1)東京圏における新築分譲マンションの供給戸数、初月契約率の動向
2020年度(2020年4月から2021年3月)の東京圏における新築分譲マンションの供給戸数は29,032戸で、新型コロナウイルス禍の影響を受けたものの前年度から1.7%増加した[図表1]。
月次の動向をみると、最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月には販売会社がモデルルームを相次ぎ閉鎖し前年同月比51.7%減の686戸、5月には同82.2%減の393戸まで減少した[図表2]。一方、6月以降は回復し、10月に前年同月比67.3%増の3,358戸まで増加し、2021年の2月も同50.7%増の2,243戸、3月も同44.9%増の3,103戸であった。
2020年度における地域別の供給戸数の増減は、前年度から2,000戸減少した東京23区に対し、千葉県は1,750戸、都下は668戸、神奈川県は110戸増加し、埼玉県は51戸減で概ね横ばいであった。[図表3]。区部における開発素地不足や販売価格の上昇により、郊外(区部以外)での供給が増加する中、コロナ禍で普及したテレワークが定着した場合、同程度の価格でも広い間取りの物件購入が可能な郊外の人気が高まり、同様の傾向が続く可能性がある。
地域別の初月契約率(12か月後方移動平均※2)は、2021年に入り全地域で前年同月を上回って推移しており、千葉県や神奈川県では好不調の目安とされる70%を超えている[図表4]。新築分譲マンション販売にオンライン接客を導入し、コロナ禍での外出自粛への対応に加え、遠方や多忙でモデルルームに来場できない購買層を取り込む動きがみられる。
2)東京圏における新築分譲マンション価格の動向
2020年度の東京圏における新築分譲マンションの販売単価は299万円/坪で前年度から0.4%上昇した[図表5]。
月次の動向をみると、2020年1月の販売単価の一時的な上昇※3から2021年1月の前年同月比は31.0%減と大きく下落したものの、2020年度内で他に前年から大きく下落する月はなかった[図表6]。最初の緊急事態宣言が発令された2020年4月においても前年同月比9.6%増の337万円/坪、5月には同21.3%増の358万円/坪と上昇が継続しており、中古マンションの成約単価のような一時的な下落※4はみられなかった[図表7]。
地域別の新築分譲マンションの販売単価(12か月後方移動平均※2)は、23区内が410万円/坪と高く、次いで神奈川県270万円/坪、都下261万円/坪、埼玉県229万円/坪、千葉県204万円/坪の順である[図表8の2021年3月時点]。2021年に入り、23区内、神奈川県、都下では2020年12月の水準を下回る一方、埼玉県、千葉県では同水準以上で推移しており、価格帯の高い地域で販売単価の上昇に頭打ちの傾向※5がみられる。
※1:東京圏は、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県
※2:傾向を分かりやすくするため、12か月後方移動平均にしている。
※3:2020年1月の価格上昇は、例年1、8月は供給が少なくなる時期にあたり、そのタイミングで高額物件の比率が上昇した一方、都区部に比べて低価格の埼玉・千葉の供給戸数が大幅減少したことなどを不動産経済研究所調査部が要因として挙げていることが報じられている。
※4:東京圏における中古マンションの成約単価は2020年4月に前年同月比4.5%減の168万円/坪と一時的に下落した。新築分譲マンションの価格は主に用地費と建築工事費にデベロッパーの利益を上乗せする原価積み上げ方式で決まるのに対し、中古マンションの価格は主に需給バランスで決まる。新築分譲マンションは一時的に需要が減少した場合でもデベロッパーの判断で販売価格の維持が図られる一方、中古マンションは一時的な需要の減少が成約価格に影響を与えたと考えられる。
※5:販売単価が下落する要因には、デベロッパーが価格を抑えて販売することが影響する場合とともに、各地域内において価格帯が低い立地の物件の供給割合が増加したことが影響する場合がある。