テーマ:マーケット

都区部の新築分譲マンション市場では、比較的高価格帯の物件に発売戸数の割合がシフトしたことから、平均発売価格(以下、平均価格)は、1億円未満の区分で2.5%程度、1億円以上の区分で3.8%程度上昇

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 11月号

この記事の概要

  • 都区部では、2021年度の平均価格は2020年度比11.7%の急上昇
  • 7千万円を中心とする価格帯と1億円以上2億円未満の価格帯で2つのボリュームゾーンを形成
  • 1億円未満の区分で2.5%程度、1億円以上の区分で3.8%程度の上昇と推定

1)都区部では、2021年度の平均価格は2020年度比11.7%の急上昇

都区部では、新築分譲マンションの2021年度の平均価格は8,449万円で、2020年度の7,564万円から11.7%の急上昇となった[図表1]。

2)7千万円を中心とする価格帯と1億円以上2億円未満の価格帯で2つのボリュームゾーンを形成

2019年度~2021年度について価格帯別※1の供給戸数の供給割合をみると、7千万円を中心とする価格帯と1億円以上2億円未満の価格帯で二つのボリュームゾーンがある。2021年度は、富裕層やパワーカップル(高所得の共働き世帯)の旺盛な取得需要や建築費の高騰が主な原因で発売価格が上昇したと考えられ、前者では全体的に発売戸数が高価格帯へシフトし、後者では発売戸数の供給割合が大きく上昇した[図表2]。

3)平均価格の上昇率は、1億円未満の区分で2.5%、1億円以上の区分で3.8%の上昇と推定

以下では、発売価格で1億円を境に二つに分割した「1億円未満の区分」と「1億円以上の区分」について2019年度~2021年度の推定平均価格※2の変化を確認した。

1億円未満の区分の推定平均価格

2019年度6,176万円、2020年度6,185万円(前年度比0.2%上昇)、2021年度6,338万円(同2.5%上昇)

低価格帯での供給割合が減少し、高価格帯へのシフトが進んだ。推定平均価格の2021年度の上昇率は2.5%程度と推定される[図表2と図表3]。

1億円以上の区分の推定平均価格

2019年度1億6,763万円、2020年度1億7,006万円(前年度比1.4%上昇)、2021年度1億7,653万円(同3.8%上昇)

2021年度は、2億円以上の価格帯と3億円以上の価格帯の供給割合も大きくなった。推定平均価格の2021年度の上昇率は3.8%程度と推定され1億円未満の区分よりも高い[図表2と図表4]。

推定平均価格では、1億円未満の区分は2.5%程度、1億円以上の区分は3.8%程度上昇しているものの、全体の上昇率11.7%よりかなり小さいと推定される※3。

[図表1]新築分譲マンションの平均価格の推移

[図表1]新築分譲マンションの平均価格の推移

[図表2]価格帯別の発売戸数の供給割合

[図表2]価格帯別の発売戸数の供給割合

図表1、2のデータ出所:(株)不動産経済研究所
「首都圏新築マンション市場動向」

[図表3]1億円未満の区分の推定平均価格と供給戸数

[図表3]1億円未満の区分の推定平均価格と供給戸数

[図表4]1億円以上の区分の推定平均価格と供給戸数

[図表4]1億円以上の区分の推定平均価格と供給戸数

図表3、4のデータ出所:(株)不動産経済研究所
「首都圏新築マンション市場動向」

  1. ※1:価格帯は不動産経済研究所が公表する区分を集約している場合がある。例えば、「4,000万円以下」の表記は不動産経済研究所の「3,000万円超3,300万円以下」と「3,300万円超3,500万円以下」と「3,500万円超3,700万円以下」と「3,700万円超4,000万円以下」の価格帯を集約
  2. ※2:価格帯別の平均価格は開示がないため、原則価格帯の中間値を平均価格(一定)とし、「2,500万円以下」の価格帯の平均価格は2,500万円、「3億円以上」の価格帯の平均価格は4億円と設定した。各年度の推定平均価格は、1億円未満の区分に属する各価格帯の平均価格×供給戸数を合算し、当該各価格帯の供給戸数合計で除して求めた。つまり、2019年度~2021年度における各価格帯の発売戸数の変動による1億円未満の区分の平均価格の変化を推定した(1億円以上の区分も同様に推定。各価格帯の平均価格の変動は無視した)。
  3. ※3:上記方法で2021年度の全体の上昇率を算出すると12.2%となり、現実の平均価格の上昇率11.7%に近い。2020年度~2021年度にかけての戸数の割合は、1億円未満の区分で85.3%→79.0%に低下、1億円以上の区分で14.7%→21.0%に上昇で、1億円以上の区分の割合が大きく増大した(これは、戸数の増加率が1億円未満の区分では9.5%に対して、1億円以上の区分では69.7%と大幅に増加したことによる)。1億円未満の区分の上昇率2.5%、1億円以上の区分の上昇率3.8%に対し、全体の上昇率が12.2%(現実は11.7%)と大きくなったのは、1億円以上の区分の戸数が大幅に増加し、全体に占める割合が増大したためと考えられる。

都区部で取引される主な住宅のタイプの販売戸数・契約件数の推移

[図表5]新築分譲マンションの販売戸数、中古マンションの契約件数及び中古戸建の契約件数

[図表5]新築分譲マンションの販売戸数、中古マンションの契約件数及び中古戸建の契約件数

データ出所:新築分譲マンション販売戸数は(株)不動産経済研究所「首都圏新築マンション市場動向」、その他は(公財)東日本不動産流通機構「月例速報Market Watch」

都区部における住宅の取引量(販売戸数・契約件数)を、住宅タイプ※4別にみた。

2018年度~2022年度のそれぞれの住宅タイプの販売戸数※5・契約件数を整理すると、中古マンションの契約件数が15,000件程度で最も多く安定して推移している。

次いで新築分譲マンションの販売戸数が多く、11,000~14,000戸台で推移している。2021年度では、建築費の高騰下で供給され、住戸の高価格帯へのシフトがあったが、販売戸数は伸びた。

中古戸建の契約件数は少ないが、増加傾向にある。

  • ※4:本稿では新築分譲戸建を除いた。
  • ※5:新築分譲マンションの販売戸数は、前年度末の販売在庫数に新規供給戸数を足して、年度末の販売在庫数を控除して求めた。

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成:株式会社都市未来総合研究所 研究部

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