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この記事の概要
土地や建物は人や財産の拠点であることから、賃貸借契約を締結するにあたっても自然災害からの被害発生リスクがある情報の重要事項説明をすることになっており、「土砂災害警戒区域」もその一つです。
各自治体は警戒区域等の指定を随時更新しており、状況の変化が起こり得るため、投資用物件として購入したタイミングで指定区域が変わっている可能性もあります。物件所在地の自治体ごとに情報のまとめ方、公開の仕方が違いますので、インターネットで簡単に調べられない場合は、担当窓口を調べて問い合わせをすれば教えてもらえます。
「自分の物件周辺は平らな土地だから、土砂災害は関係ない」と仰るオーナー様がいらっしゃいますが、「土砂災害警戒区域」は傾斜地だけの問題ではありません。平地であっても、河川の近くなどで土石流の警戒が必要な地域の場合は指定されることがありますので、念のため確認してみると良いでしょう。
近年の大規模水害により大きな被害が発生していることから、不動産賃貸借の際にも水害に関係する情報が意思決定の重要な要素となるとされ、賃貸借契約でも重要事項説明書の内容に追加されました。
説明に追加された水害は次の3種類で水防法に基づくそれぞれの水害ハザードマップが「有るのか無いのか」と、有る場合は「マップ上での建物位置」を示す必要があります。
なお、説明する義務があるのは「水防法に基づく水害ハザードマップ」であり、それ以外のものを使って説明することは出来ません。「水防法に基づくハザードマップ」を公開している自治体のものは、国土交通省が作成している「ハザードマップポータルサイト」で調べることができますが、どのマップか不明な場合は自治体に問い合わせる必要が生じます。
土砂災害警戒区域や水害ハザードマップは、仲介をする不動産会社が調査をするものですが、宅地建物取引業法の改正により2018年4月から施行された「建物状況調査(通称インスペクション)」実施の有無は、不動産会社がオーナー様に実施の有無を確認し、その内容を賃借人に説明するものです。
ここでいう「建物状況調査」とは、国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者が、既存住宅状況調査方法基準に基づき、建物の基礎、外壁など建物の構造耐力上主要な部分、および雨水の浸入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の状況を調査したものを指します。ハウスメーカーや建設会社が実施している建物点検や、既存住宅状況調査技術者の登録を受けていない建築士等が行う住宅診断は、ここでいう「建物状況調査」に当たりませんので、不動産会社に聞かれた際に間違えて回答しないように気を付けてください。
「建物状況調査」の実施が義務化されたと勘違いなさっているオーナー様がまれにいらっしゃいますが、調査の有無についての説明義務があるだけで、調査の実施自体は義務ではありません。
過去に「建物状況調査」を実施したことがある場合でも、説明義務があるのは過去1年以内の調査の有無についてのみなので、それ以前のものは説明する必要はありません。説明義務があるのは住宅だけで、店舗や事務所は対象外となります。
どんな調査内容なのか興味がある方は、国土交通省が「建物状況調査の結果の概要(重要事項説明用)」というサンプルを公表しているので確認してみてください。
最近は地震も多いためか、土砂災害や水害だけを気にしていても仕方がないと考える方も多くいらっしゃいます。もし物件が災害に関して警戒の必要な区域内だったとしても、入居者に安心してもらうために、地域の防災に関する情報を掲示板に貼ったり、防災グッズを入居者に配布するなど、オーナー様にできることは色々あります。まずは、ご自分の所有物件について、調べることから始めてみてはいかがでしょうか。
伊部尚子
公認不動産コンサルティングマスター、CFP® 独立系の賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントに勤務し、賃貸仲介・管理業に20年従事。現在は不動産の利活用や相続支援業務を行っている。金融機関・業界団体等での講演多数。
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
※ 2022年4月26日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。
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