リフォームの目的を明確にすることが成功への道

新生活を快適にするマンションリフォームのコツ vol.1

マンションを購入するなら、やはり新築のほうが満足の高い暮らしが実現すると思われる方も少なくないと思います。しかし、新築マンションの場合、暮らしやすさを左右する間取り、内装、設備に関してある程度の選択肢はありますが、その範囲はかなり限られています。住まいに対する多様な要求を必ずしも満たすとは限りません。

その点、中古マンションを購入して、リフォームしたほうが、自由度はかなり高まります。こだわりを持った理想の住まいを手に入れる可能性も広がります。マイホームの購入は、そこで家族が長く生活することを意味します。もともと、中古マンションに安全・快適に住み続けるために何らかのカスタマイズ=リフォームは不可欠です。リフォームによる住まいの満足度を少しでも上げるためのポイントを解説します。第1回はリフォームの考え方です。

リフォームを実施する目的は何かを、明確にしよう

「対面型のキッチンって素敵」「自分の城、書斎が欲しいな」など、新居に対してリフォームで思い描くイメージは多彩かと思います。趣味的な希望もあれば、必要な設備など絶対に外すことのできない要望まで、必要性も違っているかと思います。そこでまず、リフォームする目的を今一度、整理してみましょう。一般的に目的は以下の4つです。

中古住宅購入時に実施するリフォームの4つの目的

1 経年劣化による損耗を復元する
2 安心して便利に使用できるようグレードアップする
3 住まい手のライフステージに合った空間・間取りを作る
4 好みの空間に仕上げる

これら4つの視点について、ポイントをご説明します。

床・壁・天井の経年劣化を復元する

中古マンションの内装や設備は、いくら前の所有者が大事に使っていても経年劣化は避けられません。やはり、せっかく購入したマンションですから、新たな生活を気持ちよくスタートしたいものです。そのためには、経年劣化した部分を復元するリフォームをする必要があります。

まず、経年劣化を感じる部分は、すぐに目に飛び込んでくる床、壁、天井です。この部分をリフォームすれば、かなりイメージが変わります。傷、汚れなどに関して、気になる部分をチェックして、クリーニング程度で問題ない、張り替え・交換をしないと落ち着かないなど、許容範囲を確認してプランを考えましょう。

天井、壁、床以外では、使用頻度の高いキッチン、バス、トイレといった水回りの内装・機器も経年劣化が表れやすい部分です。玄関のシューズケースや、リビングの物入れといった作り付け家具も、お客様の注目が集まる部分だけに経年劣化による小さな傷や汚れが気になります。こうした部分について、予算を考えながらリフォーム範囲を検討しましょう。

安心して便利に使用できるようグレードアップを図る

新しいマンションに長く安心して便利に住むためには、建設された当時の状態に復元しただけでは不十分なことがあります。その時代に合った高品質な住宅性能にまでグレードアップすることによって、より便利に暮らせるようになるからです。

建物全体の耐久性や耐震性などについてのグレードアップについては、マンションの全所有者が話し合って対応することになります。個別所有者は、専有部分の性能を維持し、高めることになります。

専有部分の設備としては、代表的なのは、キッチン、バス、トイレといった水回りの機器です。これらのリフォームは経年劣化の復元でも取り上げましたが、それだけでは、必ずしも使いやすくなりません。そのマンションが新築された当時の設備に戻すのではなく、最新の便利で使いやすい機器にグレードアップすることが、生活の満足度を上げることになります。

こうしたグレードアップを考える上で欠かせない視点が省エネルギーとバリアフリーです。四季によって温度変化の激しい日本で住宅に求められるのは、暑さ、寒さに対するストレスを最小化し、健康や安全性を担保することです。それを最小のランニングコストで実現するためには常に省エネルギーに配慮することが欠かせません。

省エネ性能アップのためには、窓の断熱性能を高めたり、高効率の給湯システムや冷暖房機器などを導入するなどのアプローチがあります。一戸建ての場合、窓の断熱性能を高める手段として、ペアガラスなどの気密性の高いサッシに交換がポピュラーです。一方、マンションの開口部は共用部ですから、管理組合の規約に従う必要があります。大幅な改装はできないケースが多いので、後付けのインナーサッシを加える方法などを検討しましょう。

新しく手に入れたマンションに長く住むつもりならバリアフリー化も重要です。バリアフリー化の手段とては、段差をなくしたり廊下や居室に手すりを付けたりする工事のほか、寝室とトイレを近づける、トイレと洗面室を一体化して広いスペースをつくるなど、間取りの変更も考えられます。

住まい手のライフステージに合った空間・間取りを作る

「ライフステージ」とは、いうなれば人の一生における通過段階。家族単位のライフステージとしては、結婚期⇒育児期⇒教育期⇒子どもの独立期⇒老夫婦期などに分けることができます。

ライフステージによって、住まいに必要な間取りは違ってきます。子どもが成長すれば専用の部屋が必要になってきますし、逆に就職・結婚等で独立すれば空き部屋が出てきます。また同じ家族構成でも、加齢とともに必要な設備は変わっていったりします。

住まいが家族のライフステージにフィットしているかで、暮らしやすさや安全性は大きく変わってきます。それらを最適化するための手段がリフォームというわけです。前述のバリアフリー化は、この1つと考えることもできます。

好みの空間に仕上げる

持ち家として新たにマンション購入するというのは、やはり人生の大きなイベントの一つ。大きな買い物ですから、自分の夢を投影し、日々楽しく暮らせる住まいを実現したいものです。誰が借りるか分からない賃貸マンションの内装や設備は、万人向けの無難なものになっているケースがほとんどです。せっかくの「持ち家」です。自分の好みに本当にあった住空間を作る、人生でも少ないチャンスをできるだけ生かしてください。

壁一つとっても、クロス材を大胆なカラーに変えるだけでも気分や印象は大きく変わります。珪藻土や漆喰といった素材を使えば、昔ながらのナチュラルな雰囲気にもなります。趣味を生かして、様々なグッズを飾ったり、照明にこだわって落ち着いた空間を作るなど、自分好みの住まいを実現しましょう。

もちろん、自分好みの空間といっても、本当に自分だけの好みを考えてリフォームプランを決めることはできません。一緒に住む家族とよく話し合って、全員の意見を反映したリフォームを実現してください。

まずは家族間で、現状の住まいの満足度と新しいマンションへの希望を洗い出していきましょう。その上で全体のイメージを固め、個別のリフォームカ所について「すぐに絶対必要」「余裕があれば今回やりたい」「数年後でも大丈夫」などといった具合に優先順位をつけておきましょう。リフォームにかけられる予算には限りがあるので、このようにプライオリティを確認しておくことが、リフォーム会社とのやりとりをスムーズにし、満足度の高い計画につながります。

執筆

谷内信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 2016年9月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。

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