文字サイズ
この記事の概要
一般財団法人国土計画協会の所有者不明土地問題研究会によると、2016年度地籍調査を実施した1,130地区(563市区町村)の約62万筆における所有者不明土地(農地や林地含む)の割合は20.1%である※1。この数値を基に同研究会が推計した全国の所有者不明土地面積は約410万haで九州本島の土地面積(約367万ha)を上回る。所有者不明土地となった原因は相続による所有権移転の未登記が66.7%と全体の2/3を占め、今後高齢化によって死亡者数の増加が見込まれるため、所有者不明土地の増加を抑制する新たな取組がなされない場合、2040年には所有者不明土地は約720万haに達し、北海道本島の土地面積(約780万ha)に近づくとしている[図表1]。
※1:同研究会「所有者不明土地問題研究会 最終報告」(2017年12月)による。登記簿上の登記名義人(土地所有者)の登記簿上の住所に、調査実施者から現地調査の通知を郵送し、この方法により通知が到達しなかった場合に所有者不明土地としている。
空き家は必ずしも所有者不明ではないが、所有者不明土地の予備軍となりうる。2018年の総務省「住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家は846万戸で総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.6%を占める[図表2]。空き家率は前回調査(2013年)の13.5%から0.1%ptの上昇にとどまったが、住宅の種類別の内訳をみると、賃貸用の住宅の空き家数がほぼ横ばいであったのに対し、その他住宅(賃貸用の住宅、売却のために空き家になっている住宅、別荘などの二次的住宅を除く)の空き家数は増加ペースは低下しているものの前回調査から10%近く増加している[図表3]。また、建て方別では、共同住宅の空き家数はここ10年ほぼ横ばいであったのに対し、一戸建ての空き家数は増加ペースは低下しているものの増加基調が続いている[図表4]。住宅・土地統計調査後に実施される国土交通省「空家実態調査」(最新公表は2014年調査)によると、一戸建ての空き家を取得した経緯は、相続が52.3%と過半を占め、その他住宅に限ると56.4%にのぼる。
[図表1]所有者不明土地面積の推計(全国)
データ出所:所有者不明土地問題研究会「所有者不明土地問題研究会最終報告」(2017/12)
[図表2]空き家数と空き家率の推移(全国)
データ出所:総務省「住宅・土地統計調査 2018年」(2019/4)
[図表3]種類別の空き家数の推移(全国)
[図表4]建て方別の空き家数の推移(全国)
政府は所有者不明土地の適切な管理や利用が行われるよう、2018年6月に「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」を策定し、2020年までに必要な制度改正の実現を目指している。主な取り組みとして、公共事業等の目的で所有者不明土地の所有権の取得や利用権の設定を可能とする「所有者不明土地法」がすでに施行されている[図表5]。また、所有者不明土地の発生を抑えるため、相当努力しても譲渡等ができない一定の要件を満たす土地について、土地所有権の放棄を可能とする方策の検討が進められている[図表6]。
この他、所有者不明土地の固定資産税の賦課徴収を行いやすくするよう、所有者不明土地を使用している者を所有者とみなして固定資産税を課すことを可能とする課税見直しが決定している[図表7]。
※本稿で取り上げた各種措置は所有者不明土地問題に対する対策の一部です。また、本稿で取り上げた各種措置の詳細は各出所をご確認願います。
[図表5]所有者不明土地の利用を円滑化する措置(所有者不明土地法の施行)(施行済)
出所:国土交通省「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年6月6日成立、6月13日公布、平成30年法律第49号)」、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法について(補足資料)」(2019/3)
[図表6]土地所有権の放棄を可能とする措置(民事基本法制の見直し)(現在検討中)
出所:法務省「中間試案(案)(第1部 民法等の見直し)」(法制審議会民法・不動産登記法部会第11回会議資料(2019/12/3開催))
[図表7]所有者不明土地の固定資産税の賦課徴収を行いやすくする措置(決定済)
出所:財務省「令和2年度税制改正の大綱 (令和元年12月20日閣議決定)」
発 行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部
〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル
レポート作成: 株式会社都市未来総合研究所 研究部
※本コンテンツは参考情報の提供を目的とするものです。
※当社は、読者に対し、本資料における法律・税務・会計上の取り扱いを助言、推奨もしくは保証するものではありません。
※本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成していますが、その正確性と完全性、客観性については当社および都市未来総合研究所は責任を負いません。本コンテンツに掲載した記事の無断複製・無断転載を禁じます。
買主さま
成約インタビューVOL.4 愛知県瀬戸市在住 H様編 —物件・会社・担当者の対応...
2020/02/07
売主さま
成約インタビューVOL.3 大阪府大阪市北区在住 D様編 —直感通り、みずほ不動...
2019/01/17
成約インタビューVOL.3 東京都世田谷区在住 F様編 —相続した不動産の売却か...
2019/09/27