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この記事の概要
住宅設備のメーカーは、商品ごとに一定の耐用年数を定めていますが、故障が起きない限り使い続けることはできます。ところが、支障なく使えているようでも、実際にはさまざまなデメリットが生じているケースも少なくありません。一応は使えるものの、本来のパフォーマンス(例えば快適性や経済性など)が出ていないケースになります。
水圧の弱いシャワー浴をイメージしてみてください。体は洗えても、快適なバスタイムとはいえませんよね。給湯器の燃焼効率が悪く、ガス代などの光熱費が余計にかかっている可能性もあります。2バルブ式の水栓金具も使い続けることはできますが、今やシングルレバー水栓が当たり前。つまり、古い設備機器を使い続けることは、使用者に何らかの不便や我慢を強いている可能性があるわけです。
■古い設備機器を使い続けるデメリット例
ご家族全員が納得して使っているのであればともかく、何かしらの快適性を犠牲にした使い方は好ましいものではありません。水回り機器のヒビや割れ、パッキンなどの老朽化などによる漏水などの事故リスクが高まるだけでなく、損害が発生しても住宅用保険での補償対象にならないケースも考えられ(保険会社の約款が想定した年数を超えた機器を対象にしないとするケースもあります。)、コストダウンを意図した長期使用が結果的に高くついてしまう恐れもあります。
逆に考えると、設備機器の更新によって自宅の居住快適性や機能性など、さまざまな生活の質を高めることができるともいえます。ここからは前向きに、設備機器の最新傾向やメリット例について、「利便性」「清掃性」「経済性」「デザイン性」から観ていきましょう。
近年の住宅設備の特長として、利便性や機能の向上が挙げられるかと思います。以前にはなかった機能、あってもオプション扱いだった機能が当たり前になるなど、メーカー同士が競い合うように便利で快適な機能を提案し続けています。
キッチンを例に取ると、かつてはオプション扱いだったシングルレバー水栓や食器洗浄機は今や当たり前の装備となってきました。とくに昔との差を感じるのが、収納機能。以前、カウンター下の収納扉は開き戸が当たり前でしたが、現在では引出し式となり、奥の収納物が簡単に取り出せるようになっています。高くて使いづらかった吊り戸棚は昇降式になりましたし、包丁などの小物ポケットなど、かゆいところに手が届く機能が搭載されています。床下に屈んだりすることなしに、立ち座のまま作業できるメリットは誰しもうなずけるところでしょう。
コロナ禍以降、自宅の清潔性も注目されています。手を近づけるだけで吐水・止水ができるノンタッチ水栓(自動水栓)は非接触化につながりますし、抗菌素材を多く採用する設備機器が増え、清潔性や清掃性の高さにつながっています。
快適性を高めるための装備も多様になっています。同じ1坪タイプのユニットバスでも、素材のグレードやバスタブの広さだけでなく、浴室乾燥やミスト浴、オーバーヘッドシャワー(壁や天井に付けられた大型シャワー)などと選択肢が増え、自分たちの描く生活にマッチした機能を手に入れやすくなっています。
共働き家族や、自宅で仕事をする方にとって、「家事らく」は重要なキーワード。そのためにも、設備機器は汚れにくく、また汚れてもすぐに掃除できる清掃性が重要になっています。
例えば、フィルターの自動洗浄機能を持つエアコンがあるように、キッチンのレンジフードやバスタブなど、ボタン1つで自動洗浄してくれるようなタイプが登場しています。そもそもレンジフードは、自宅で掃除したくないトップ3に挙げられる面倒な箇所。自動洗浄とはいかなくても、形状をシンプルにして汚れが付きにくく、また清掃しやすいなどの配慮がポピュラーになっています。
バスルームでは、床面の水はけをよくして水垢を付きにくくしたり、排水口に貯まった髪の毛などをワンタッチで取り除ける工夫を各社で競っています。トイレは、便器のフォルムがシンプルになりましたし、便器や便座の抗菌を売りにする商品が増えています。キッチンも、コンロまわりをシンプルデザインにしたり、汚れにくいシンクやカウンタートップにするなど、お手入れのラクさをアピールしています。
経済性は消費者にもメーカーにとっても重要課題なので、一般に新しい設備機器ほどランニングコストが低減される傾向にあるといえます。それらはガス、電気、水道代など光熱費の低下となって、家計の負担を減らす、嬉しい機能となって購入者に返ってきます。
トイレを例に挙げると、腰掛便器の1回の洗浄のための流水量が劇的に少なくなっており、1回6L程度の使用で済むタイプは節水便器としてポピュラーになっています。1970年代の一般的な便器が1回13Lでしたから、1/2以下の使用量で済むことになり、光熱費が低減するだけでなく、地球環境に優しい機能ともいえます。こうした光熱費を削減する設備としては、他にも給湯器(ガス・電気それぞれに高効率給湯器がある)、高断熱浴槽(保温性向上)、自動水栓など多岐にわたります。
機能や製法の進化によってデザイン性を大きく高めた機器も出ています。その代表例がタンクレストイレで、コンパクトでスリムなデザインは、居心地のよい空間づくりに欠かせない存在となりました。近年、ステイホームなどで自宅は家族が長時間過ごす場所になったこともあって、時に一人になれる場所、癒やしの空間としてトイレの価値が見直されています。もちろん洗浄機能や節水性など、デザイン以外の性能も向上しており、価格もポピュラーになったことで、特別な商品でなくなってきています。
自宅の滞在時間が長くなっている今、快適性を高めることが、私たちの暮らしの質の向上に直結します。1つの機器を長く大切に使うことも意義のあることですが、いつかは更新する必要があるのであれば、これから手に入れられる機能性や快適性など、さまざまなメリットと天秤にかけて更新やリフォームする時期をご検討ください。
谷内 信彦(たにうち・のぶひこ)
建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
※ 2021年3月31日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。
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