良質な睡眠のために、朝起きたら太陽の光を浴びよう
——良質な睡眠のために心掛けるべき生活習慣はありますか。
森:1日の過ごし方からご説明しましょう。まず、朝起きたら太陽の光を浴びる習慣をつけてください。夜勤の方などは照明の光でも構いません。人間は光を浴びるとセロトニンの分泌が始まります。セロトニンは睡眠ホルモンであるメラトニンの原料で、約15時間後にメラトニンに変わります。朝のうちにしっかり光を浴びることが、眠る準備につながっているのです。
人の体内時計は、モーニングクロックとイブニングクロックの2つが備わっていると言われています。お昼過ぎの12時から15時頃になると眠くなるという方が多いのですが、モーニングクロックが終盤に差しかかるこの時間帯に眠くなるのは、体のリズムとして自然なことです。可能であれば、15~30分の昼寝をお薦めします。
夕食や飲酒は、なるべく就寝の2~3時間前に済ませましょう。寝る直前に食事をすると睡眠中に消化活動が活発になります。すると脳や体が働いている状態となり、眠りが浅くなってしまいます。寝酒も睡眠の質の低下につながります。お酒は眠気を誘いますが、覚醒作用もあり、夜中に目覚めてしまうことが多いのです。尿意で目が覚めてしまうこともあります。
良質な睡眠のためのもう1つのポイントは、身体を温めることです。寝る1時間ぐらい前にお風呂でぬるめのお湯にゆっくりつかって、身体の深部体温を上げましょう。人間は体温が下がると眠くなるので、お風呂上がりの放熱で心地よい入眠が期待できます。
——良質な睡眠には1日の生活が関わってくることが分かりました。では、そうした1日を過ごした上での、寝室の環境と眠りの関係について教えてください。
森:ここでもいくつかのポイントがあります。西川の日本睡眠科学研究所では、5つのポイントを挙げています。「温度・湿度」「音」「光」「香り」「色彩」です。
※日本睡眠科学研究所の資料を元に作成
睡眠に適した「温度・湿度」は、冬は10℃以上、夏は28℃以下が目安で、湿度は50%程度が理想的とされています。温度を気にする方は多いのですが、湿度はあまり意識されていないようです。夏の寝苦しさは湿度と密接に関係しますし、人間は寝ている間にコップ約1杯分の汗をかくので、湿度は大切な要素なのです。熱帯夜が多い夏の間は、適切な温度に設定した上でエアコンをつけたまま寝ても大丈夫です。扇風機も効果的です。ただし、エアコンも扇風機も身体に直接風が当たらないように気をつけてください。
寝室の「音」は、40dB(デシベル)以下にしましょう。これは図書館で本をパラパラとめくる音が聞こえる程度の静かさです。道路など外部の音が侵入しやすい寝室は、雨戸や二重サッシ、厚手のカーテンなどで音を遮るといいでしょう。入眠時に音楽をかけるならば、歌詞のないヒーリングミュージックや環境音がお薦めです。歌詞があると脳が覚醒してしまう可能性があるためです。
「光」については、理想を言えば真っ暗がいいのですが、それが難しければ0.3~1.0ルクス程度の明るさにしましょう。これは手元がぼんやり見える程度の暗さです。間接照明などを使う場合は、光源が目に入らないように気をつけてください。
「香り」は、寝る前と起床時の両方で効果をもたらします。寝る前はリラックスできる香り(ラベンダーやローズ、カモミールなど)、起床時はリフレッシュできるすっきりした香り(レモンや、グレープフルーツ、ペパーミント、ユーカリなど)がいいでしょう。
「色彩」は、ベージュ系やブラウン系といった落ち着いた色がいいのですが、ご自身が落ち着く色を基調に、お気に入りの寝室を作ることが大事なポイントです。北欧テイストのカラフルでポップな色彩でも、落ち着きが得られるならば選んで良いと思います。