【家中、どこでもネット】IoT+AIで深化する見守りサービス

家中、どこでもネットを楽しめるようにしよう!(第4回)

この記事の概要

  •  共働き家庭の増加もあって自宅で留守番する子どもやペット、または離れた親の暮らしを見守りたいというニーズが増えています。近年さまざまなIoT機器が登場し、本格的なセキュリティサービスを導入しなくても気軽にチェックできるようになりました。AIによって深化する、ローコストな見守りサービス例についてご紹介します。

【家中、どこでもネット】IoT+AIで深化する見守りサービス

リモートで見守るネットワークカメラ

国勢調査によると、日本の共働き世帯は全世帯の64.6%を占めるまでになりました(2015年)。夫婦共働きとなると自宅を空ける時間も増加します。セキュリティサービス企業のALSOK(綜合警備保障)の調査によると、小学生の子どもだけで留守番させたことがある共働き家庭は74.2%にもなるとのこと。学年別で見ると、子どもが小学校低学年だと5割程度ですが、高学年になると8割を超えます。

(図)小学生の子どもだけで留守番させること(低中高学年比較)

(図)小学生の子どもだけで留守番させること(低中高学年比較)

出典:ALSOK(綜合警備保障株式会社)「小学生の子供の防犯に関する意識調査」(2019年)

小さなお子様を自宅に残すことは、共働き夫婦の大きな気がかりです。本格的なセキュリティサービスを利用する程ではないが、子どもの自宅での留守番状況を確認したいということで、近年仕事先など出先から自宅の様子をチェックするためのネットワークカメラが人気を集めています。

ネットワークカメラは本体にミニコンピューターを内蔵し、IPアドレスを割り振ることでインターネットに常時接続できます。このネットワークカメラを自宅にセットすれば、手元のスマートフォンやPCから室内の様子をいつでもチェックできるわけです。インターネット回線が高速かつローコストになったことと、データのクラウド化などによって、こうしたリモートサービスが安価に実現でき、見守り機能としても進化していきました。

こうした、インターネットにつながる機器やテクノロジーをIoT(Internet of Things)と呼びますが、スマート住宅を先取る形で普及が進んでいます。声がけするだけで機器の操作やサービスを引き出すスマートスピーカー(AIスピーカー)は、そうしたIoT機器の代表的な存在といえます。

このネットワークカメラは、家電メーカー、住宅メーカー、PCメーカー、セキュリティサービス業者などさまざまなチャネルから多彩な製品が提供されていますが、昨今のAIの進化によってサービスもより多彩になっています。ラトックシステムが提供する「IeCame(イエカメ)」も、AIの検知技術によって、サービスが多彩になったネットワークカメラです。

(商品写真+AI検知イメージ)

商品写真+AI検知イメージ

一般的なネットワークカメラだと、自宅と随時アクセスできるものの、子どもやペットの動きが気になるような時にはモニタ画面に張り付いて確認する必要がありました。通知機能を持つ製品もありますが、動きがあれば何でも通知し、却って煩わしさの基にもなっていたりしました。IeCameはAIによる学習機能や顔認知機能によって、子どもやペットの動きの変化に応じて画像付きで通知してくれるため、頻繁に確認することなく仕事に集中できるのが特徴です。

遠方の親をさり気なく見守る

さて、離れて暮らす遠方の親の手軽な見守り商品としては、象印マホービンの電気ポット「みまもりホットライン」が先駆けとされています。無線通信機を内蔵した「電気ポット」を使って、離れて暮らすご家族の生活を見守ることができる安否確認サービスです。電源オン・オフや給湯、保温状況などポットの使用状況を1日2回通知し、「さり気ない見守り」を提供します。

(みまもりホットライン本体+通信機内蔵イメージ)

みまもりホットライン本体+通信機内蔵イメージ

同様のサービスですが、細かな見守りを実現したのが、NTTレゾナント(エヌ・ティ・ティレゾナント)が2020年3月に提供開始した「goo of things でんきゅう」。専用電球の点灯・消灯情報を記録、分析し、通知するという、シンプルながら高機能な見守り商品です。翌21年2月にはAIを搭載した進化モデル「goo of things でんきゅうAI」も追加ラインアップされました。

電球にSIMカードを内蔵。Wi-Fiも使用せず通信を行い、その使用状況をメーカーのクラウドに蓄積。独自のAI学習モデルを用いて、日常生活機能の低下リスクの有無を「要注意」「特に異常なし」の2段階で判定します。住まう方の使用リズムを学習し、緊急時や異常があった場合に見守りを希望する家族や自治体(自治体が中心となって高齢者の一人暮らしの見守りを行っているケースもある)のスマートフォンに状況を送信します。

(goo of things でんきゅうAIの写真とスマホの通知画面)

goo of things でんきゅうAIの写真とスマホの通知画面

既存のソケットに専用電球を挿入するだけで使用可能になるのも特徴の一つ。この手軽さと監視していることを感じさせない工夫によって、相手の私生活をさり気なく見守ることができます。仕組みのシンプルさから、高齢者住宅や在宅介護サービスなど、福祉や介護分野など公的な分野での導入も進んでいます。

カメラ、ポット、電球…。ネットワーク機能との合体によって身近な商品がIoT機器となり、手軽ながら高機能なサービスとして私たちの生活をサポートしてくれます。こうした製品の多くはビジネス用途から導入されていきますが、家庭用の開発もスピーディになりました。今回は「見守り」分野として取り上げましたが、AI技術の進化と相まってさまざまな分野でサービスが深化していきそうです。

著者

谷内 信彦

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

※2021年7月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。