中古一棟マンションの築年をどう捉える?

投資用不動産による資産形成のすすめ(第4回)

この記事の概要

  • 投資用物件としての中古一棟マンション物件は、築年数が数年〜数十年と、多種多様なストックが市場に流通しています。築古ながら価格のこなれた物件も見られ、運用次第では高い利回りも期待できそうです。ただし、築年の古い建物には相応のリスクも存在します。今回は、主に建物の「築年」から見た投資用物件選びの検討ポイントを紹介します。

中古一棟マンションの築年をどう捉える?

投資の視点から見た築古物件のメリットとは

不動産投資は、土地については経年による価値の変動は少ないものの、建物の価値は劣化などの理由によって経年とともに緩やかに下落する特性があります。そのため、戸建て/マンション、居住用/投資用を問わず、一般的には築年が古くなるほど物件価格が下落します。

中古物件には築浅・築古があり、購入する物件の築年数によって投資の運用方法も多少変わってきます。一般的に、築浅物件は競争力の高さを生かして安定的に運用し、築古物件はリフォームなどで魅力付けするなど新たな価値を創出することで高いリターンを目指します。

マンションの築年による不動産投資の特徴・傾向差

メリット例 リスク例
築浅マンション
  • ・コンディションの良い物件を手に入れやすい
  • ・新築と比べても競争力があまり衰えていない
  • ・維持管理コストが比較的少額で済む
  • ・物件調達価格が高め
  • ・期待できる利回りがあまり大きくない
築古マンション
  • ・物件価格が安い
  • ・魅力付け次第で大きなリターンが期待できる
  • ・多様な投資手法で運用できる
  • ・建物や設備などの基本性能・仕様が低め
  • ・メンテナンスやリフォーム費用が必要
  • ・隠れた欠陥・欠点などのリスクがある

築浅物件のメリットは、比較的良質なコンディションの物件を入手できることです。既に賃貸市場に出回っているので、賃料や入居率などエリア内での競争力が可視化されているのも新築にはないアドバンテージです。

これに対して築古物件の一番のメリットは、価格の安さです。経年による建物価値の減少はあるものの、新築と比較すると相当の割安感が出ています。この価値の差を生かして少額でも高い利回りを目指したり、リフォームなどの新たな投資によって魅力付けを行って賃料アップを目指すなど、多角的な経営を実践できます。

耐震性能の違いによる価格差をどう考えるか

ところで、条件が同じような物件でも、わずかな築年の差で物件価格に差の出る時期があることをご存じでしょうか。実は築年が1981年や2000年前後の物件については、他の年に比べて築年による価格差が見られます。これは、建築基準法の改正による、耐震性能の差から生じた評価が原因です。

国は大きな震災を経るごとに建築基準法を改正し、建築物に対する耐震性能の基準を高めてきました。耐震基準が大きく改正された年が1981年と2000年で、その前後で耐震性能が大きく異なります。結果として、その性能差が物件価格の差となって現れるのです。

マンションの築年別耐震性能

築年 建築時の耐震性能
(建築基準法による分類)
評価
〜1981年5月 旧耐震基準 一般的に耐震性に乏しく大地震時の危険度が高めとされている
1981年6月
〜2000年5月
新耐震基準 新耐震基準だが現行の2000年基準を満たしていない要素がある
2000年6月以降 新耐震基準(現行耐震基準) 基礎の形状や壁の配置バランス規定などもなされている

*適用される耐震基準は「建築確認申請の受理日」であり、竣工年と相違する場合があることに留意

不動産市場においては、1981年6月以降の物件が「新耐震基準(物件)」、それ以前の物件が「旧耐震基準(物件)」として区別されています。現行の耐震性能は2000年6月に改正されているため、1981〜2000年のストックについては、現行の基準を満たしていない性能もありますが、不動産市場ではそう大きな差は生じていません。つまり、「1981年以降か、それ以前か」が一番大きな価格差になっているわけです。こうした耐震基準を1つの目安にすることで検討しやすくなり、上手な買い物につなげられるかもしれません。

なお、旧耐震基準の建物は現状の耐震性能を満たしていないだけで、決して違法な建築物ということではありません。実際には、賃貸住宅の耐震性能を気にする借り手はそれほど多くなく、賃料や設備、デザインなどを重視する傾向にあります。耐震改修によって安全性をより高めることも可能ですが、耐震性については割り切って、その代わりに室内の設備や内装などに投資するという考え方もあります。ただし、今後借り手の意識が変わっていく可能性があること、大震災時などは損壊の度合いが高くなるリスクがあることは認識しておく必要があります。

大切なのは現状コンディションの正確な把握

物件の築年を気にかけることも大切ですが、それより重要なのが「現状のコンディション」です。「マンションは管理を買え」のセオリーは、投資用物件にも当てはまります。現状性能を正確に把握しておかないと、補修費用が高くつくなど想定外の出費が生じ、目標の利回りを大きく下げかねません。

特に重要なのが、建物の主要構造部とインフラの配管です。室内はリフォームなどでいくらでもリニューアルできますが、構造部の劣化や欠陥・欠点は、雨漏りや漏水、漏電など深刻なトラブルを引き起こしかねません。補修のための費用も高額になってしまいます。

そのためにも購入検討の際は、できるだけ物件のコンディションを知るための手掛かりを入手しましょう。新築時の設計図面やこれまでの修繕の実施記録などから、現状の劣化度合いを推測していきます。大規模修繕が比較的最近に実施されているようなら、リスクは低めと言えるでしょう。

築古物件を購入する際の検討ポイント

  • ・新築時の図書類(設計図面、確認申請、売買契約書など)
  • ・建物の維持管理記録(補修、定期メンテナンス、大規模修繕の記録、長期修繕計画書など)
  • ・その他(耐震診断、火災保険の有無など)

図書類がなくても賃貸経営は可能ですが、その分リスクが高まることは認識しておかなければなりません。不安であればインスペクション(建物診断)を実施するのがベストです。ご自身で物件の良し悪しを見分けられる方はそうは多くないでしょうから、プロの知見を借りるなどして極力客観的な判断材料を入手してください。

自己居住用物件では、首都圏の中古分譲マンション成約数の30%が築30年以上という数字もあります(東日本不動産流通機構=「レインズ」調べ)。マンションは適切なメンテナンスによって30年以上持たせることも可能ですので、築年ばかりを気にするのではなく、むしろ建物の“実年齢”を知るための情報収集こそが大切と言えそうです。

執筆・編集・監修

日経BPコンサルティング

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2023年7月27日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。