テーマ:マーケット

2018年の中小オフィスビルの売買取引に関する動向

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 2月号

この記事の概要

  • 中小オフィスビル※1の売買取引額と売買取引件数が3年ぶりに増加した。
  • 投資口価格が堅調に推移したことなどからJ–REITによる物件取得が大幅に増加した。
  • 大阪圏や三大都市圏以外といった地方に所在する物件の取引が大幅に増加した※2。

1)中小オフィスビルの売買取引額と売買取引件数が3年ぶりに増加

都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」※3によると、中小オフィスビルの公表された売買取引額と売買取引件数は2015年をピークに2017年まで減少していたが、2018年の売買取引額は1,327億円(前年比プラス41%)、売買取引件数は68件(前年比プラス39%)で、これまでの減少基調から一転して、金額、件数ともに3年ぶりに増加した[図表1]。

2)投資口価格が堅調に推移したことなどからJ–REITによる物件取得が大幅に増加

取引額と取引件数をセクター別にみると、主要な買主セクターであるJ–REITによる物件取得に関しては、投資口市況の軟調さから2017年は物件取得額、物件取得件数ともに大幅に減少したのに対して、2018年は投資口価格が堅調に推移したことなどから物件取得額、物件取得件数ともに大幅に増加し、2007年以降で2番目に多い水準となった[図表2]。J–REIT以外のセクターの大半は横ばいまたは減少したため、中小オフィスビルの売買取引の増加はJ–REITによる物件取得の増加が主因といえる。

J–REITが取得した中小オフィスビルの売主セクターをみると、2018年は「不動産・建設」、「SPC・私募REIT等」のセクターが大きく増加し、その多くはスポンサー等の関係者であった[図表3]。買主セクター別の取得動向について、中小オフィスビルと大型オフィスビルを比較すると、中小オフィスビル、大型オフィスビルともに、J–REITによる物件取得は前年比プラスとなったものの、増加率は大型オフィスビルと比べて中小オフィスビルが大きい[図表2、4]。投資物件の品薄化の中、スポンサーのパイプラインから物件を取得できるJ–REITの復調が目立ったが、パイプラインを通じた取得においても大型オフィスビルは品薄感が強く、中小オフィスビルの取引が大きく増加したものとみられる。また、J–REITが取得した物件の中には、個人が所有する中小オフィスビルもみられた※4。

3)大阪圏や三大都市圏以外といった地方に所在する物件の取引が大幅に増加

物件が所在する圏域別に中小オフィスビルの売買動向をみると、東京圏、東京圏以外ともに売買取引は増加したものの、大阪圏と三大都市圏以外での売買取引が大幅に増加したことから、東京圏と比べて東京圏以外での売買取引の増加率が大きい[図表5]。東京都心部を中心に物件の品薄感が強い中、投資対象が地方部へ拡大していると考えられる。

[図表1]中小オフィスビルの売買取引額と売買取引件数

[図表1]中小オフィスビルの売買取引額と売買取引件数

※1:本稿では、建物延床面積が5,000㎡未満のオフィスビルを中小オフィスビル、同5,000㎡以上を大型オフィスビルという。なお、本稿の集計では、区分所有権等での取引は除き、1棟単位の取引を対象としている。また、複数取引は除いている。

※2:本稿における圏域区分は次のとおりである。
・東京圏:東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県
・大阪圏:大阪府、京都府、兵庫県、奈良県
・名古屋圏:愛知県、三重県、岐阜県
・三大都市圏:東京圏、大阪圏、名古屋圏

※3:不動産売買実態調査は、「上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則(適時開示規則)」に基づき東京証券取引所に開示される固定資産の譲渡または取得などに関する情報や、新聞などに公表された情報から、上場企業等が譲渡・取得した土地・建物の売主や買主、所在地、面積、売却額、譲渡損益、売却理由などについてデータ(概数の事例も含む)を集計・分析したもの。情報開示後の追加・変更等に基づいて既存データの更新を適宜行っており、過日または後日の公表値と相違する場合がある。また、本稿の集計では、海外所在の物件は除いている。

※4:個人が所有する物件は「公共等・その他」セクターに含まれる。

[図表2]中小オフィスビルの買主セクター別の物件取得額(左)と物件取得件数(右)

[図表2]中小オフィスビルの買主セクター別の物件取得額(左)と物件取得件数(右)

[図表3]J–REITが取得した中小オフィスビルの売主セクター別の売買取引額(左)と売買取引件数(右)

[図表3]J–REITが取得した中小オフィスビルの売主セクター別の売買取引額(左)と売買取引件数(右)

[図表4]大型オフィスビルの買主セクター別の物件取得額(左)と物件取得件数(右)

[図表4]大型オフィスビルの買主セクター別の物件取得額(左)と物件取得件数(右)

[図表5]中小オフィスビルが所在する圏域別の売買取引額(左)と売買取引件数(右)

[図表5]中小オフィスビルが所在する圏域別の売買取引額(左)と売買取引件数(右)

図表1~5のデータ出所:都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成: 株式会社都市未来総合研究所 研究部

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