テーマ:マーケット

中古住宅取得の理由にみるリフォームや品質確保の視点と実施傾向

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 9月号

この記事の概要

  • 令和3年度(2021年度)住宅市場動向調査(国土交通省住宅局、2022年3月公表)によると、3大都市圏※1において、住宅取得の際に中古住宅を選択した主な理由としてリフォームの効果や品質の確保、保証・アフターサービスの付与と回答した割合が近年の調査では高くなった。
  • 同じく、2020年度に3大都市圏で中古(既存)住宅を取得した際、リフォームを実施したのは7割を超え、インスペクション(住宅診断)の実施や、瑕疵保険に加入した割合は近年緩やかながら上昇している。

■中古住宅の選択理由は「予算的に手頃」が最多。リフォーム関連が上昇

住宅市場の実態把握を目的として住宅取得者等を対象に調査した「住宅市場動向調査」を国土交通省が2001年度から継続して実施している。本稿では同調査から、3大都市圏における住宅取得に際して、中古住宅を選択した理由や、取得した中古住宅のリフォームやインスペクションの実施等の有無について整理する。最新のデータは2021年度調査結果(2020年度の住宅取得者が調査対象)による。

中古住宅を選択した理由(複数回答)で最多となったのは「予算的に手頃」が一戸建てで6割、共同住宅で7割程度、続いて「新築にこだわり無し」がそれぞれ4割前後であった。「リフォームの予定」、あるいは「リフォーム済み」を理由としたのは共同住宅で高く、2021年度が直近10年で最も高い数値であった。リフォームに関することが中古住宅選択、特に共同住宅において、判断材料としてのウエイトが高まっている。「品質が確保されている」は1割強と低位にあるが、地域差があり、首都圏が1割超で推移する一方、中京圏や近畿圏は1割未満の回答が多かった。2021年度は各都市圏とも1割を超えた[図表1]。

[図表1]中古住宅にした理由(3大都市圏) 左図:一戸建て、右図:共同住宅

[図表1]中古住宅にした理由(3大都市圏) 左図:一戸建て、右図:共同住宅

注)「その他」と「無回答」は割愛

データ出所:国土交通省「住宅市場動向調査」

■インスペクション実施と瑕疵保険への加入の割合は緩やかに高まっている

購入した中古住宅のリフォームや品質の確保について3大都市圏における近年の傾向をみると、中古住宅取得に伴うリフォームについては、売主あるいは購入者による実施ありが7-8割にのぼる。2020年度は3大都市圏で差が多少開いたが大きな差異はない[図表2]。品質の確保に関連して、インスペクションは、2015年度以降売主あるいは購入者の依頼による実施率が緩やかに上昇している。首都圏での実施率が比較的高く、2020年度は2割に達した[図表3]。また、瑕疵保険への加入割合も緩やかに上昇している。保険付与のために行われる住宅検査は雨漏りや主要構造部に関するものでインスペクションよりも検査範囲が狭いものの、一定の安心が確認、担保されることでインスペクションより高い実施割合にあると考えられ、首都圏と中京圏が2-3割で比較的高い[図表4]。長期優良住宅※2に認定された物件を購入した割合は3大都市圏全体ではほぼ横ばいである。2009年から始まった認定制度であり、中古市場に流通している物件が少ないこと、また、一般に住宅価格が高くなることも長期優良住宅の割合が伸びていない要因とみられる(調査は2017年度以降)[図表5]。

[図表2]リフォームの実施割合

[図表2]リフォームの実施割合

データ出所:国土交通省「住宅市場動向調査」

[図表3]インスペクションの実施割合

[図表3]インスペクションの実施割合

データ出所:国土交通省「住宅市場動向調査」

[図表4]瑕疵保険への加入割合

[図表4]瑕疵保険への加入割合

データ出所:国土交通省「住宅市場動向調査」

[図表5]長期優良住宅の認定割合

[図表5]長期優良住宅の認定割合

データ出所:国土交通省「住宅市場動向調査」

※1:3大都市圏のうち首都圏は埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県。中京圏は岐阜県、愛知県、三重県。近畿圏は京都府、大阪府、兵庫県

※2:長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅で、国が定めた基準をクリアすると認定される。2022年3月末の累計認定実績は一戸建てが1,330,333戸、共同住宅等が25,986戸で大きな開きがある。

特別区(東京23区)・政令指定都市の昼間・夜間人口の動き

特別区(東京23区)と政令指定都市の国勢調査における2015年から2020年にかけての昼間・夜間人口の動きから、特別区とさいたま市、川崎市、福岡市で夜間人口と昼間人口の双方の伸び率がとりわけ高いことが分かる。

昼間人口と夜間人口がともに増加した11都市のうち、昼間人口の増加率が夜間人口増加率を上回った(図中y=x線の上方)千葉市など3市は、住宅需要の増加に加えて、産業の成長や雇用の増加が起こったとみられる。また、夜間人口増加率が昼間人口増加率を上回った札幌市など7市と特別区は、居住地としてのニーズがさらに高まったと考えられる。

[図表6]特別区・政令指定都市の昼間人口・昼夜間人口比率の増減(2020/2015年)

[図表6]特別区・政令指定都市の昼間人口・昼夜間人口比率の増減(2020/2015年)

データ出所:総務省「国勢調査 従業地・通学地集計」より作成

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成:株式会社都市未来総合研究所 研究部

※本コンテンツは参考情報の提供を目的とするものです。

※2022年9月29日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

※当社は、読者に対し、本資料における法律・税務・会計上の取り扱いを助言、推奨もしくは保証するものではありません。

※本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成していますが、その正確性と完全性、客観性については当社および都市未来総合研究所は責任を負いません。本コンテンツに掲載した記事の無断複製・無断転載を禁じます。