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この記事の概要
総務省の「通信利用動向調査(2024年6月公表)」によると、個人のインターネット利用率は13~59歳の各年齢層で9割を超えており、インターネット設備をどうするかについて考えることは賃貸経営を行う上で重要性を増しています。
実際に入居者がどんな方法でインターネットを利用しているのかについて、興味深い調査があります。リクルート住まいカンパニーによる「賃貸居住者の生活実態と設備に対する切望度に関する調査(2020年春)」によると、入居者のインターネットへの接続方法は、個人で契約している有料インターネット回線を使用している、物件備え付けの無料インターネット回線を使用している、個人で契約しているポータブルWi-Fi等を使用している、スマートフォンや携帯電話のモバイル回線を使用していると、実に様々な方法があることが分かります。中には自宅でインターネットを使用していないと回答した人もいました。同様の調査はこれ以降なされていませんが、仲介や管理の現場で入居者さんの状況をお聞きしていると、接続方法自体には変わりはないと感じています。
全国賃貸住宅新聞社が調査・公表した「入居者に人気の設備ランキング2024」によると、「この設備があれば周辺相場より家賃が高くても入居が決まる」という調査で、単身向けの1位にインターネット無料、4位に高速インターネット(1Gbps以上)がランクインしています。ファミリー向けでも1位は同様にインターネット無料、5位が高速インターネット(1Gbps以上)となっており、世帯構成に関わらずインターネット設備の人気が高いことが伺えます。
インターネットを利用する入居者の立場で賃貸住宅を分類すると、大きく3つに分けることができます。
1つめは、インターネットが無料で使える物件です。入居者にとっては、引っ越し後すぐにインターネットが無料で使えるので、回線にこだわりが無く手軽に使いたい人に向いています。家賃が安めの単身物件などにあると喜ばれるでしょう。大抵は自分で契約をアップグレードすれば速度を早くすることが可能なので、状況に合わせて利用できます。 同じくインターネット無料でも、最近では高速インターネット回線を標準装備する新築物件も現れており、その場合は家賃が高めに設定されていることが多いです。
2つめは、インターネット設備があり、利用するには申込手続きが必要な物件です。この場合、回線が自分の部屋まで既に来ている物件であれば工事が不要なので、契約した回線業者から送られてくる機器を繋げばインターネットが利用できます。建物の共用部までしか回線が来ていない物件であれば回線の開通工事が必要となり、立ち合いも発生するなど利用開始までに時間と手間がかかる場合がありますが、自分で選んだ回線を単独で契約するよりも手続きは簡単です。月々の支払金額が割安になることが多く、インターネット利用代金を抑えたい人にメリットがあります。
3つめは、インターネット設備が無い物件です。この場合、一戸建てのように自分でインターネット回線を契約して開通工事を行うことになります。集合住宅1棟でインターネット回線が導入されている場合よりも月々支払う代金が割高になる場合がありますが、自分で料金を負担しても好きな回線を選びたい人にとってはマイナスになりません。
入居者の立場から見た問題点として、インターネット無料物件やインターネット設備がある物件の回線が自分のニーズに合わない場合があることが挙げられます。
集合住宅では1つの回線を分配してみんなで共有している場合が多く、単独で回線を引くよりも回線速度が落ちてしまいがちです。コロナ過での緊急事態宣言中は、在宅で仕事をする会社員や授業を受ける学生が増えたためインターネット利用が集中し、回線速度が遅いというクレームが一気に増えました。しかし、コロナが終息した現在ではテレワークの増加は落ち着きを見せ、総務省の「通信利用動向調査(2024年6月公表)」では、テレワークを導入している企業の割合は約5割となっており、「導入していないし、 具体的な導入予定もない」企業が増加傾向にあるとの結果が出ています。
その他にも、複数の部屋で4Kやフルハイビジョン動画をストリーミング再生したい、世界中の人とオンラインで対戦するFPSと呼ばれるシューティングゲームが趣味、動画配信をしている、株式のデイトレードを行っているなど、インターネットの利用目的は多様化しています。
オーナーが取るべき対策としては、まずは自分の物件のインターネット設備の有無や、既にある場合にはその内容をしっかり把握することです。同じインターネット回線業者でも物件ごとに回線の引き方や種類が違い、その速度や安定性も異なるからです。
次にすべきことは、既存の回線がニーズに合わない場合に、入居者が自分で回線を契約して利用できるかを確認しておくことです。引き込み工事の際に、物件の壁に穴を開けたりビス止めする許可を求められることもありますが、そのような要望があった場合にどうするか、方針を決めておくことも必要でしょう。穴あけ、ビス止めは禁止として、回線工事不要のポータブルWi-Fiやルーター等を使用してもらうと割り切るのも一案だと思われます。回線の種類によっては物件に穴あけやビス止めをしないで引き込み工事ができる場合もあります。入居者から要望があった際に代替案をスムーズに示すことができれば、顧客満足度が高まると思われます。
入居者のインターネットの利用頻度や利用目的は多種多様であり、全ての人のニーズを満たすことは困難ですが、自分の物件の入居者のターゲット層を明確にし、その暮らしぶりを想像しながら導入する設備を決めたり、どんな方法が導入可能なのかを調べておくことは、インターネット社会における賃貸経営に必要な知識と言えるでしょう。
伊部尚子
公認不動産コンサルティングマスター、CFP® 独立系の賃貸管理会社ハウスメイトマネジメントに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
※ 2025年1月29日本編更新時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。
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