テーマ:マーケット

東京圏の中古マンション市場では高価格帯の成約件数の増加が顕著

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 7月号

この記事の概要

  • コロナ下においても高価格帯の成約件数は前年同期を大きく上回って推移。
  • 一方、在庫件数は前年同期を下回り、売り物件の品薄感が強まる。

1)東京圏の中古マンションの成約件数はコロナ下でも増加基調

東京圏(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県の一都三県)の中古マンションの成約件数は、アベノミクスによる景気回復とともに2013年度あたりから増加基調で推移していた[図表1]。コロナ下では、一都三県に初回の緊急事態宣言が発出された2020年4月、5月は売買取引活動の停滞によって成約件数が大幅に減少したが、8月以降は2度、緊急事態宣言が発出されたものの(2021年1月と4月。4月は東京都のみ)、成約件数は増加基調で推移している[図表2]。

[図表1]東京圏の中古マンションの成約件数(2012年度以降の推移)

[図表1]東京圏の中古マンションの成約件数(2012年度以降の推移)

データ出所:公益財団法人東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」(各号)

[図表2]東京圏の中古マンション成約件数(2017年度以降の年度別の推移比較)

[図表2]東京圏の中古マンション成約件数(2017年度以降の年度別の推移比較)

データ出所:公益財団法人東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」(各号)

2)価格帯別では、高価格帯ほど成約件数の増加が顕著

価格帯別では2013年度あたりから高価格帯ほど成約件数の増加が顕著である[図表3]。コロナ以前の2019年度の成約件数を2012年度と比較(年度通期比較)すると、3,000万円以下の価格帯は減少し、3,000万円超は増加している。また、価格帯が高いほど成約件数は増加しており、7,000万円超1億円以下は2012年度の4倍強、1億円超は同5倍強まで増加している。この傾向は、コロナ下でも変わらず、直近2021年1~3月期(図では2020年度Ⅳ)の7,000万円超1億円以下と1億円超の成約件数はそれぞれ前年同期比1.45倍、1.55倍となった[図表4左図]。一方、両価格帯の在庫件数は前年同期比85%、81%と減少しており、売物件の品薄感が強まっている[図表4右図]。

[図表3]東京圏の中古マンションの価格帯別成約件数指数(2012年度各四半期=100)

[図表3]東京圏の中古マンションの価格帯別成約件数指数(2012年度各四半期=100)

データ出所:公益財団法人東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」(各号)

[図表4]コロナ下での東京圏の中古マンションの価格帯別成約件数(左)・在庫件数(右)の前年度同期比

[図表4]コロナ下での東京圏の中古マンションの価格帯別成約件数(左)・在庫件数(右)の前年度同期比

データ出所:公益財団法人東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」(各号)

3)コロナ下でも高額物件の成約件数が堅調な背景

コロナ下で国内景気が低迷しているにもかかわらず、高額物件の成約件数が増加している背景として、所得格差や資産格差が挙げられる。所得格差としては、新型コロナ感染拡大によって売上が大きく落ち込んだ「生活関連サービス業,娯楽業」、「宿泊業,飲食サービス業」は給与水準が低いが、給与水準が相対的に高い業種は売上の落ち込みが小さく、高価格帯の住宅購入層への影響は比較的軽微にとどまっている可能性がある[図表5]。資産格差としては、新型コロナ感染拡大で一時的に大きく下落した株価はその後急回復しており、資産効果によって富裕層を中心に高価格帯の住宅購入意欲が高まっている可能性がある。今後もこうした状況に大きな変化がなければ、高価格帯の住宅購入需要は堅調に推移する可能性がある。

[図表5]産業別の2020年下期の売上高対前年同期比増減率、一人平均現金給与総額、就業者規模(全国)

[図表5]産業別の2020年下期の売上高対前年同期比増減率、一人平均現金給与総額、就業者規模(全国)

データ出所:財務省「法人企業統計調査」、厚生労働省「毎月勤労統計調査」、総務省「労働力調査」

東京23区の地区別の中古マンション成約価格は上昇基調が続く

東京23区の地区別の中古マンション成約価格は、2020年4月に発出された初回の緊急事態宣言が解除されてからは、前年同月を下回る月はほとんどなく、上昇基調で推移しています[図表6]。2020年下期以降(2020年7月~2021年4月)の成約価格は、都心3区がおおむね7,000~8,000万円、城南、城西地区がおおむね5,000万円台前半、城東、城北地区がおおむね4,000万円台前半で、前年同期と比較すると(2019年7月~2020年4月との比較。各月の価格の算術平均)、都心3区と城西地区は10%上昇、城東、城南および城北地区は7~8%上昇するなど、力強い動きがみられます。

[図表6]東京23区の地区別の中古マンション成約価格(左:都心3区、右:都心3区以外の地区)

[図表6]東京23区の地区別の中古マンション成約価格(左:都心3区、右:都心3区以外の地区)

データ出所:公益財団法人東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」(各号)

*都心3区:千代田区、中央区、港区、城東地区:台東区、江東区、江戸川区、墨田区、葛飾区、足立区、荒川区、城南地区:品川区、大田区、目黒区、世田谷区、城西地区:新宿区、渋谷区、杉並区、中野区、城北地区:文京区、豊島区、北区、板橋区、練馬区、城西地区:新宿区、渋谷区、杉並区、中野区、城北地区:文京区、豊島区、北区、板橋区、練馬区

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成:株式会社都市未来総合研究所 研究部

※本コンテンツは参考情報の提供を目的とするものです。

※2021年7月9日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

※当社は、読者に対し、本資料における法律・税務・会計上の取り扱いを助言、推奨もしくは保証するものではありません。

※本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成していますが、その正確性と完全性、客観性については当社および都市未来総合研究所は責任を負いません。本コンテンツに掲載した記事の無断複製・無断転載を禁じます。