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地価公示にみる地価動向New

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 4月号

この記事の概要

  • 「令和5(2023)年地価公示」によると、全国の地価は全用途平均+1.6%(前年+0.6%)、住宅地+1.4%(+0.5%)、商業地+1.8%(+0.4%)となり、いずれも2年連続で上昇し、上昇率は拡大した。三大都市圏平均、地方圏平均とも全用途平均、住宅地、商業地で2年連続上昇するなど、全国的に地価の回復傾向が強まった。
  • 地方圏は、地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)はいずれも上昇が継続し、上昇率も拡大した。地方四市の住宅地・商業地では10年連続の上昇となった。地方圏のその他の都市(以下、地方圏その他)でも、全用途、住宅地、商業地のいずれも前年の下落から上昇に転じた。

1)全国的な地価の回復が目立つ

2023年の地価公示は全用途の全国平均が前年比で+1.6%上昇した。上昇は2年連続で、リーマン・ショック前の2008年(+1.7%)に次ぐ水準となり、全国的な地価の回復が顕著となった[図表1]。

住宅地では、大都市を中心にマンション価格が高騰、テレワークの浸透などで交通利便性が高い周辺地域や郊外部でも地価の上昇がみられた[図表1]。大型再開発や交通インフラの整備が進む地方4市(札幌、仙台、広島、福岡)では前年の+5.8%から+8.6%に上昇し、四市周辺の市町にも地価の上昇が波及している。また、地方圏その他でも住宅地が前年マイナス(-0.1%)からプラス(+0.4%)に転じ、28年ぶりにプラスとなった。

一方、商業地も全国平均が前年比で+1.8%上昇した。三大都市圏では、大阪圏が3年ぶりにプラス(+2.3%)に転じた。都市部を中心に、経済活動の正常化に伴い店舗向けの需要が増加しており、コロナ禍で人流が減少し地価が大きく下落していた飲食店が集積する繁華街でも地価の回復が目立ち、東京浅草や京都祇園などの観光地ではインバウンド需要の回復への期待感から地価の上昇が顕著となった。

2)半年ごとの共通調査地点では、特に商業地において2022年前半よりも後半で地価の回復が顕著

地価公示(価格時点1月1日)と都道府県地価調査(価格時点7月1日)の共通調査地点における半年ごとの地価の動きは、住宅地、商業地ともに回復基調にあることが見てとれるが、商業地において後半の伸びが大きく、人流の回復やインバウンド回復期待が影響したものと考えられる。特に地方四市では住宅地が前半+2.9%、後半+3.9%、商業地が前半+3.3%、後半+3.8%と後半で高い伸びとなった[図表2]。

3)住宅地の地価が上昇した都道府県が増加、一方で依然下落が続く県も

都道府県別に住宅地の地価動向をみると、前年比上昇が24県(前年20県)、同下落が22県(前年27県)であった[図表3]。県庁所在地と都道府県平均がともに下落している県は愛媛県や群馬県など11県。最も上昇率の高い都道府県は北海道(+7.6%)、県庁所在地は札幌市(+15.0%)となった。

[図表1]圏域別・用途別の地価変動率(2023年地価公示)

(変動率%)

[図表1]圏域別・用途別の地価変動率(2023年地価公示)

データ出所:国土交通省「地価公示」

(注)圏域等の定義は以下のとおり。

・「三大都市圏」とは、東京圏、大阪圏、名古屋圏をいう。

・「東京圏」とは、首都圏整備法による既成市街地および近郊整備地帯を含む市区町の区域をいう。

・「大阪圏」とは、近畿圏整備法による既成都市区域および近郊整備区域を含む市町村の区域をいう。

・「名古屋圏」とは、中部圏開発整備法による都市整備区域を含む市町村の区域をいう。

・「地方圏」とは、三大都市圏を除く地域をいう。

・「地方圏 地方四市」とは、北海道札幌市、宮城県仙台市、広島県広島市、福岡県福岡市をいう。

・「地方圏 その他」とは、地方圏の地方四市を除いた市町村の区域をいう。

[図表2]半年ごとの地価変動率(地価公示、都道府県地価調査の共通調査地点)

[図表2]半年ごとの地価変動率(地価公示、都道府県地価調査の共通調査地点)

(注)前半(1月~7月)は7月1日時点、後半(7月~1月)は1月1日時点

データ出所:国土交通省「地価公示」

[図表3]県庁所在地における地価変動率と都道府県平均変動率(住宅地)

[図表3]県庁所在地における地価変動率と都道府県平均変動率(住宅地)

データ出所:国土交通省「地価公示」

地方四市の地価上昇が周辺都市に波及

[図表4]地方四市と周辺都市の地価変動率

(変動率%)

[図表4]地方四市と周辺都市の地価変動率

データ出所:国土交通省「地価公示」

大都市や都市中心部の地価の上昇に伴って周辺都市に地価の上昇が波及する傾向がみられる。

特に地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)の地価は、再開発や交通インフラの整備にともない住宅地、商業地ともに上昇率が拡大しており、周辺都市でも地価の上昇が顕著となった。

特に、大規模な再開発が進む札幌市では住宅地の上昇率が+15%と高く、札幌市への交通アクセスが良好かつ相対的に割安な周辺都市への住宅需要が増加したことで、+20%超の上昇地点が多数みられる結果となった[図表4]。

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成協力:株式会社都市未来総合研究所 研究部

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