【シリーズ連載】40代50代で相続した空き家はどうする?(第六話「売主・買主メリット編」)

漫画で見る不動産購入・売却のポイントvol.16

この記事の概要

  •  日本は住宅に新しさを求めるのが主流で、中古住宅は古い=質が悪い・瑕疵があると認識する傾向にある。住みたいエリアで新築にどうしても手が届かない場合に、仕方なく中古を選択肢に入れるという人が多い。
  •  中古住宅の流通シェアが活況でないというのは、数値にも現れている。欧米諸国を例に見てみるとアメリカ90%、イギリス85%という状況。日本は13.5%という結果となっている。欧米諸国は、長く建ち続けていることに価値を見出し、信頼を寄せる傾向にある。
  •  空き家など、中古住宅の流通を活性化するために日本政府も制度の整備を進めている。「既存住宅インスペクション」は、専門家による建物診断が受けられるというもの。売主・買主の双方が事前に建物の状態を認識した上で取引を行えるので、引き渡し後のトラブル減が期待できる。

第6話 売主・買主メリット編

【Bさんファミリー】
夫55歳会社員、妻54歳専業主婦。2人の息子(29歳、24歳)はそれぞれ独立したため、1年前に家族で過ごした住まいは売却し、夫婦2人暮らしに合ったコンパクトで利便性の高い住まいに住み替え。

中古住宅に対する日本と欧米の違い

夢のマイホームといえば、新築住宅が主流になっている日本。その主な理由は、「新築は全てが新しい点が魅力的」「誰かが住んでいた中古住宅には住みたいと思わない」というもの。相続した空き家などの古い建物=質が悪い建物、古い木造建築=随所に欠陥があるかもしれない、という認識の人が多く、夢のマイホームを実現するならやっぱり新築、という考えが平準化しています。住みたいエリアの新築に手が届かない場合、比較的安く手に入る中古で探すという方はいらっしゃいますが、住宅に新しさを求める日本人にとって、中古住宅をすすんで選択肢に入れるケースはあまり多くないというのが実情です。

中古住宅の流通シェアを数値で見てみると、アメリカは約90.3%、イギリスは約85.8%という中、日本は約13.5%という状況です(国土交通省/平成25年6月 中古住宅流通促進・活用に関する研究会(参考資料)より)。欧米では、長く建ち続けている建物に信頼を寄せる傾向があり、新築は何かあったときに持ちこたえられるか分からないという認識が強いようです。
中古住宅の流通が活況なアメリカにおいては、物件査定士や物件調査士の業務が当たり前のように機能しています。そんな中、日本政府も制度の整備をすすめており、中古住宅流通の活性化が期待できようになってきました。

売主・買主ともにメリットあり。中古住宅の流通を促進する「既存住宅インスペクション」

人生で一番高い買い物となるかもしれない住宅購入。瑕疵(かし)※が内見のときや事前に分かっているならまだしも、引き渡し後に発覚した場合はショックも大きいものです。また、引き渡し後に瑕疵が見つかった場合、売主が対応しなくてはならないケースもあり、せっかく売却できたのに・・・という残念な結果にもなりかねません。
このように、売主・買主が引き渡し後に困ることがないよう、専門家による建物診断が受けられるのが「既存住宅インスペクション」です。事前に住宅の状態を把握できるので双方ともに安心して取引が行えるのがポイント。査定も明確にできるので、中古住宅の流通においては安定やトラブル減が期待できます。売主が少しでもいい状態で売却したいという思いがあれば、瑕疵を事前に修復し、売りに出すという方法も取れるでしょう。このように、売主・買主双方がメリットを感じることができるため、「既存住宅インスペクション」をすることは中古住宅流通の活性化に役立ちそうです。

中古住宅には、価格面だけでなく、室内の様子や日当り・風通しなどを事前にチェックできるというメリットもあります。今までの不安要素が払拭できれば、より魅力も増し、ニーズも高まっていくでしょう。

※欠陥や不具合。具体的にはシロアリの被害や腐食、雨漏りなどのこと

相続した空き家をスムーズに売買するために

空き家を売却する場合は、「売却できるのだろうか」「買主とのトラブルに発展したら・・・」とお悩みの方も多いようです。そんな時はさまざまな事例に対応してきた不動産会社に相談し、安心感を得ながら取引を進めるといいでしょう。

執筆

橋本 岳子 (はしもと・たかこ)

20年勤めた不動産情報サービスの会社での経験を活かし、住まい探しが初めての方にも分かりやすい、生活者の目線に立った記事の執筆活動を手がける。

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。