テーマ:賃貸管理

近年多発している自然災害が賃貸経営に及ぼすリスクとその対策

「不動産投資」管理の重要なポイント (第54回)

この記事の概要

  • 賃貸経営にはさまざまなリスクが付きものですが、近年注目すべきは自然災害です。賃貸経営を行っている際に、自然災害がもたらすリスクとその対策について考えてみたいと思います。

近年多発している自然災害が賃貸経営に及ぼすリスクとその対策

1.自然災害はどこでも起こりうる

近年、気候変動などの理由から集中豪雨による浸水被害や土砂災害、記録的な大地震などの災害が増加しています。内閣府が発表している「災害救助法の適用状況」によるとほとんどの都道府県が災害救助法(発災時の応急期における応急救助に対応する主要な法律)の適応申請を過去に行ったことがあるとのことです。それはつまり、自然災害は限定的なエリアでだけ起こっているのではなく、日本全国どこでも大きな自然災害が発生していることを示唆しています。

2.自然災害がもたらすオーナーのリスク

自然災害がもたらすオーナーの主要な3つのリスクをお伝えします。

1つ目は、自然災害により破損した場合の修繕費用リスクです。
災害による破損などは賃借人の責任ではないので、当然にオーナーが修繕工事を行うことになります。さらに大規模な修繕工事となれば、賃借人に対して一時的に立ち退きを求めることにもなりますので、大変な労力と費用が掛かることになります。

2つ目は、賃料の減額対応や賃貸借契約の終了リスクです。
自然災害により、賃借人が自主的に避難した場合は、入居している部屋が住める状態かどうかで家賃請求の可否を判断します。もし、電気やガス、水道などのライフラインに異常をきたしていた場合、賃借人に賃料全額を請求できず、減額対応となるものと考えられます。万が一建物自体が倒壊してしまったら、その時点で賃貸借契約が終了となり、賃料の請求はできなくなります。

3つ目は、オーナー自身が賠償責任を問われるリスクです。
例えば、外壁に亀裂があってタイル落下の危険性がある、屋根の劣化状態やブロック塀の強度が不十分のまま放置しているなど、建物が適切に管理修繕なされていなかった場合です。このような状況で賃借人が被った損害や第三者にケガを負わせた時は、オーナーが所有者責任としてその損害の賠償を負う可能性があります。

3.減災という考え方

賃貸経営において自然災害に対する備えを万全にすることはできませんが、現実的には減災という考え方で対策を講じることになります。
減災を考える際のポイントは次のとおりです。

①倒壊や賃借人の安全を守るために、まずは補強工事を検討しましょう。
柱や壁の補強や窓ガラスへ補強フレームを設置するなど、必要な対策を図ることが大切です。工事内容によっては高額になるものもあるため専門業者に相談して進めるとよいでしょう。

②賃貸建物の定期点検として外壁や屋根、コーキングなどの防水状況や破損亀裂等の点検を行い、必要に応じて修繕工事を実施しておくなどの対策が必要です。さらに雨どいや排水溝の清掃も大切です。

③「地震保険」や「火災保険の家賃保証特約」などの保険を利用することがおすすめです。「施設賠償責任保険」は物件が原因で他人にケガをさせてしまったり、家財が破損した場合に損害賠償を受け取ることができます。

まとめ

賃貸経営において、自然災害リスクは避けて通れない状況になっています。今後の入居者募集においても賃借人の安全を考えた被災対策がなされていることが、賃借人が入居を決める重要な要素となり、選ばれる賃貸物件としての設備グレードなどと共に今後の賃貸経営には必要不可欠な要素となっていくものと考えられます。是非、参考にしていただければ幸いです。

著者

中村 賢治

多岐にわたる不動産業務経験と投資用不動産仲介支援業務の中でお客さまの様々なニーズにお応えしてきた経験を持つ。現在は、賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントにおいて、オーナーさまからの賃貸管理、土地有効活用、建替えなどのご相談をお受けする業務に従事。金融機関主催のセミナー、営業職向けの不動産勉強会等の講師を多数実施。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2024年2月28日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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