- 賃貸住宅の入居者募集をするにあたり、何がアパートで何がマンションなのかと疑問を持ったことがある人は多いと思います。実は、アパートとマンションの違いについては建築基準法や宅地建物取引業法でも規定がなく、法的には明確ではありません。では、実際には表記をどのように決めているのか、入居者募集の際の実務をお伝えします。
1.不動産情報サイトでは建物の構造で表記が決まるのが基本
賃貸仲介を業として行っている不動産会社は、「何がアパートで何がマンションか」の定義を独自に決めています。収拾つかない状況になりそうですが、実務的に賃貸物件の募集をするときには不動産情報サイトを利用するため、不動産情報サイトの定義に合わせた表記に統一されていきます。
例えば、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)では、不動産物件の広告表示における登録ルールまたは用語の意味を統一しており、「アパート」と「マンション」は構造で定義づけしています。
◆アパート:軽量鉄骨造・木造等の建物
◆マンション:鉄筋コンクリート造・その他堅固な構造の建物
このルールに従うと、鉄筋コンクリートの2階建の共同住宅があった場合、見た目は低層でも「マンション」と表記され、木造で3階建の共同住宅は「アパート」と表記されることになります。なお、軽量鉄骨造以外の鉄骨造は「その他堅固な構造の建物」に含まれます。
2.登記上の建物の構造はどうやって決まるのか
不動産会社の担当者は、実務上、不動産登記記録の建物の構造欄を確認して募集情報に反映させていますので、登記上の記録が鉄骨造になっていると募集情報はマンション表記となり、軽量鉄骨造になっているとアパート表記になります。では、登記上の建物の構造はどうやって決まっているのでしょうか。
「鉄骨造」を例にすると、賃貸住宅を新築するときには、まず「こういう建物を建てます」と建築確認申請を行い、完成後の調査で申請どおりに建築されていることが分かれば、建築確認済証が交付されますが、建築確認済証には鉄骨造と軽量鉄骨造の区別は無く両方とも鉄骨造と記載されています。それを元に土地家屋調査士が不動産の登記を申請するのですが、使用されている鉄骨の厚みによって鉄骨造として申請するのか、軽量鉄骨造として申請するのかが決まっていきます。
なお、登記記録に軽量鉄骨造と表記されると鉄骨造より課税標準額が低くなるため、登録免許税や固定資産税が安くなるというメリットがありますが、その一方で、建物の構造が鉄骨造であれば軽量鉄骨造より耐用年数が長くなり、融資期間や減価償却期間も長くなります。鉄骨造と軽量鉄骨造のどちらがよいかは投資戦略によっても変わってきます。
3.アパート・マンション表記のルール変更
軽量鉄骨造の物件を所有するオーナーからは「マンションで募集してほしい」という要望も多く、長年問題になっていました。
最近この問題に大きな変化が起きました。大手の不動産情報サイトが木造・軽量鉄骨造の賃貸共同住宅について、一定の条件を満たせば「マンション」と表示できるというルールを発表したのです。対象となるのは3階建て以上の長屋を除く木造・軽量鉄骨造の賃貸共同住宅で、決められた建築性能を満たしているものですが、近年の住宅性能の向上を受けての表記ルール緩和は、オーナーにとってもうれしいニュースだと思います。
一般的に、アパートよりマンションの方がグレードが高いイメージを持つ方が多いこともあり、入居募集時に「アパート」になるのか「マンション」になるのかはオーナーにとって気になる問題ですが、ルールを理解してご自分の物件の募集戦略に生かして頂きたいと思います。
公認不動産コンサルティングマスター、CFP®
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
※ 2022年2月24日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。