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都道府県地価調査(基準地価)にみる地価動向

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 10月号

この記事の概要

  • 2022年の都道府県地価調査(7月1日時点)によると、全国の地価の対前年変動率は、住宅地が31年ぶりに上昇に転じた。商業地もインバウンド需要の減退による影響を残しつつも、人流の回復を背景に3年ぶりに上昇に転じるなど、全国的に地価の回復傾向が顕著となった。
  • 東京都区部の住宅地では全ての区で地価が上昇し、上昇率も拡大した。居住環境や生活利便性が高い地域を中心に、希少性を備えた都心部(高価格)と、都心への近接性と価格の手ごろさを備えた区で上昇率が高い傾向となった。

全国の地価は、住宅地、商業地ともに回復基調となるも一部にインバウンド消失の影響は残る

住宅地は、都心部、郊外部ともに再開発や交通インフラの整備など居住環境や利便性が向上した地域に対する需要が堅調であることを背景に、全国平均で31年ぶりに上昇(+0.1%)に転じた[図表1、2]。

全国的に大都市を中心とした都市中心部では、生活利便性の高さに加え、マンション素地としての希少性から需要が強く、コロナ感染拡大前後を通じて地価の上昇を牽引している。大都市の都心郊外部や都心に近接する都市では、都心への近接性と相対的な価格の低さに加えて、テレワークの定着化による住宅需要の高まりも地価上昇の一因となっていると考えられる。一方で、交通や生活の利便性に劣り人口減少が顕著な地域では依然として地価の下落傾向が続いており、人口減少など構造的な要因を有する地域や地点では、当面同様の傾向が続くと考えられ、立地による濃淡は大きい。

商業地は人流の回復、個人消費の持ち直しを背景とした店舗需要の回復や、堅調なマンション需要から、全国の平均変動率は0.5%と3年ぶりに上昇した[図表1、2]。人流が回復しつつある観光地や繁華街では地価の回復傾向がみられ、特に再開発事業が進む都心や地方都市では、利便性や繁華性向上への期待感も地価上昇に寄与したと考えられる。

一方で、大阪市道頓堀や岐阜県高山市など「インバウンド需要の減退で地価が下落した地域」などでは、人流の回復により下落幅は縮小しているものの地価上昇には至らず、依然として地価の下落が続いている。これらの地域については、インバウンド需要が回復することによって反転上昇する可能性もあるが、当面は不透明な状況が続くと考えられる。

地価公示との共通地点における半年ごとの地価変動率をみると、全ての圏域で住宅地、商業地ともに前半よりも後半において回復傾向の強まりがみられる結果となった[図表3]。

[図表1]圏域別・用途別の地価変動率

[図表1]圏域別・用途別の地価変動率

データ出所:国土交通省「都道府県地価調査」

※圏域の定義等については以下のとおり。

  • ・「三大都市圏」とは、東京圏、大阪圏、名古屋圏をいう。
  • ・「東京圏」とは、首都圏整備法による既成市街地及び近郊整備地帯を含む市区町の区域をいう。
  • ・「区部都心部」とは千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、渋谷区、豊島区をいう。
  • ・「区部南西部」とは品川区、目黒区、大田区、世田谷区、中野区、杉並区、練馬区をいう。
  • ・「区部北東部」とは墨田区、江東区、北区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区をいう。
  • ・「大阪圏」とは、近畿圏整備法による既成都市区域及び近郊整備区域を含む市町村の区域をいう。
  • ・「大阪市中心6区」とは北区、福島区、中央区、西区、天王寺区、浪速区をいう。
  • ・「京都市中心5区」とは北区、上京区、左京区、中京区、下京区をいう。
  • ・「名古屋圏」とは、中部圏開発整備法による都市整備区域を含む市町村の区域をいう。
  • ・「地方圏」とは、三大都市圏を除く地域をいう。
  • ・「地方圏 (地方四市)」とは、北海道札幌市、宮城県仙台市、広島県広島市、福岡県福岡市をいう。
  • ・「地方圏 (その他)」とは、地方圏の地方四市を除いた市町村の区域をいう。

[図表2]圏域別の対前年地価変動率の推移

[図表2]圏域別の対前年地価変動率の推移

[図表3]地価公示との共通地点における半年ごとの地価変動率の推移

[図表3]地価公示との共通地点における半年ごとの地価変動率の推移

図表2、3のデータ出所:国土交通省「都道府県地価調査」

東京都区部の住宅地は全区で上昇が継続、全地点で上昇率が拡大

[図表4]東京圏の東京都特別区及び人口10万以上の市の対前年平均変動率

[図表4]東京圏の東京都特別区及び人口10万以上の市の対前年平均変動率

データ出所:国土交通省「都道府県地価調査」

東京都区部住宅地の区平均対前年変動率はすべての区で前年を上回った。都心部の高価格帯の地点(高級住宅地)では、居住環境の高さや希少性による需要が底堅く、中央区(1.1%→4.0%)、新宿区(1.0%→3.7%)など顕著であった。

一方、都心周辺区では、都心への近接性と価格の手ごろさから、コロナ感染拡大前後を通じて地価の上昇が続いている。

特に再開発や交通インフラの整備など居住環境や利便性が向上した地域に対する需要は強く、中野駅周辺で11もの再開発が進む中野区では上昇率が前年の+0.8%から+3.3%に拡大するなど、地価の上昇が顕著となっている。

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成:株式会社都市未来総合研究所 研究部

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