テーマ:マーケット

東京都の住宅地では地価にピークアウト感

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 1月号

この記事の概要

  • 国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告」(以下、「地価LOOKレポート」という。)によると、東京圏の高度利用地の地価は上昇地区が8割を下回り、上昇基調に陰りがみられる。
  • 東京都の住宅地においては分譲マンション価格の高騰などを背景に、大半の地区が横ばいに転じるなど、住宅の地価にピークアウト感が表れている。

1)地価LOOKレポートとは

地価LOOKレポートとは、主要都市の地価動向を先行的に表しやすい高度利用地等の地区を商業と住宅に分類して地価動向を把握し、先行的な地価動向を明らかにするもので、本稿では東京圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)の調査結果を紹介する。

2)東京圏の高度利用地の地価は商業地で上昇基調が持続。住宅地で上昇の鈍化が鮮明

2016年第3四半期の東京圏における高度利用地の地価動向は、上昇地区の比率が76.7%(33地区)、横ばいが23.3%(10地区)、下落が0.0%(0地区)となった。商業地の地価は堅調な需要を背景に地価の上昇が続いており、前回調査から大きな変化がない一方で、住宅地は分譲マンションの価格高騰による高値警戒感などから上昇から横ばいに転じる地区が増えている[図表1]。

[図表1]東京圏の高度利用地(住宅地・商業地)における地価の推移
(上昇/横ばい/下落の地区数比率)

[図表1]東京圏の高度利用地(住宅地・商業地)における地価の推移

データ出所:
国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~」(2016年第3四半期)

3)東京都の住宅地では調査対象の5割の地区で地価が横ばいに転じた。

住宅地の調査対象14地区のうち7地区の地価が上昇から横ばいに転じ、合計8地区の地価が横ばいとなった[図表2]。残る6地区では5地区で上昇が続いており、1地区で地価が横ばいから上昇に転じた。今回の調査で横ばいに転じた地区は全て東京都の地区であり、2012年の後半の新政権発足以降、比較的早期に地価が上昇に転じ、直近まで地価の上昇が続いていた。一方で、地価が上昇から横ばいに転じた7地区以外では、東日本大震災などを背景に横ばいで推移してきた新浦安がマンション、戸建とも需要が堅調で今回の調査で地価が上昇に転じた。また、都心への接近性に優れ住宅需要は強いものの、分譲マンション開発素地の供給が限定的であることなどから地価の上昇が続いている地区として、さいたま新都心や都筑区センター南、新百合ヶ丘が挙げられる。

[図表2]東京圏の高度利用地(住宅地)における地価の推移(2015年第1四半期以降)

[図表2]東京圏の高度利用地(住宅地)における地価の推移(2015年第1四半期以降)

  • ※1:2011年第4四半期から2016年第3四半期の期間で、横ばいに転じた7地区の地価上昇が始まった時期
  • ※2:⇒は地価が上昇から横ばいに転じた地区、→は横ばいの地区、↑は3%以上6%未満上昇した地区、↗は0%超3%未満上昇した地区
  • ※3:2014年第1四半期からのデータのみ取得可能

データ出所:国土交通省「主要都市の高度利用地地価動向報告~地価LOOKレポート~」

4)東京都の住宅地では地価にピークアウト感

東京都の調査対象地区では長期にわたり地価の上昇が続いていたものの、2016年第3四半期の調査では分譲マンションの価格が想定取得者層の所得水準からみて高水準であることや、投資用不動産の取引利回りも下限に近付いていることなどから、住宅の取得や投資に対して慎重な動きが拡がり、7地区で地価が横ばいに転じた。また、地価上昇が続いている南青山や有明においても、鑑定評価員による分析の中ではマンションの取引件数の減少や成約価格の頭打ち感が指摘されている。住宅地の地価のうち、横ばいおよび下落の地区が合計で8地区以上になるのは2012年第4四半期(横ばい8地区、下落2地区)以来であり、東京圏では東京都を中心に、高度利用地の住宅地の地価にピークアウト感が表れている。

発    行: みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成: 株式会社都市未来総合研究所 研究部

※本コンテンツは参考情報の提供を目的とするものです。

※当社は、読者に対し、本資料における法律・税務・会計上の取り扱いを助言、推奨もしくは保証するものではありません。

※本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成していますが、その正確性と完全性、客観性については当社および都市未来総合研究所は責任を負いません。本コンテンツに掲載した記事の無断複製・無断転載を禁じます。