テーマ:賃貸管理

リフォームで見落とされがちな細かい修繕項目について

「不動産投資」管理の重要なポイント (第32回)

この記事の概要

  • 賃貸住宅の退室時のリフォームというと、見積書の金額が大きな壁紙や床材の交換、設備交換、室内清掃などに目が行きがちですが、細かい修繕をきちんとすることも賃貸経営にとってはとても大切で、入居率や顧客満足にも差がつきます。
    リフォーム発注時に見落としたり、削ったりしがちですが、やっておくと効果が高い修繕項目について解説します。

リフォームで見落とされがちな細かい修繕項目について

1.汚れ、黄ばみは嫌われる

人が生活すればお部屋は汚れていきますが、自分のつけた汚れは気にならなくても、全く知らない他人が付けた汚れは気になってしまいます。入居者募集中のお部屋にせっかくご案内が入っても、細部の汚れが取れていないことで申し込みに至らないこともあります。

特に水回りの汚れは致命的で、キッチンのガスレンジの五徳の汚れ、魚焼きグリルの内部の汚れ、キッチンや洗面台のコーキングのカビによる黒ずみ、浴室の鏡や水栓金具のうろこ状に固まった水垢、便器の底の黄ばみや黒ずみなどが見落とされがちです。

あまりに汚れがひどい場合は通常の室内清掃では落とせず、部分的に特別清掃を追加依頼することが必要な場合もあります。これは自分自身が掃除することを想像してみれば「手間と時間と洗剤や道具が違うので、通常金額では受けられない」という清掃業者側の事情が理解できると思います。

また、優秀な清掃業者でも落とせないカビや汚れも存在します。例えばコーキングのカビが取れない場合は、掃除を依頼してカビが残ってしまうより、初めから打ち替えを依頼すべきです。

スイッチやコンセントのプレートなどが経年劣化等で黄ばんでしまうと、壁紙を貼りかえると余計に目立ってしまう場合があります。清掃で白くするのは難しいため、どこかのタイミングで思い切って交換するのがおすすめです。

2.小さな消耗品はなるべく交換

小さな部品は費用対効果を考えると、退去ごとに交換するのがおすすめです。

キッチンのシンクのゴミ受けかご、排水口の菊割れゴム、浴室や洗面所のゴム栓などは劣化しやすく、食べ物を扱う場所なので少しの汚れや劣化も気になります。価格も安いので毎回交換すべきところです。

キッチンや浴室、洗面台などの水栓のパッキンも、退去ごとに交換するのが良いでしょう。入居募集中に劣化が進み、ご案内時に蛇口から水を出した時にちょろちょろと水漏れすると、ここに住みたいと高まった気持ちに文字通り水を差すことになってしまいます。

廊下や洗面脱衣所、トイレ、浴室、キッチンの管球も交換すると良いと思います。まだ点灯するからとそのままにしていると、募集期間が長引いて入居前や入居早々に球切れしてしまうことがあります。賃貸借契約書に「管球交換は入居者負担」となっていたとしても、入居してすぐ切れた管球を自己負担で交換するのは気分が良いものではありません。

また、蛍光灯を交換する際は、グローランプも一緒に交換しましょう。蛍光管を発光させる役割のグローランプが切れると、蛍光灯が新しくても点灯しなくなってしまいます。

照明器具は高い位置にあったり、カバーが付いていて外し方が分からなかったりと、交換するのは案外面倒なものです。新しい住まいで気持ちよく暮らしてもらうためにも、ぜひ交換してください。

ガスコンロやエアコンのリモコン、トイレの洗浄のリモコンの電池交換も意外な盲点です。頻繁に交換するものではないので動作しなくなった際に故障と勘違いされやすく、ガスコンロが着火しない、エアコンが作動しない、トイレのリモコンが壊れたなどのクレームに繋がりがちです。いつ切れるか予測しにくいので、顧客満足の観点からもまとめて交換することをお勧めします。

浴室のイメージ

3.住んでから気になる箇所をなくす

機能上は問題なくても、気になるであろう箇所を無くしておくことも効果があります。

例えば古い物件に良く使われているエアコンの配管の粘土が埃で黒ずんでいたり、窓シャッターの紐が黒く汚れていたりするのは案外気になります。交換する手間も費用も安価なので、ぜひ交換するべきでしょう。

扉の開け閉めの時にキーっときしみ音が出たり、引き戸、網戸、サッシなどの建付が悪く開閉時にガタガタしたりするのも嫌なものです。両開きの扉の左右の高さなどがずれているのも見た時に気になります。きしみ音はシリコンスプレーなどで簡単に直る場合もありますが、蝶番の調整や、建具自体の調整はそれなりの技術が必要ですので、リフォーム発注時に一緒に直してもらうのが合理的です。

また、手直しではありませんが気になる箇所に、設備の取扱説明書の保管方法があります。築年数が古い物件だと、入っている袋が破れていたり、ファイルが汚れていることが良くあります。袋もなくバラバラに重ねて置いてあることもあり、紛失されても分かりません。100円ショップのポケットファイルで十分なので、綺麗なものに入れ替えましょう。

その際に注意したいのが、交換して既に無い古い設備の取扱説明書が混じっていたり、電気、ガス、水道などの公共料金の書類が代々の入居者分がいくつも入っていたりすることです。まれに、昔の入居者が購入した家電の取扱説明書が入っていたり、インターネットの申込書に個人情報が記入されたまま入っていたりします。

チェックして不要なものを処分すると、見た目にもかなりスッキリするのでおすすめです。

これらの小さな修繕項目は「雑工事」と呼ばれることもあります。リフォーム費用をなるべく安くしたい場合には削除されがちな項目ですが、やらないと入居者決定のチャンスを逃し、入居後の対応で余分な出張費がかかり、入居者の満足度も下がってしまうという三重苦が生じる可能性があります。

費用はどれも安く、費用対効果が高いので、退去後のリフォーム時に行うことをぜひ検討してみてください。

著者

伊部尚子

公認不動産コンサルティングマスター、CFP®
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※ 2021年9月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。

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