テーマ:賃貸管理

賃貸不動産売却時の管理会社変更に関する注意点

「不動産投資」管理の重要なポイント (第46回)

この記事の概要

  • 賃貸不動産を売却する際は、売買価格、売却のタイミング、賃貸不動産に関する情報(建物の点検・修繕の情報)などが重要な検討事項になりますが、それ以外にも忘れがちなのが賃貸不動産に付随した管理業務の承継に関する事です。今回は承継の際に問題となる基本的な注意点に関して2ケース考えてみます。

賃貸不動産売却時の管理会社変更に関する注意点

1.売主(現賃貸人)が管理会社に委託している賃貸不動産を売却する際、買主(新賃貸人)が新たな管理会社にスイッチする場合の注意点

管理会社が管理している賃貸不動産を売買する際、買主(新賃貸人)が、現状の管理会社を承継しない場合には売主側(現賃貸人)にて現状の管理契約を解約するという手続きが必要となります。その際に注意するポイントは大きく分けて2点あり、以下表にまとめました。いずれも見逃していると不利益が発生する可能性があるので、買主(新賃貸人)のためにも早めに確認しておくとよいでしょう。

注意する
ポイント
不利益発生の懸念先 内容
違約金の有無 売主(現賃貸人)

・管理業務委託契約の解約条項に伴い違約金が発生するか否かを確認しておくことが大切。

・管理業務委託契約そのものでは違約金の発生がないが、原状回復に関する付随契約には違約金の条項がある場合があるので全ての契約内容に関しての確認が必要。

賃借人が享受しているサービス
(保証会社の利用)
買主(新賃貸人)

・賃借人が利用している保証会社が管理会社独自のものであって、管理業務委託会社変更に伴う継続利用が出来ない内容の場合もあるため確認が必要。

・売却による所有者変更に伴い、賃貸人が変更になっても現行の賃貸借契約内容をそのまま継承することが原則のため、新規の保証会社利用に伴う契約金の負担を賃借人に負担させるわけにはいかず、新賃貸人が負担するか保証会社未利用の状態になる事となり、買主である新賃貸人が不利益を被ることになるため注意。

・保証会社の利用に限らず、賃借人が享受しているサービス内容などにも変更が生じないかについても確認が必要。

2.売主(現賃貸人)が自主管理をしている賃貸不動産を売却する際の注意点

売主(現賃貸人)が管理会社に委託せず自主管理していた場合はいかがでしょうか。こちらも買主(新賃貸人)が不利益を受ける可能性がある2点を以下表にまとめてみました。

注意する
ポイント
不利益発生の懸念先 内容
賃貸契約内容が統一されているか 買主(新賃貸人) 特段関与せず、入居者募集を賃貸仲介会社に依頼していたためにその賃貸契約内容が統一されていないケースがある。例えば、保証会社を利用している賃借人と利用していない賃借人が存在する場合、賃料の延滞や所在不明などが生じた時、保証会社を利用している場合であれば保証会社が負担することになるが、保証会社を利用していない場合には、その負担を直接新賃貸人が負うことになる。
建物維持管理内容が適切か 買主(新賃貸人) 建物維持管理内容として日常清掃、定期点検、苦情受付サービス、ゴミ出し方法、各種届出などを独自ルールにて実施していたり、未実施であった場合、何か問題が生じた際、新賃貸人が不利益を生じる可能性がある。(例:消防点検などの法定点検が未実施だったため、本来必要とされる設備を新たに設置しなければならないなどの指摘を受けた際、その是正措置としてそれらの設置費用を新賃貸人が負担)

このように、オーナーとして賃貸不動産売却に伴い、売買当事者において不利益が生じる可能性がある項目を予め想定しておくことが必要です。つまり、不利益(費用負担額)が高額になるような場合には、予め賃貸不動産の売買代金額での調整対象となったり、売却する不動産の決済時点での精算が発生するなどの影響が考えられますので十分に注意しながら進めていく必要があります。

著者

中村 賢治

多岐にわたる不動産業務経験と投資用不動産仲介支援業務の中でお客さまの様々なニーズにお応えしてきた経験を持つ。現在は、賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントにおいて、オーナーさまからの賃貸管理、土地有効活用、建替えなどのご相談をお受けする業務に従事。金融機関主催のセミナー、営業職向けの不動産勉強会等の講師を多数実施。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2023年4月27日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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