テーマ:賃貸管理

共用部分に手を加えて第一印象を変える

「不動産投資」管理の重要なポイント (第39回)

この記事の概要

  • 屋根や外壁など主要構造部分は、必要に迫られて大規模修繕を行いますが、そのほかの共用部分が劣化してもつい放置しがちです。しかし、いくらお部屋のリフォームを頑張っても、お部屋を見る前に目にする部分が劣化していては、第一印象が悪くなってしまい成約率にも影響します。共用設備に手を入れて、第一印象をアップする方法について考えていきましょう。

共用部分に手を加えて第一印象を変える

1.エントランス周辺

建物に入って最初に目につきやすい部分の代表格は、集合ポストではないでしょうか。チラシが溢れて床にこぼれ落ちている物件はとても印象が悪いですが、ポストの下にごみ箱を設置したらきれいに保たれるようになったという事例が数多くあります。ごみ箱の代わりに段ボール箱を置いている物件をときどき見かけますが、見た目も悪く、家庭ごみを入れる人が出たりしますので、大きなごみが入れにくい蓋つきのタイプで、エントランスの雰囲気に合うデザインのものを選ぶのがお薦めです。

掲示板も目に付きやすい場所にあるため、整った印象にしておきたい部分です。古さが目立つのは画鋲で掲示物を貼るタイプの掲示板で、なぜか昔の小学校を思わせるような緑色のものが多くあります。画鋲は落ちると危ないので、マグネットで貼るタイプに交換すると良いでしょう。様々な種類のものがありますので、エントランスの雰囲気に合う色やサイズのものを選んで下さい。

掲示されているチラシの内容も、お部屋探しの人の目線で再確認してみましょう。古いチラシがずっと貼りっぱなしで変色していたり、湿気でよれよれになっている物件が少なくありませんので、必要なチラシであれば新しいものに交換しましょう。また、騒音やごみ捨てに関する注意文にも注意が必要です。せっかく物件を見に来た人に「マナーの悪い人が住んでいる物件」という印象を与えるような注意文は掲示を避けて、各住戸のポストに投函すると良いでしょう。

掲示板

2.エレベーターの内装等

ご所有の物件に古いエレベーターがある場合、扉部分の塗装が剥がれたり、傷や落書きが有ったり、床のマットや内部壁面保護用のフェルトが劣化したりしていませんか?エレベーターも第一印象を左右する部分ですが、定期点検が法律で決まっている建築設備なだけに、オーナーが手を付けてはいけない部分だと勘違いされやすく、劣化したまま放置されることが多いのです。

エレベーターの保守点検には部品交換や修理の費用が含まれている「フルメンテナンス契約」と、それらが含まれていない分リーズナブルな料金の「POG契約」があります。POGとはParts(パーツ)、Oil(オイル)、Grease(グリス)の略で、消耗部品の交換、オイルの補給、潤滑剤の塗布が含まれています。「フルメンテナンス契約」にはそれら消耗部品のほか、ブレーキやロープ、バッテリーなどの部品の修理・交換費用が含まれています。

どちらの契約にも「昇降かご」や「扉」などの汚損・破損による取替えは含まれていませんので、オーナー自らが手を入れなければなりません。方法としては、扉の表面や昇降かご内部のシート貼り、フェルトの交換、床マットの交換等が考えられます。建物の階数が多いと貼り替える箇所も多くなりますので、予算が足りない場合は昇降かご内部と1階部分だけに限定して貼り替えても良いでしょう。

エレベーター

3.居室の玄関ドアまわり

各居室の玄関ドアも、劣化が見過ごされがちな部分です。面材が日焼けして変色したり、塗装が剥げたりしていると第一印象が悪くなります。ドア自体を新品に交換することも出来ますが、全世帯分行うとかなり高額になってしまいますので、より安価に済ませるならば、シート貼りや塗装を検討してみると良いでしょう。玄関ドアは各部屋の顔となる部分ですが、劣化が気になっても入居者が勝手に手を入れられないので、きれいになるととても喜ばれます。

また、玄関ドアのレバーハンドルの塗装が剥げていたり、錆びてまだら模様になっている物件もよく見かけます。入居者入れ替え時の鍵交換ではハンドルまで交換しないので、鍵シリンダー部分は新しくてもハンドルだけ劣化したままになりがちです。比較的安価に交換が可能なので、鍵屋さんや管理会社に相談してみて下さい。毎日手に触れる部分がきれいになるのは誰でも嬉しいものです。

部屋番号が記載してある室名板も、古いままずっと交換されず残ってしまいがちです。今や廃止となったNHKや国勢調査のシールが貼られたまま、劣化が進んだ古い室名板は見た目も良くありません。これもさほど高いものではないので、新しいものに交換してみると良いでしょう。

賃貸物件の共用部分は、お部屋探しで現地に来てくれたお客様の第一印象を左右するだけでなく、入居者にとっては毎日何度も目にしなければならない部分でもあります。共用部分に手を入れる行為は空室対策と長期入居対策を兼ねており、コストパフォーマンスも高いので、ぜひ取り入れてみて下さい。

著者

伊部尚子

公認不動産コンサルティングマスター、CFP®
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントに勤務し、賃貸仲介・管理業に20年従事。現在は不動産の利活用や相続支援業務を行っている。金融機関・業界団体等での講演多数。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2022年8月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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