テーマ:賃貸管理

入居者の困りごとを把握し、安定した賃貸経営に繋げよう

「不動産投資」管理の重要なポイント (第42回)

この記事の概要

  • 賃貸経営をしていれば、入居者からの苦情や相談、要望が出ることは避けられませんが、入居者の困りごとを把握して早期解決することは、安定した賃貸経営に繋がります。管理会社に寄せられる相談内容から、賃貸経営への生かし方を考えてみましょう。

入居者の困りごとを把握し、安定した賃貸経営に繋げよう

1.騒音関係

管理会社に寄せられる相談のうち、何と言っても多いのが騒音に関するものです。騒音にも種類があり、「建物や設備からの騒音」は以下のものが挙げられます。

  • ・古くなったエアコン室外機のモーター音
  • ・気密性が高いマンションで起こるエアコンからのポコポコ音
  • ・水道を止めた時に壁の中でドンという音がするウォーターハンマー現象

こちらは修繕等でお金と時間を掛ければ対処できる可能性が高いものの、本当に厄介なのは、以下の「他の入居者が立てる音」の相談です。

  • ・赤ちゃんの泣き声
  • ・子供の走り回る / 大人のドンドンと歩く音
  • ・扉の開け閉めの音
  • ・テレビやオーディオの音
  • ・椅子を引く音
  • ・洗濯や掃除の音

たくさんの相談が寄せられますが、どの部屋の誰が立てている音なのかを特定するところから始まります。中には相談主が神経質な場合もあるので、その音が本当に迷惑なレベルなのかを判断する必要が生じる場合もあり、簡単ではありません。

昔は同じ間取りの物件には似たような家族構成の入居者が住んでいたため、生活時間帯のずれによる騒音問題はあまり起きませんでした。しかし今は人の暮らしが多様化し、例えば同じ間取りの2DKの物件に、高齢の夫婦、子供のいる若夫婦、子供のいない同棲カップル、ルームシェアの学生2人、一人暮らしで在宅勤務の会社員など、様々な人が入居しています。ライフスタイルも生活時間帯もバラバラなので、騒音の相談が増えているのです。

騒音問題は解決が難しいのですが、長期化すると退去に繋がったり、次の入居に支障が出る場合もあります。オーナーさまとしても、どの部屋からどういう騒音の相談が来ているのかを把握し、対応について一緒に考えていく必要があると思います。

子供が走り回るイメージ

2.迷惑駐車・駐輪

郊外の物件では、迷惑駐車や駐輪に関する苦情や相談が多くなります。

迷惑駐車に関しては、以下の相談が挙げられます。

  • ・借りている区画に別の車が駐車されていて駐車できない
  • ・物件の周りや敷地内の通路などに無断駐車があって邪魔
  • ・空き駐車場にいつも無断駐車している人がいてずるい

正規に契約している車については、管理会社が車種やナンバーや所有者を把握していますが、無断駐車は契約していない方が大半のため、誰の車なのかを判明させる作業が難航し、長期化することが多いです。警察に相談しても、私有地における無断駐車のトラブルは民事上の問題なので本来は管轄外。しかし、注意しても何度も繰り返すなど悪質な場合は、警察から所有者に直接注意してくれることがあります。その際は証拠が重要になるので、もしオーナーさまが物件の近くにお住いの場合、管理会社と連携し、迷惑駐車の都度写真を撮影、ワイパーに注意文を挟んだ記録を残すなどをしておくと早期解決に繋がります。

駐輪に関する相談は、自転車が多くて出し入れしにくいというものが圧倒的多数を占めます。駅から距離があり自転車通勤の入居者が多い物件は要注意です。特に朝の通勤時は、自転車が出しにくくて電車に乗り遅れた、自分の自転車を出すために他の入居者の自転車を動かした際に手や洋服が汚れたなど、小さな不満が毎日積み重なり、退去に繋がる可能性もあります。管理会社は退去者の自転車や放置自転車がないかを期間を設けて調査し、不要な自転車を処分することから始めますが、それでも駐輪場がいっぱいの場合には、駐輪場を増やすなどの対応が必要になってきます。日中は自転車が少ないので、入居者全員が帰宅している夜間の駐輪場の様子をオーナーさま自身でも確認して頂けると、その必要性を理解して頂けると思います。

3.ごみ関連

きちんとルールを守っている入居者にとって、ルール違反をしている他の入居者のマナーの悪さは許せないと感じられるものです。そういう方々から、ごみに関しての苦情や相談が多くなります。

内容としては、分別ルールや収集日を守らなかったり、粗大ごみや家電リサイクル対象品を普通ごみで捨てている人がいるなどの内容が多いです。収集されない生ごみが猫やカラスに荒らされ散らかったごみ置き場は、綺麗好きな人には許せないものです。

引っ越してきたばかりの人が悪気なく間違えることは良くあり、貼り紙や注意文で解決することもありますが、悪質な場合は何度も繰り返し違反行為がなされるため、違反者を特定しなければならなくなります。しかし、「誰が捨てているのか」を特定するのは大変難しいのが現実です。あまりに悪質で同一人物の行為とみられる場合は、管理行為の一環でごみの中身を確認する方法もありますが、誰しも捨てたごみの中身を見られたくないのは当然なので、プライバシー侵害として更なるもめ事に発展しないよう慎重な対応が必要となります。

ごみ問題は長引くと他の入居者のマナーまで悪化しかねないため、早期に対応が必要です。防犯カメラを設置すると抑制効果がありますが、オーナーにとっては費用が掛かることなので、気軽にできるものではありません。もしごみ問題が生じて長期化しているならば、ご自分の目でもごみ置き場の状況を確認し、誰からどんな苦情や相談が来ているのかの経緯を知っておくと、判断材料になるでしょう。

ゴミ出しイメージ

貸す側と借りる側では立場が違うため、入居者から寄せられる苦情や相談、要望の中には、オーナーにとってあまり聞きたくない話も多く含まれていると思います。そのため管理会社が対応し、オーナーさまに積極的に伝えていないこともあると思います。時にはオーナーさまから担当者に、どんな相談が来ているのかを尋ねてみると、賃貸経営に役立つ情報が得られるかもしれません。

著者

伊部尚子

公認不動産コンサルティングマスター、CFP®
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントに勤務し、賃貸仲介・管理業に20年従事。現在は不動産の利活用や相続支援業務を行っている。金融機関・業界団体等での講演多数。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2022年11月29日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

バックナンバー