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J-REITが都区部に保有する賃貸マンションの稼働率の動向New

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 1月号

この記事の概要

  • J-REITの都区部での賃貸マンションの稼働率は2021年中盤をボトムに反転上昇
  • コロナショックに対して、賃貸マンションの稼働率は比較的安定した動きを示した
  • 都区部のエリア別にみると、都心3区と城東地区で稼働率の低下幅が大きく、コロナ前の水準への回復が遅い

1)J-REITの都区部での賃貸マンションの稼働率は2021年中盤をボトムに反転上昇

都区部の賃貸オフィスは、コロナショック以降テナント企業のオフィスのあり方を見直す動きが継続し、稼働率は低下し横ばい傾向で推移しているが、賃貸マンションの稼働率は反転上昇している。J-REITが都区部に保有する物件のデータ※1を整理し、変化の傾向を示す移動平均した稼働率(過去12か月移動平均※2。以下「稼働率」という。)を[図表1]に示した。賃貸オフィスの稼働率は直近時点(2022年10月。以下同じ)で96.4%だった。賃貸マンションは2021年7月~8月をボトムとし、反転上昇しており直近時点の稼働率は96.4%となり、賃貸オフィスの稼働率と同等となった。

2)コロナショックに対して、賃貸マンションの稼働率は比較的安定した動きを示した

都区部の賃貸マンションの直近時点の稼働率96.4%をコロナ前(2019年12月。以下同じ。)の稼働率97.2%と比較すると、まだ0.8%pt低い。しかし、賃貸オフィスと比べて、低下幅は小さく、かつ回復も早いことから、今回のコロナショックでは稼働率は比較的安定した動きを示したといえる。

3)都区部のエリア別にみると、都心3区と城東地区で稼働率の低下幅が大きく、コロナ前の水準への回復が遅い

都区部のエリア※3(都心3区、城東地区、城南地区、城西地区、城北地区)別の稼働率の動向を以下に整理した[図表2] [図表3]。

  • 全体概要:いずれのエリアでもコロナショックの影響を受け稼働率は低下した。その後、城南地区を除き2021年9月に反転上昇をはじめた。エリアにより、低下の大きさや反転上昇後の勢いに相違がみられ、都心3区と城東地区で稼働率の低下幅が大きく、コロナ前の水準への回復が遅い。
  • 都心3区:コロナショック前後で稼働率のピークとボトムの差は▲2.4%ptと大きく、とくに港区で低下幅が大きかった。直近時点の稼働率は96.0%で、コロナ前の97.1%に比べると▲1.1%ptと依然大きくコロナ前の水準への回復が遅い。
  • 城東地区:コロナショック前の稼働率が98.0%で最も高く、コロナショック前後で稼働率のピークとボトムの差は▲2.0%ptと比較的大きく、なかでも台東区で低下幅が大きかった。直近時点は96.8%で、コロナ前に比べると▲1.2%ptと依然大きくコロナ前の水準への回復が遅い。
  • 城南地区:コロナショック前後で稼働率のピークからボトムへの低下幅は▲1.5%ptと比較的小さかった。ただし目黒区で低下幅は大きいものとなった。稼働率の反転上昇時期が2022年1月と他エリアに比べて遅い。世田谷区で低下傾向が続いていた影響が考えられる。直近時点は96.3%で、コロナ前の97.0%に比べると▲0.7%ptにとどまっている。

[図表1]J-REITが都区部に保有する賃貸オフィスと賃貸マンションの稼働率

[図表1]J-REITが都区部に保有する賃貸オフィスと賃貸マンションの稼働率

注)移動平均は、過去12か月移動平均を使用

データ出所:各投資法人の開示資料

[図表2]J-REITが都区部に保有する賃貸マンションのエリア別稼働率(移動平均)

[図表2]J-REITが都区部に保有する賃貸マンションのエリア別稼働率(移動平均)

注)移動平均は、過去12か月移動平均を使用

データ出所:各投資法人の開示資料

  • 城西地区:コロナショック前後で稼働率のピークとボトムの差は▲1.8%ptと比較的大きく低下したが、直近時点は96.4%で、コロナ前の96.9%に比べると▲0.5%ptにとどまっており、回復が早いと考えられる。
  • 城北地区:コロナショック前後で稼働率のピークとボトムの差は▲0.9%ptの低下にとどまり、直近時点は96.6%で、コロナ前の97.0%に比べると▲0.5%ptにとどまっている。全体的な変動は最も小さかったと考えられる。

[図表3]各エリアの区別の稼働率(移動平均)

[図表3]各エリアの区別の稼働率(移動平均)

注)移動平均は、過去12か月移動平均を使用

データ出所:各投資法人の開示資料

  • ※1:各投資法人が開示する物件別の月次稼働率を整理し、2019年1月から連続してデータが得られる物件を抽出(マスタリース契約などでエンドテナントの稼働率によらず稼働率が100%と開示されている物件除く。)(都区部478件、大阪市21件、名古屋市23件)
  • ※2:季節変動の影響がでないように年間の移動平均とした。
  • ※3:本稿でのエリア区分は次のようにした。(区別の集計でデータ数が10未満(*印の区)はその他にまとめた。)
  • 都心3区:千代田区、中央区、港区
  • 城東地区:台東区、江東区、墨田区、江戸川区*、荒川区*、足立区*、葛飾区*
  • 城南地区:品川区、大田区、目黒区、世田谷区
  • 城西地区:新宿区、渋谷区、杉並区*、中野区*
  • 城北地区:文京区、豊島区、板橋区、北区*、練馬区*

J-REITが東名阪に保有する賃貸マンションの稼働率

[図表4]J-REITが東名阪で保有する賃貸マンションの稼働率(移動平均)

[図表4]J-REITが東名阪で保有する賃貸マンションの稼働率(移動平均)

注)移動平均は、過去12か月移動平均を使用

データ出所:各投資法人の開示資料

J-REITが東名阪(都区部、大阪市、名古屋市)で保有している賃貸マンション※1の稼働率(過去12か月移動平均。以下、同じ。)データを整理した。

都区部では、稼働率が一時的に低下したが、大阪市と名古屋市での稼働率の変動は軽微であった。

大阪市では2019年12月から2022年5月まで稼働率は緩やかに低下し、それ以降は横ばい傾向で、直近時点(2022年10月)では95.7%となった。

名古屋市では、2019年12月の94.4%から2021年10月の95.1%まで上昇し、それ以降は横ばい傾向で、直近時点(2022年10月)では95.1%となった。

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成協力:株式会社都市未来総合研究所 研究部

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※2023年1月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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