- コロナ禍によって私たちの生活は大きく変化しました。自宅での滞在時間が長くなったことで、模様替え、DIY、リフォームなど、住まいの改善意欲が高まっています。では、持ち家所有者はどのようなリフォームを行っているのでしょうか。調査データも交えながらwithコロナのリフォームの傾向を見ていきましょう。
「ステイホーム」「リモートワーク」などの体験によって、自宅をより便利で快適、居心地のよい場所にしたいという欲求が多くの方に芽生えました。コロナ禍で多くの業種が売上減少する中、ホームセンター業界は好調です。これは、住まい手にとって、DIYやセルフメンテナンスへの関心、実施意欲が高まっているからと読み解けます。家具の買い換え、DIYといった模様替えも人気ですが、暮らしの向上にやはりリフォームを検討する方が多いようです。
■図1 今の家を良くしたいと考えたとき、どのような方法を検討しますか?(n=800、複数回答)
出典:株式会社LIXIL「家族時間の変化と住まいに関する調査」(2021.1)
市場調査・コンサルティング企業で知られる矢野経済研究所の推計によると、2020年の住宅リフォーム市場規模は6兆5298億円と、コロナ禍ながら前年からほぼ横ばいとのこと。緊急事態宣言の影響で一時は契約や工事がストップしたものの、在宅時間の増加により住まい手の住宅への関心が高まり、需要が回復。現在は堅調に推移しているようです。
さて、withコロナ時代の住まい手たちは、どのようなリフォームを希望しているのでしょうか。以下、既存の調査をベースに、筆者がリフォーム店や工務店にヒアリングした“肌感”も少々加えながら探っていきたいと思います。
リフォーム事業者検索サイト『リフォーム評価ナビ』を運営する(一財)住まいづくりナビセンターが、コロナ禍以降ニーズが増えたリフォームについて調査しているので、結果を紹介させていただきます。
■図2 コロナ禍により、ニーズが増えたリフォーム(リフォームの種類)(複数回答、n=180)
出典:(一財)住まいづくりナビセンター「コロナ禍によるリフォーム需要の変化と事業者のIT活用状況に関するアンケート」(2020.10)
修繕・メンテナンスや設備機器の更新など、まず劣化・老朽化した部位や機器を更新させようとする意向が読み取れます。しかし、間取り変更や模様替えなどの意向も強いことから、単なる機能回復に留めず、機能向上によって暮らしやすさや快適性を高めたいとする、居住性の本格的なテコ入れの意思もうかがえます。例えば、耐震性や断熱性などの「性能向上リフォーム」は金額が高めになりがちな工事ですが、こうした工事のニーズが高まっていることからも、住まい手の“本気”ぶりが感じられます。
■図3 コロナ禍により、ニーズが増えたリフォーム(リフォームの目的・内容)(複数回答、n=180)
出典:(一財)住まいづくりナビセンター「コロナ禍によるリフォーム需要の変化と事業者のIT活用状況に関するアンケート」(2020.10)
同じ調査による、リフォームの「目的・内容」を見ても、「設備機器の更新」「使い勝手の改善」「家族構成などライフステージの変化への対応」「高齢者配慮」などのリフォームニーズが上位に来ており、滞在時間が長くなった自宅の居住性能の改善を目指していることがうかがえます。書斎やワークスペースの確保、遮音性能の向上は、自宅でリモートワークする機会が増え、在宅勤務環境を高めたいと考える住まい手が増えたためかと思われます。
“おうち時間”を楽しめる場所を増やす
リフォームしたい具体的な部位や内容については、冒頭で紹介したLIXIL調査で確認しましょう。
■図4 おうち時間を快適にするために、リフォームができるならしたい場所(複数回答、n=800)
出典:(株)LIXIL「家族時間の変化と住まいに関する調査」(2021.1)
リフォームしたいトップ3はリビング、浴室、キッチンでした。“定番リフォーム”ともいえる水まわりを抑えて、リビングが第1位になったことから、家族が集う場所の快適性を高めたいとする意向が強く感じられます。
洗面所や玄関は、清潔性を高めたいとする意向の表れかと思われます。玄関周りに手洗器をしつらえて帰宅後すぐに手洗いする習慣をつけたり、洗面所に向かうなどの行動はTVや雑誌、SNSなどの複数のメディア情報からもよく知られています。窓については断熱性能を高めて室内の快適性、結露をなくすことによる衛生面の向上のほか、外部の騒音を遮(さえぎ)りたいという要望などが考えられます。また、窓にシャッターを追加するなど、防災性を高めたいとする意向もあるように思います。
ベランダについては、第2のリビングとして、もしくはベランピング(ベランダと高規格なキャンプのグランピングを掛け合わせた造語)への注目など、快適に過ごせる場所を増やしたいとする要望の表れでしょう。仕事柄、筆者もリフォーム事業者や工務店など現場の方によく話をうかがうのですが、ウッドデッキをしつらえたり、サンルームやガーデンルームを新設するなど、バルコニーやエクステリアなどを充実させたいとする依頼が増えていると聞きます。
こうしたリフォームの意向は、都市部と郊外、地方部で大きく違ってきますし、家族数や住まい手の年齢によっても要望が変わります。戸建住宅とマンションとでも、リフォームニーズは異なります。
Withコロナにて私たちの生活スタイルは大きく変わりました。当面は「自宅」が生活の基点になる可能性は高く、“おうち時間”の充実を目指したリフォームは注目を浴び続けそうです。
建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
※ 2021年9月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。