テーマ:マーケット

不足感強まる東京都の賃貸マンション

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 1月号

この記事の概要

  • 賃貸マンションの稼働状況は好調で、東京都区部では平均空室率が世界金融危機前を下回り、成約賃料単価も金融危機前を上回る状況がみられる。
  • 運用が好調で投資需要が潤沢とみられる一方、新規着工戸数は低水準で、老朽化や建替え等による滅失分すら下回るとみられる。この結果、東京都の賃貸マンションはストックが減少し、賃貸需要と投資需要の両面で不足感が強まる蓋然性が高い。

1)賃貸マンションの稼働状況は好調

J-REITの開示データを用いて、運用する物件の用途別に平均稼働率と平均賃料収入単価を集計すると、賃貸マンションはいずれも上昇が続いている[図表1]。東京都区部の賃貸マンションの市況データからは、現在、世界金融危機前を上回る好調な稼働状況であることが判る[図表2]。

2)投資需要で物件価格が上昇する一方、東京都の賃貸マンションの新規供給量は低水準

好調な稼働を背景に投資需要が高まり、賃貸マンションの取引利回りが低下(価格は上昇)している[図表3]。物件の強い取得需要にも関わらず、用地供給の一巡や他の物件用途との競合などから賃貸マンションの新規着工戸数は低水準で、新規供給量は低調に推移している[図表4]。

3)ストック比で東京都での新規供給は約0.5%。滅失(約1%)を下回るとみられ、ストック数が減少する状況※。このため、先行き不足感が強まる蓋然性が高い。

東京都の賃貸マンションのストック戸数485万戸に対して年間平均着工戸数は2.6万戸で、新規供給率は0.54%[図表4]。同様に滅失率は約1%あり、ストックが減少する構造とみられる。

[図表1]J-REITの運用物件はほぼ満室稼働で、賃貸マンションも同様。賃料収入単価の上昇が続く

[図表1]J-REITの運用物件はほぼ満室稼働で、賃貸マンションも同様。賃料収入単価の上昇が続く

データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」

[図表2]東京都区部に所在する賃貸マンションの稼働は、世界金融危機前の好況期を上回り好調

[図表2]東京都区部に所在する賃貸マンションの稼働は、世界金融危機前の好況期を上回り好調

注) 都区部9区は千代田区・港区・品川区・大田区・文京区・新宿区・渋谷区・世田谷区・目黒区。一般賃貸住宅は月額賃料30万円未満かつ専有面積30 坪未満。高級賃貸住宅は月額賃料30万円以上または専有面積30坪以上として区分

データ出所:ケン不動産投資顧問株式会社「KEN Residential Market Report」

[図表3]投資需要を背景に利回りが低下(価格は上昇)

[図表3]投資需要を背景に利回りが低下(価格は上昇)

注) J-REITの用途別物件における取得額ベースの取引利回り事例。取引利回りは取得時の鑑定評価額に鑑定評価上の直接法還元利回りを乗じて、これを物件取得額で除したもの。ブリッジファンドへの出資(優先出資証券等)および底地物件は除外

データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」

[図表4]賃貸マンションの着工戸数は低水準で推移

[図表4]賃貸マンションの着工戸数は低水準で推移

注) 賃貸マンションは、構造が鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)または鉄筋コンクリート造(RC造)で、建て方が共同建、利用関係が貸家のものを集計した。

データ出所:国土交通省「建築着工統計」

[図表5]6階建以上の賃貸マンションのストック戸数

[図表5]6階建以上の賃貸マンションのストック戸数

注) 非木造の共同住宅の状況に係る第134表から、民営借家で建物の階数が6階建以上の戸数を地域区分別に抽出

データ出所:国土交通省「住宅・土地統計調査 2018年」

[図表6]参考:J-REITの賃貸マンションの階数分布

[図表6]参考:J-REITの賃貸マンションの階数分布

注) J-REITが取得した賃貸マンション(同一物件の追加取得と合併等に伴う取得物件は除く)について、地上階数別に集計。2019年9月30日までの開示データに基づく。

データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」

[図表7]ストックに対して新規着工戸数は0.6%前後

[図表7]ストックに対して新規着工戸数は0.6%前後

注) ストック戸数は[図表5]のデータ。年間平均着工戸数は2004年1月から2019年8月の月平均着工戸数を12倍して算出したもの。

データ出所:国土交通省「建築着工統計」から都市未来総合研究所作成

[図表8]ストックに対して滅失戸数は約1%

[図表8]ストックに対して滅失戸数は約1%

注) 上図の滅失率とは、ストック戸数に対する滅失戸数の割合。構造のSRC造とは、鉄筋鉄骨コンクリート造の意味

データ出所:(公財)日本住宅総合センター「滅失住宅の実態把握等に関する調査報告書(2011年3月)」から都市未来総合研究所作成

※:統計上の区分に制約があり同一基準での比較は難しいが、6階建以上の賃貸マンションを対象にすると一都三県のストック戸数と全国ベースでの滅失率のデータが得られる。一都三県の着工戸数は階数別の公表がないため、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)または鉄筋コンクリート造(RC造)で、建て方が共同建、利用関係が貸家のデータを使用した。

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成: 株式会社都市未来総合研究所 研究部

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