※本稿では人口50万人以上の都市を「大都市」、人口10万人以上50万人未満の都市を「中小都市」という。
- 人口100万人以上の4市(札幌、仙台、福岡、広島)の地価上昇が鮮明である。
- 人口100万人未満の大都市10市の地価は概ね下落しているが、人口が多いほど下落率が小さい傾向がある。
- 中小都市の約8割では依然として住宅地、商業地ともに地価は下落を続けている。下落率が縮小する市は多いものの減少傾向にある。
- 地価が上昇する中小都市もある。周辺地域の影響、大都市への近接性等の外的な要因によるものと考えられる。
1)地方圏の大都市は人口と地価変動に強い相関が認められる
地方圏の人口10万人以上の146都市のうち、人口50万人以上の大都市14市は人口と地価変動率に強い相関が認められる(相関係数:住宅地.719、商業地.844)が、人口50万人未満の中小都市132市ではこの相関は弱い(相関係数:住宅地.210、商業地.340) [ 図表1]。この、大都市と中小都市の差異には以下の背景が考えられる。
地方圏の大都市は、周辺地域に対する経済・産業の高い中枢性とその人口の大きさにより市街地の再開発や都市インフラの整備が促され、更に周辺の人口と消費を吸引するため、潜在的な地価上昇力があると考えられる。特に、人口100万人以上の4市では再開発や交通インフラ等の整備が活発に行われている。
中小都市には大都市のような内部の潜在的な地価上昇力は乏しいものと思われる。地価が上昇した一部の中小都市を個別に見ると、震災・原発事故の避難または復興関連(いわき市、福島市、郡山市、山形市)、増加する県内人口の都市への流入(沖縄県の那覇市、沖縄市、浦添市)、発展が顕著な福岡市に近接するベッドタウン効果(春日市)、インバウンドおよび北陸新幹線開通の効果(長崎市、金沢市) 等の外的な要因が窺える。
[図表1]地方圏の人口10万人以上の146市の地価の対前年変動率と人口
データ出所:国土交通省「都道府県地価調査」