テーマ:マーケット

手間とリターンを自在にコントロールできる不動産の「一棟投資」New

投資用不動産トピックス

この記事の概要

  • 賃貸物件を一戸単位でなく、マンション一棟全体で運用する「一棟投資」という不動産の投資手法があります。こうした一棟投資の魅力やメリットとは何でしょうか。月間140万人超のアクセスを持つ不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」を運営する倉内敬一氏に、マンション一棟投資の基本的な考え方について聞きました。

手間とリターンを自在にコントロールできる不動産の「一棟投資」

一棟単位なら戦略的な不動産経営ができる

賃貸経営などの不動産投資は、資産運用のポピュラーな手法として認知・実践されています。数ある不動産投資手法の中で、賃貸物件を一戸単位でなく、一棟全体で運用する「一棟投資」にはどんな特性や魅力がありますか。

倉内:ワンルームマンション投資など、区分所有一戸単位の賃貸経営は戸内(専有部内)を魅力付けし、いかに入居者に高額かつ長期にわたって入居してもらうかが運用の基本となります。これに対してマンションなどの一棟投資は、共用部についても手を加えられるため、各戸の魅力付けだけでなくマンションそのものの魅力や価値をコントロールできます。一棟全体での大幅なバリューアップが可能という点が、一戸単位の賃貸経営と大きく異なるところです。

賃貸に限らず、ストックは建物や設備機器、内装など経年劣化や老朽化が避けられないので、投資効率を高める上で、補修や機器更新などをどうコントロールしていくかが重要です。一棟投資は、そうした手間や負担が大きいようにも思えます。

倉内:賃貸経営には適切なタイミングでの維持管理が不可欠ですが、建物全体でマネジメントしていく一棟投資は、住宅性能や居住性などを「回復」にとどめず「向上」させる余地も大きく、マンション全体に新たな価値を創造させやすいのです。外壁塗装の際に建物の外観デザインを変える、コロナ禍の際には新しいニーズに応えてエントランスに宅配ボックスを新設するなど、建物全体で価値を付加できます。こうしたアプローチは一戸単位の不動産投資ではできません。保有する不動産を陳腐化させることなく資産価値を維持しやすい点は、一棟投資ならではのメリットです。「賃料」という月々のインカムゲイン、将来売却時の差益によるキャピタルゲイン、両者を戦略的に目指せるのが一棟投資の投資商品としての魅力と言えるでしょう。

賃貸経営に付いて回る維持管理の手間も、バリューアップのチャンスに転化できるということですね。ところで、同じ一棟投資でも、アパート経営とマンション経営とでは違いはありますか。

倉内:RC造が中心のマンションは、木造や軽量鉄骨造などのアパートよりも住宅性能(耐久性、耐震性、耐火性、断熱性、遮音性など)が高いことが特徴です。法定耐用年数も長く、長期にわたって投資運用を実施しやすいといえます。ストックとしての資産価値が高いので、将来売却する際もバリューアップしやすく、高いキャピタルゲインを目指しやすくなります。高額になる分、一定の資金が必要になりますが、資産面での担保価値もアパートに比べて高く、金融機関からの融資が受けやすいというメリットもあります。

(表)建物構造別による法定耐用年数

建物構造 法廷耐用年数 アパート マンション
軽量鉄骨造 19年 --
木造 22年 --
鉄骨造 34年
鉄筋鉄骨造 47年 --

加えて、マンションはアパートよりも住宅履歴情報が多く、購入検討時のリスクも低めです。不動産市場には中古の一棟投資物件も多く流通していますが、購入の際には劣化度合いや維持管理状況など、物件のコンディションの見極めが非常に重要です。その点、マンションは竣工時の情報や設計図書、その後の維持管理情報などがきちんと蓄積されていることが多いのです。これら豊富なエビデンスが投資リスクの軽減につながっていきます。

長期運用でミドルリターンを目指す

不動産投資は株などと比べてリスクが少なく、長期的に安定収入を得ることのできる投資手法といえます。一棟投資は不動産投資の中でどういう位置付けになりますか。

倉内:一棟投資は一戸単位の賃貸経営と比べて多少のリスクが加わるものの、その分リターンも大きくなる不動産投資です。管理コストを最小化したり、積極運用で高いリターンを目指したりと、1つのストックで戦略的な不動産経営ができるのも一棟投資の魅力です。私はマンション一棟投資を「ミドルリスク・ミドルリターン」の投資商品と考えています。

(表)建物構造別による表面利回り

建物構造 表面利回り
区分マンション 7.41%
一棟アパート 8.29%
一棟マンション 7.84%

出典:健美家「収益物件 市場動向 年間レポート(2022年1月~12月期)」

一棟投資ではどのようなリスクがあるとお考えですか。多くの戸数を運用する分、維持管理コストや空室リスクなど、一戸単位の投資よりもリスクも大きいように思います。

倉内:どの投資商品にも言えることですが、利回りが高めの投資手法にはそれなりのリスクやデメリットがあります。ワンルームマンションなどの区分所有投資に比べて、一棟投資は多額の資金を必要とするため、賃貸経営がうまくいかなかった場合のリスクは当然大きくなります。

管理面においては、一戸あたりの維持管理のためのコストが下がるため、スケールメリットにつながります。空室リスクについては、ワンルームなら入居・退去で月々の賃料が100か0かになりますが、一棟投資ならいきなり0になるということはありません。

手元に現金が必要になった場合などの換金性はどうでしょうか。将来、確実に売却できるのかどうかも気になります。

倉内:資産運用には流動性を考えたバランスのよい資産の分散という考えが必要です。株やFXなどの投資商品はインターネット上での売買が可能で、ボタン1つで換金できます。そもそも不動産投資は長期保有する投資商品ですから、流動性の高い商品と併せて不動産投資を組み入れる考え方も必要です。

不動産投資は土地や建物が残りますから、資産がゼロになることはあり得ません。その点でも株などよりリスクが低めともいえます。基本的に都市部であれば将来売却できる可能性が高いと考えていいでしょう。将来も人口減少リスクの少ない地域であれば、売却価格が大幅に下落することは考えにくいと思います。近年は物価高騰などで新築物件の販売価格が上昇していることもあり、既存(中古)の一棟マンションも上昇傾向にあります。将来的にも大幅な下落リスクは小さくなっており、投資のハードルが下がっているともいえます。

協力

健美家

2004年創業。不動産投資と収益物件の情報ポータルサイト『健美家』を運営し、不動産投資に関心を持つ会員約14万人を擁する(2023年3月現在)。倉内敬一氏は2012年より代表を務める。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2023年3月29日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。