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都道府県地価調査(基準地価)にみる地価動向New

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 11月号

この記事の概要

  • 2023年の都道府県地価調査(7月1日時点)によると、全国の地価の対前年変動率は、住宅地、商業地とも2年連続で上昇となった。地方都市においても、地方圏の住宅地が31年ぶりに上昇に転じるなど地価の回復が波及しつつある。商業地も国内人流の回復、インバウンド消費の回復見込みなどを受け、大都市を中心に観光地や飲食街でも地価の上昇がみられた。
  • 住宅地については、各都道府県の県庁所在地45市で上昇となり、福岡市や札幌市など地方の主要都市を中心に回復傾向が進んでいる。
  • 地価がもともと高い大都市を中心に、交通利便性に優れ、かつ割安感のある周辺の都市や地域に不動産需要が波及し、地価の上昇が顕著となっている。

1)大都市を中心に全国的に地価の回復が進み、地方都市への波及がみられる

2023年の都道府県地価調査は全国平均が前年比で住宅地+0.7%、商業地+1.5%とそれぞれ2年連続の上昇となった。地方圏その他でも、全用途平均は30年続いた下落から横ばいに転じ、住宅地は下落が続くものの下落率は縮小。商業地では32年ぶりに上昇に転じるなど全国的な地価の回復が顕著となった[図表1]。

住宅地では、大都市を中心にマンション価格が高騰、テレワークの浸透などで交通利便性が高い周辺地域や郊外部において地価の上昇がみられた。大型再開発や交通インフラの整備が進む地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では前年の+6.6%から+7.5%に上昇率が拡大し、四市周辺の市町にも地価の上昇が波及している。地方圏その他では下落が続くものの下落率は縮小し、地方圏全体では31年ぶりに上昇に転じた。

一方、商業地も全国平均が前年比で+1.5%上昇した。国内人流の回復、インバウンド消費の回復見込みなどを受け、店舗需要の回復や堅調なオフィスとマンションの需要から、大都市を中心に地価の回復傾向が進んでいる。コロナ禍による人流の減少で不動産需要が落ち込んでいた飲食店を中心とする繁華街や観光地においても、人流回復やインバウンドを含めた観光客の回復傾向を受け地価の上昇がみられた。また、再開発事業が進む都心部や地方都市では、利便性や繁華性向上への期待感が地価上昇に大きく寄与しており、特に交通利便性に優れる地域ではマンション需要とも競合して地価が大きく上昇している。

2)半年ごとの共通調査地点では、特に商業地において2023年前半よりも後半で地価の回復が顕著

地価公示(価格時点1月1日)と都道府県地価調査(価格時点7月1日)の共通調査地点における半年ごとの地価の動きは、住宅地、商業地ともに回復基調にあることがみてとれる。特に商業地では大都市を中心に後半の伸びが大きく、人流の回復やインバウンド回復期待が影響したものと考えられる[図表2]。

3)県庁所在地における住宅地は、福岡市や札幌市で上昇率が10%超となるなど大都市を中心に上昇

県庁所在地別に住宅地の地価動向をみると、前橋市と甲府市を除く45市で上昇となった。なかでも福岡市(+11.6%)と札幌市(+10.7%)は10%を超える上昇率となるなど、上昇が顕著となった[図表3]。

[図表1]圏域別・用途別の地価変動率

[図表1]圏域別・用途別の地価変動率

データ出所:国土交通省「都道府県地価調査」

※区部都心部:千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、渋谷区、豊島区
区部南西部:品川区、目黒区、大田区、世田谷区、中野区、杉並区、練馬区の各区
区部北東部:墨田区、江東区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区

(注)圏域等の定義は以下のとおり。

  • ・「三大都市圏」とは、東京圏、大阪圏、名古屋圏をいう。
  • ・「東京圏」とは、首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む市区町の区域をいう。
  • ・「大阪圏」とは、近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む市町村の区域をいう。
  • ・「名古屋圏」とは、中部圏開発整備法による都市整備区域を含む市町村の区域をいう。
  • ・「地方圏」とは、三大都市圏を除く地域をいう。
  • ・「地方圏 地方四市」とは、北海道札幌市、宮城県仙台市、広島県広島市、福岡県福岡市をいう。
  • ・「地方圏 その他」とは、地方圏の地方四市を除いた市町村の区域をいう。

[図表2]半年ごとの地価変動率の推移(地価公示、都道府県地価調査の共通調査地点)

[図表2]半年ごとの地価変動率の推移(地価公示、都道府県地価調査の共通調査地点)

※地価公示(毎年1月1日時点実施)との共通地点(1,577地点。うち住宅地1,081地点、商業地496地点。)での集計
前半(7月~1月)は1月1日時点、後半(1月~7月)は7月1日時点

データ出所:国土交通省「都道府県地価調査」

[図表3]県庁所在地における平均価格と対前年比変動率(住宅地)

[図表3]県庁所在地における平均価格と対前年比変動率(住宅地)

データ出所:国土交通省「都道府県地価調査」

大都市における地価上昇が周辺都市に波及

[図表4]地方四市と周辺都市の地価変動率

[図表4]地方四市と周辺都市の地価変動率

データ出所:国土交通省「都道府県地価調査」

大都市や都市中心部の地価の上昇に伴って周辺都市に地価の上昇が波及する傾向がみられる。

特に地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)の地価は、再開発や交通インフラの整備にともない住宅地、商業地ともに上昇率が拡大しており、周辺都市でも地価の上昇が顕著となった。

特に、大規模な再開発が進む福岡市や札幌市では住宅地、商業地ともに上昇率が高く、交通アクセスが良好かつ相対的に割安な周辺都市で不動産需要が増加したことで、10%超の上昇地点が多数みられる結果となった[図表4]。なお、周辺都市の地価は中心都市よりも概ね割安であることが多いため、地価の上昇額と比べて上昇率は大きくなる傾向がある。

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成協力:株式会社都市未来総合研究所 研究部

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