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J-REITのデータでは、大都市に所在する賃貸マンションの空室率は過去10年で最低水準に

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 1月号

この記事の概要

  • J–REITのデータによると、2018年上期(6月)の大都市所在物件の空室率は3.0%となり、過去10年では最も低い水準となった。
  • 都市別では、東京都心5区と周辺18区の空室率が3%を下回っている。
  • ワンルームタイプとコンパクトタイプは、最寄駅からの所要時間が大きくなるに従い空室率が高くなる傾向がより顕著である。

1)J–REITのデータによると、大都市※1に所在する賃貸マンションの空室率※2は過去10年で最低に

人口集中度が高い大都市の賃貸マンション市場では、好景気が続く現在は賃借需要が厚く、また、駅からの距離や構造・仕様など賃貸住宅としての質が相対的に高いことなどから、空室率は低下傾向で推移している。賃貸マンション投資が大都市に集中※3しているJ–REITの保有物件を例にみると、全体と大都市の空室率の動きに大きな差異はないが、2016年下期以降は大都市が下回っている。2018年上期(6月)の大都市所在物件の空室率は3.0%となり、過去10年では最も低い水準となった[図表1]。

2)都市別では、東京都心5区と周辺18区の空室率が3%を下回る

J–REITが保有する大都市所在物件の空室率を都市別に集計すると、東京都心5区は2015年上期までは周辺18区を上回る水準で推移していたが、2015年下期以降はほぼ同程度となり、2018年上期では3%を下回っている。大阪市も2015年下期以降3%台で推移している。一方、名古屋市の空室率は2013年下期を底に上昇傾向であり、2018年上期は5%となった[図表2]。

3)ワンルームタイプとコンパクトタイプは、最寄駅からの所要時間が大きくなるに従い空室率が高くなる傾向がより顕著

大都市の中で、J–REITがワンルーム、コンパクト、ファミリーの各タイプ※4を比較的バランス良く保有している※3周辺18区に所在する物件について、タイプ別に最寄駅からの所要時間と空室率(2018年上期)の関係をみた[図表3]。いずれのタイプも駅からの所要時間が大きくなるに従い空室率が高くなる傾向があるが、その傾向はワンルームタイプとコンパクトタイプでより顕著である。

最寄駅からの平均所要時間は、ワンルーム<コンパクト<ファミリーの順で大きく、ワンルームタイプ(5分弱)とファミリータイプ(8分強)で約2分半の差がある[図表4]。

※1:本稿では、次の都市を対象にした。東京都心5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)、周辺18区(東京23区のうち東京都心5区を除く18区)、大阪市および名古屋市

※2:賃貸マンションの空室率は次の式で求めた。
空室率=1-平均稼働率 平均稼働率は当期期間の平均の稼働率を指す。

※3:本稿の対象とした物件は、J–REITが保有しており、空室率の変動が考えられる変動賃料の契約形態であり、高級グレードではない賃貸マンションである。2018年10月末時点でJ–REITが保有している賃貸マンションは1,470棟。そのうち大都市に所在している賃貸マンションは1,028棟で70%を占める(下表)。

【J–REITが保有する賃貸マンション数注1

J–REITが保有する賃貸マンション数

注1:次の条件を満たす物件を集計
・空室率変動の可能性がある変動賃料の契約形態の物件
・高級グレードではない物件

データ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」(2018年10月末時点)を基に集計

※4:タイプは以下の専有面積でおおよそ区分している。
ワンルームタイプ:~30㎡
コンパクトタイプ:30㎡~60㎡
ファミリータイプ:60㎡~

[図表1]J–REITが保有する賃貸マンションの空室率の推移

[図表1]J–REITが保有する賃貸マンションの空室率の推移

[図表2]J–REITが大都市で保有する賃貸マンションの空室率の推移(都市別)

[図表2]J–REITが大都市で保有する賃貸マンションの空室率の推移(都市別)

[図表3]タイプ別/最寄駅からの所要時間と空室率(周辺18区)

[図表3]タイプ別/最寄駅からの所要時間と空室率(周辺18区)

[図表4]タイプ別/最寄駅からの平均所要時間(周辺18区)

[図表4]タイプ別/最寄駅からの平均所要時間(周辺18区)

図表1~4のデータ出所:都市未来総合研究所「ReiTREDA」

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成: 株式会社都市未来総合研究所 研究部

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