4000万円のマンション購入、いったいいくら必要なのか?

不動産購入資金の全貌と作り方 Vol.1

マンションを購入したい! そんな思いからマンションの広告を見たり、インターネットで検索したりしている方は多いと思います。さまざまな希望条件から物件を絞っていきますが、その中で重要なポイントはなんといっても価格でしょう。

価格を見る際に注意したいのは、広告に表示されているのは、基本的に物件代金だけだということです。それ以外にさまざまな費用がかかることを覚えておきましょう。住宅を買うのは初めてでも、自動車を購入したことがあるという方も多いと思います。その際に「諸費用」と呼ばれる費用がかかったケースが多いはずです。それと同じことです。

ただし、住宅は自動車と比べても価格自体が高額ですから諸費用もそれなりにかかります。それを最初から考えておかないと資金が用意できずに、その物件をあきらめることになったり、無理して購入したとしても、せっかくの新居で厳しい節約生活を余儀なくされたりしれかねません。

住宅購入にはほとんどの方が住宅ローンを利用します。その金利によって住宅ローンの借入限度額と返済総額は変わってきます。つまり、住宅購入にかかる総費用は「物件価格+諸費用+住宅ローン利息」ということになります。本記事では諸費用を説明します。諸費用は原則現金での支払いとなるため、資金計画に直結します。無理のない購入計画とするためにも、諸費用がどのようなものかを正しく理解しましょう。

主な諸費用と金額の目安は?

諸費用の目安は中古住宅の場合、一般的に物件代金の7〜10%ほどとされています。その内容を見ていきます。
諸費用は、大きく事務手数料などの「諸経費」と不動産取得や登記、各種手続き時の「税金」に分けられます。諸費用の項目は実に多岐にわたります。一部の税金を除き、これらのほとんどが申込時から購入時にかけて必要になります。

物件代金以外に掛かる諸費用一覧

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項目 概要 購入時点で必要な費用
諸経費 仲介手数料 不動産会社に支払う手数料
ローン事務手数料 住宅ローンを組む場合の金融機関に支払う事務手数料
ローン保証料 住宅ローンを組む際、民間の保証会社や保証機関に連帯保証してもらうための保証料 ●(金利上乗せもあり)
司法書士費用 登記手続きの際の司法書士への報酬
団体信用生命保険料 住宅ローン専用の生命保険 ●(※2)
火災保険料・
地震保険料
建物にかける損害保険
固定資産税等の清算金 その年の固定資産税・都市計画税等について、所有権移転日を基準に売主(前所有者)と買主とで日割りで按分する
管理費・修繕積立金等の清算金 管理組合に支払っているその年の各種費用について、所有権移転日を基準に売主と買主とで日割りで按分する
税金 印紙税 不動産売買契約書やローン契約書に貼付する収入印紙代
登録免許税 所有権の保存や移転、ローン借入れの際の抵当権設定などの登記に必要な税金
不動産取得税 不動産の購入や建築時に課税される税金
固定資産税・
都市計画税
毎年1月1日時点の不動産所有者に課税される税金
消費税 物件購入代金や工事請負代金、仲介手数料等に課税される税金
その他 引越し費用、リフォーム・増改築費用、家具・家電製品等の購入費用、ハウスクリーニング費用、他
(※3)

※1 購入時点とは、売買契約時や決済・引渡し時を指します
※2 「フラット35」(住宅金融支援機構)による融資の場合は任意加入(機構団体信用生命保険)
※3 購入時点ではありませんが、引き渡し直後に必要な費用となります

4000万円の物件の諸費用をシミュレーション

上記の表では、諸費用をイメージできない方もいらっしゃるかもしれません。実際に物件代金4000万円の中古マンションを例に、諸費用がどのくらい掛かるか確認してみましょう。ただし、諸費用は物件代金だけなく、マンションの築年数、住宅ローン借入額、固定資産税評価額などによって変わってきます。同じ4000万円の物件でもそうした条件により諸費用は異なります。ですから、この計算は下記の試算条件によるモデルケースと考えてください。

【試算条件】

  • 中古マンション 築年数:20年、専有面積:80.00㎡ 自己居住用
  • 物件価格:4000万円(建物価格2500万円、消費税200万円、土地価格1300万円)
  • 住宅ローン借入予定額:3800万円(民間住宅ローン利用 期間35年)
  • 固定資産税評価額:2000万円(土地1200万円、建物800万円)
  • 固定資産税・都市計画税の年額:17.6万円
  • 固定資産税(土地分):評価額1200万円×1/6(小規模宅地特例)×1.4%=2.8万円
    (建物分):評価額800万円×1.4%=11.2万円
  • 都市計画税(土地分):評価額1200万円×1/3(小規模宅地特例)×0.3%=1.2万円
    (建物分):評価額800万円×0.3%=2.4万円
  • 管理費、修繕積立金等の月額合計は3万円
  • 引き渡し日:7月1日(売主:買主の負担が1:1)

主な諸費用例

項目 概要 購入時点で必要な費用
仲介手数料 129.6万円 3800万円(税抜価格)×3.3%+6.6万円
※売買代金が400万円以上の場合(消費税を含む)
ローン事務手数料 3.24万円 金融機関の標準的な手数料
ローン保証料 79万円 期間35年 借入額3800万円
司法書士費用 12万円 司法書士、ケースにより異なります
団体信用生命保険料 このモデルケースは金融機関が負担
フラット35の場合は任意加入(保険料(特約料)の負担あり)
火災保険料・地震保険料 13.3万円 A社の火災・家財10年(地震5年)一括、ワイドコース
※家財は800万(地震400万)
固定資産税等の清算金 8.8万円 7月1日~12月31日
※起算日1月1日の場合
管理費・修繕積立金等の清算金 6万円 7月分、8月分を対象とした場合
印紙税 3万円 不動産売買契約書1万円、ローン契約書2万円
(軽減税率適用)
登録免許税(所有権移転登記) 20.4万円 土地評価額×1.5% 建物評価額×0.3%
(軽減税率適用)
登録免許税(抵当権設定登記) 3.8万円 住宅ローン借入額3800万円×0.1%
不動産取得税 軽減の特例を適用
合計 約280万円

どうですか? 概算ですが約280万円、物件価格の約7%になりました。これに加えて、新居への引越費用が必要です。さらにせっかくの新居ですから、家具やインテリア(カーテンなど)も新調したいもの。中古マンション・戸建てならば、キッチンや冷暖房などのリフォーム費用も考えておく必要があるでしょう。つまり、新しい生活のスタートには、物件価格の10%程度は覚悟して資金計画を立てなくてはならないことがお分かりいただけたかと思います。

購入後には、毎月の住宅ローンのほか、固定資産税や都市計画税等の税金など、賃貸住宅生活にはない支出も生じます。マンションなら修繕積立金、戸建てなら維持管理や将来のリフォーム費用も見ておく必要があります。ライフプランに合わせた長期的な資金計画も欠かせないのです。住宅購入にかかる全体費用のイメージをつかみ、無理のない購入計画で新居での生活を楽しんでください。

執筆

谷内 信彦 (たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。「中古住宅を宝の山に変える」「実家の片付け 活かし方」(共に日経BP社・共著)

本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
税金については、平成28年4月1日現在の法令によっております。法律改正等により、内容が変更となる場合があります。実際の不動産取引にかかわる税法上の適応の可否については、所轄の税務署または税理士にご確認ください。

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