リフォームに「予備費」の確保が必要なワケ

中古+αで住まいの満足度アップ(第5回)

この記事の概要

  • リフォーム工事は、依頼主がプランと見積もりを入念に検討し、内容や金額に納得したうえで契約書を交わした後に行うものです。つまり、あらかじめ工事金額は確定していることになります。ところが実際は、最終的な支払い段階でこの金額が変わることがしばしばあるものです。なぜ契約締結後に金額の変更が生じるのでしょう。今回はその具体例と、最後に慌てないための予備費の必要性について紹介します。

リフォームに「予備費」の確保が必要なワケ

即日〜数日程度で完了する設備更新工事などと違い、間取り変更などを伴う大型リフォームは数カ月間かかることも珍しくありません。その際、工事期間中にさまざまな理由で工事内容が変わり、工事金額が変更になることは起きるものです。

例えば、1000万円クラスのリフォーム工事で、最初からトイレの紙巻器まで品番指定して契約することは稀なケースです。定額制リフォームでもない限り、まず工事金額を概算で契約し、詳細な仕様決定は実際の工事に入ってから、というのが一般的な進め方となっています。リフォームローンを予定していたり、中古住宅購入時にリフォーム費用も含めた住宅ローンを設定するような場合、数字の正確性よりも契約書の発行スピードを重要視するといった理由もあります。

それでは、契約金額と最終工事金額が変わるケースをもう少し詳しく見てみましょう。大きくは、❶「リフォームの工程上の理由による変更」と、❷「依頼主側の要望による変更」とに整理できるかと思います。

解体して初めて分かる必要工事もある

❶の「リフォームの工程上の理由による変更」の代表例は、先に説明したように、見積もり時や契約時の概算で計上していた項目について、実際の選定商品や機器に応じた差額が発生するケースです。契約時に仮の数字で設定していたわけですから、最終使用商品に応じて工事金額の増額または減額を行います。こうした差額の確認として、適宜リフォーム会社から「増減額表」を提示してもらい、金額の増減を確認しておくことが大切です。

まめに確認していれば、最終精算時に「当初の契約金額と大きく違う!」と驚くことはありません。加えて、必要な工事がかさんで予算がアップしそうなら、設備や建材のグレードを変えたり、一部の工事を後日に延ばすといった形で工事金額を抑えることも可能です。

また、工事を開始してから初めて分かる必要工事というものもあります。

リフォーム会社は、お客さま宅への初回訪問時、リフォーム現場の採寸や簡易な建物調査を行いますが、その範囲は基本的に「目視できる部分」のみ。まだ相見積もりの段階ですから、壁を剥がしたり壊したりして内部の劣化状態を確認するようなことは通常行いません。したがって、リフォーム工事に入り、壁や床下、天井裏を開けてみて、初めて建物の劣化状況や必要な工事が判明するわけです。

その代表的な例が、戸建て住宅におけるバスルームの交換工事。現在では住宅設備メーカーのシステムバスルーム(ユニットバス)の採用が一般的ですが、築年数の古い戸建て住宅は在来工法による浴室であることが当たり前。このような場合、古い浴室部分を解体した際に、浴室下部の床下が傷んだり腐っていたりしている場合がほとんどで、床下の補強工事が追加で必要になります。キャリアのあるリフォーム会社であれば、こうした追加工事の発生の可能性をあらかじめ示してくれるものです。

さらに予定している商品を調達できず、やむを得ず代替品を探すようなケースも増えています。筆者も最近リフォームする機会がありましたが、希望する腰掛便器や給湯器などのメーカー納品が長期間ストップしてしまい、やむなく別の商品に変更せざるを得ず、予算がアップしてしまいました。大手のリフォーム会社でも設備機器を常時在庫で抱えているケースは少なく、その都度調達になってしまうため、こうした使用商品の変更や価格変動は避けられないものといえます。

工事の進捗とともに依頼主の気持ちは変わる!

さて、ここまではリフォームの工程上どうしても生じてしまう項目ですが、もう1つ「❷依頼主側の要望による変更」もあり得るケースです。契約時には「これでいい」と考えていたプランや仕様なども、いざリフォーム工事が進むにつれて新たな「気づき」や「欲求」が生じるためです。

完成イメージや実際の使い勝手は、図面だけでは判断しにくいものです。それまで平面図中心で確認していたものが、いざ工事が始まり現場の変化を目の当たりにすれば、リフォーム後の暮らしがイメージしやすくなり、「こうした方がより使いやすそう」などと新たなイメージが湧き出るわけです。それは実物大の空間に接して初めて得られる気づきであって、依頼主が優柔不断だからではありません。

同じような理由から、工事途中で設備や建材などのグレードアップ、当初予定していなかった追加工事を検討し始めるようなケースもあります。

例えば、予算の都合で、見合わせた工事があったとしましょう。しかしリフォームが進んでくると、工事をしない部屋や部位がどうしても見劣りしてしまうこともあります。そのため、次回に予定していた工事を追加でお願いしたいとなってしまうわけです。

■(表)契約時と最終精算時のリフォーム工事金額とに差が生じやすい理由

工程上の理由

・契約時の概算項目について精算する必要がある
・工事開始後、必要な修繕工事が見つかる
・当初予定していた機器や建材などが入荷できず、代替品を選ぶ必要がある

など

依頼主側の要望

工事の進捗とともに......
・間取りや仕様などを変更したくなる(工事内容の変更)
・設備や仕様の水準を変更したくなる(グレードの変更)
・当初予定になかった工事を実施したくなる(工事範囲の変更)

など

*取材および筆者のリフォーム実体験をもとに作成

新しい暮らしのイメージがより明確になるにつれて、事前の予算以上に膨らみがちなリフォーム代金。予備費を計上しておき余裕を持った資金計画を立てることが大切といえそうです。

最後に、リフォーム契約は口頭でも成立しますし、修繕などの小規模工事などの場合には、面倒だという理由で契約書を交わさず工事を進めるケースもあるようです。しかし、何かあった際には依頼主側の不利益になりかねません。

例えば工事金額が変更になる場合では、当初の契約書はそのままとし、工事終了後に「変更契約書」を追加締結することが一般的です。つまり、工事終了後の引き渡し時に最終精算を行い、工事金額などの変更点について変更契約書で補完します。即日対応の修繕ならともかく、リフォーム工事であれば規模の大小を問わず契約書を取り交わすようにしてください。

■増減表の一例

増減表の一例

執筆

谷内 信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2022年2月24日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。