テーマ:賃貸管理

賃貸住宅を新築する際の目の付けどころ!

「不動産投資」管理の重要なポイント (第41回)

この記事の概要

  • 新築や建て替えをする際に、建築メーカーからのプランを管理会社目線で見て欲しいという依頼が来ることがあります。数多くの賃貸住宅を長年に渡り管理してきた立場から、新築時の注意点をまとめてみます。

賃貸住宅を新築する際の目の付けどころ!

1.間取りプランはニーズに合っているか

m2あたりの家賃単価を考えると、ファミリー向けに比べ単身向けなど狭めの間取りプランの方が家賃単価が高く事業収支が良くなる傾向ですが、見かけの事業収支より先に考えなければならないのが、そのエリアでの長期的なニーズです。そのエリアに数多く供給されている間取りと、お部屋探しをしている人から問い合わせが多い間取りは違いますので、その場所を良く知る賃貸管理会社等に意見を求めると良いでしょう。

一度建築したら間取りプランは簡単に変えられませんので、長期的な目線で考えることも大切です。「大学の存否」や「社宅需要がある大きな会社の移転」、「駅前の再開発」など、そのエリアの将来の人口や賃貸需要を左右する情報はきちんと調べましょう。自治体で公表している統計資料で年齢や世帯ごとの人口の推移も参考になります。

スーパーなどの買い物情報、飲食店の情報、子育てのしやすさ、治安などの情報も、「○○市 住みやすさ」などのキーワードでインターネット検索をするとたくさんの情報が出てきます。実際に住んでいる人のリアルな口コミも多いので、それらも参考にすると良いでしょう。

2.設備はどんなものが入るのか

居室に入るキッチン・洗面台・浴室・トイレなどの水回りの設備や、靴箱、クローゼットなどの収納の詳細は、建築メーカーにお任せのオーナー様も多くいらっしゃいますが、簡単に交換できない部分なので、ターゲットとする入居者層の好みや今後の維持管理を想定しつつ、選べる余地がある範囲でしっかりこだわって選ぶべきです。下表にポイントをまとめましたので参考にしてください。

設備 チェックポイント
コンロ ガスは根強い人気がある一方、徐々に広まってきたIH仕様にするか。
洗面台 ボウルの形、収納量、水栓はシャワー付きにするか等、デザインと機能どちらを重視するか。
浴室 追い焚きをつけるか。混合水栓は2ハンドルかサーモスタット水栓か。
トイレ 一体型は分離型と比べ掃除も楽だが、故障したときは全体交換が必要となるので、使い勝手とコスト面どちらを優先するか。
靴箱 腰高のカウンタータイプ、カウンターと吊戸棚タイプ、壁一面のトールタイプなどがあり、想定される入居希望者のニーズに合うものを選択する。
クローゼット ハンガーバーや可動棚など、持ち物が収納しやすく、出しやすい作りを意識する。

ガスコンロイメージ

3.共用設備の維持管理のしやすさ

ごみストッカー、宅配ロッカー、防犯カメラなどの共用設備は、選ぶものによって引き渡し後の管理運用が変わってきます。

ごみは地域の清掃事務所に収集してもらわなければならないため、物件専用のごみストッカーにごみを出す場合、そこから直接収集してもらえるのか、誰かが集積所にごみ出しをしなければならないかで管理費が大きく変わります。ごみ収集がどうされるかを調べてから選びましょう。

宅配ロッカーも種類によって、手間や費用が変わります。デジタル式は入庫・出庫の管理が出来て、トラブル時にもコールセンターが対応してくれるなど便利ですが、その分ランニングコストがかかるものが多いです。アナログのダイヤル式はこれといった維持管理は不要ですが、誤配や開かないなどのトラブル時には誰かが現地に行って対応しなければなりません。維持管理方法や入居者の使い勝手を考慮して選んでください。

防犯カメラは大きく分けて、ハードディスクのある有線のタイプ、ネットワーク式の無線のタイプがあります。有線のタイプは配線工事が必要、無線のタイプはインターネット環境が必要になり、物件ごとに導入費用が変わってきます。何時間分の録画ができるのか、録画画像を見るにはどうすれば良いのか、後からカメラを追加する場合は費用がどのくらいかかるのかなどを考えて選ぶと良いと思います。

賃貸物件は建てて終わりではなく、完成して引き渡されてからが本当の賃貸経営の始まりです。入居者募集、入居中の維持管理、退去、また次の入居者募集・・・というプロセスが繰り返されることを想像し、どのシーンでどういうことが起こるのかを考えながら、新築のプランニングを進めて下さい。特に、後から簡単に変えられない部分に関しては、賃貸管理会社等としっかり打合せをして決めると良いと思います。

著者

伊部尚子

公認不動産コンサルティングマスター、CFP®
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントに勤務し、賃貸仲介・管理業に20年従事。現在は不動産の利活用や相続支援業務を行っている。金融機関・業界団体等での講演多数。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2022年10月28日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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