった[図表1]。

※1:過去最高を記録した2020年は、中国・安邦保険集団から米・ブラックストーン・グループへの一括取引(220棟、推定3,000億円)がけん引した。なお、当該取引は2020年1月に公表されたものであり、その後のコロナショックで一時期取引が低調になった。

[図表1]1棟賃貸マンションの売買取引額と売買取引件数

[図表1]1棟賃貸マンションの売買取引額と売買取引件数

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

2)複数物件一括取引が売買市場をけん引している構造は変わらないが、2023年は単体取引も伸長

2023年は複数物件一括取引の取引総額が3,645億円、単体取引が2,734億円で、いずれも前年比増加した。売買取引件数は複数物件一括取引が25件、単体取引が197件で、売買取引額と同様いずれも前年比増加した。昨今の1棟賃貸マンション売買市場は、外資系法人によるポートフォリオ単位での取引が代表例であるように、複数物件一括取引がけん引する格好となっており、足元でもその構造に変わりはない。2020年以降4年連続で複数物件一括取引の売買取引額が単体物件を上回っているほか、その増減が売買総額の増減と対応しており、複数物件一括取引が市場全体の変動に与える影響が大きいことが継続的な傾向となっている。しかし、2023年の単体取引について、後述のとおり一般事業法人等による取得※2が大きく伸びたことなどを受けて売買取引額が前年比増加したほか、売買取引件数も増加して2013年以降で2番目に高い水準となった[図表2]。

※2:2023年の一般事業法人等による取得21件のうち20件、取得総額159億円のうち154億円は単体取引であった。

[図表2]取引形態(複数物件一括取引/単体取引)別の売買取引額(左)と売買取引件数(右)

[図表2]取引形態(複数物件一括取引/単体取引)別の売買取引額(左)と売買取引件数(右)

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

3)一般事業法人等による取得が前年比3倍と大幅増加

買主の業種別では、取得額、取得件数いずれも、外資系法人以外は前年比増加した。一般事業法人等では、安定した賃貸収益の獲得のために中長期保有を目的に取得した事例が目立ち、取得額、取得件数いずれも前年比3倍に大きく増加した。不動産・建設では、中期的に収益不動産に対して相当額を投資する方針の下に総額100億円超の複数物件一括取引が複数あったほか、1件当たりの取得額は高額ではないものの不動産投資クラウドファンディングで出資を募って物件を取得した事例が相当数みられ、取得額は前年比146%増加し、取得件数は同22%増加した。また、J-REITによる取得も堅調で、取得額、取得件数いずれも前年比5%増であった。他方、外資系法人は取得額、取得件数いずれも前年比減少したものの、100~500億円台の超高額の複数物件一括取引が複数あったことが寄与し、取得額は最多を維持した[図表3]。

売主の業種別では、不動産・建設は売却額、売却件数いずれも前年比減少したものの最多を維持した。従前同様に系列のJ-REITへの売却が一定程度あったほか、外資系法人への高額一括売却事例もあった。また、一般事業法人等でも系列のJ-REITや私募REITへの売却が目立ち、売却額、売却件数いずれも前年比増加し、特に売却件数は2番目に多い業種となった[図表4]。

[図表3]買主業種別の取得額(左)と取得件数(右)

[図表3]買主業種別の取得額(左)と取得件数(右)

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

[図表4]売主業種別の売却額(左)と売却件数(右)

[図表4]売主業種別の売却額(左)と売却件数(右)

データ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

賃貸マンションのキャップレートは低下基調が続く

J-REIT物件を対象に賃貸マンションのキャップレート(期末鑑定評価の直接還元法における還元利回り)を地域別に集計すると、すべての地域において低下基調が続いている[図表5]。賃貸収益が堅調であって投資需要が底堅いことを反映した格好と言える。

[図表5]J-REITが運用する賃貸マンションのキャッププレート(対象物件の単純平均)

[図表5]J-REITが運用する賃貸マンションのキャッププレート(対象物件の単純平均)

注)対象期間で連続してデータ取得可能な物件を対象に集計した。都心6区は、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区、文京区。対象物件数は都心6区:380、都心6区以外の東京都区部:520、東京都下:31、大阪市:85、名古屋市:97、札幌市:51、仙台市:43、福岡市:51

データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成協力:株式会社都市未来総合研究所 研究部

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