賃貸不動産投資の基本は、所有するストック(賃貸物件)の賃料をいかに高額に、かつ空室率を低く維持するかにあります。それを一戸単位でなく、建物全戸のマネジメントによっていかにアベレージを高めていくかが、一棟マンション投資の特性であり、魅力ともいえます。
賃借人の退去から次の入居までに空室期間が生じるのは仕方ありませんが、長く住んでもらったり、次の入居のために魅力的な物件にしたりすることが、空室率を下げ、利回りの向上へとつながります。投資物件を購入して終わりではなく、その地域の賃貸ニーズにマッチした空間へと最適化させていくための継続的な取り組みが欠かせません。
住まい手の嗜好や住宅ニーズは時代と共に変化していきます。流行り廃りだけでなく、時には社会的な住宅ニーズの変化も見られます。典型的な例が、2020年からのコロナ禍による影響です。
それまで多くのビジネスマンが、通勤の利便性を住まい選びの基準としてきましたが、リモートワークの台頭によって、必ずしも通勤時間に縛られない住まい選びが可能になりました。そのため、都市部郊外のニュータウンの良好な住環境が見直されたり、都市部とリゾート地との二地域居住、地方への移住といった新たな選択肢が生まれました。
不動産・住宅情報ポータルサイト「LIFULL HOME'S」の「借りて住みたい街2023」を見ても、大都市圏における賃貸住まいの人気スポットが、都心部だけでなく郊外や地方都市部にも点在していることがうかがえます。
(表1)「借りて住みたい街2023」ランキング トップ5
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首都圏 |
近畿圏 |
中部圏 |
1位 |
本厚木(神奈川県厚木市) |
江坂(大阪府吹田市) |
岐阜(岐阜県岐阜市) |
2位 |
大宮(埼玉県さいたま市) |
三ノ宮(神戸市中央区) |
豊橋(愛知県豊橋市) |
3位 |
八王子(東京都八王子市) |
大正(大阪市浪速区) |
岡崎(愛知県岡崎市) |
4位 |
柏(千葉県柏市) |
出町柳(京都市左京区) |
新栄町(名古屋市中区、千種区) |
5位 |
三鷹(東京都三鷹市) |
大国町(大阪市浪速区) |
藤が丘(名古屋市千種区、名東区) |
出典:LIFULL HOME'S みんなが探した! 借りて住みたい街ランキング
コロナが落ち着きを見せた2023年、社会は再びオフィス通勤が主流になりつつありますが、「家時間(おうち時間)の充実」など、住環境への関心と住まい方のリテラシー向上が進み、個人の住まい方や嗜好は多様化しました。それによって、賃貸投資に向いたエリアやストックの選択肢も多彩になってきています。