- すまい給付金や次世代住宅ポイントといった、国が設けている住宅取得やリフォームに関する助成金や補助金の制度はご存知の方も少なくないと思います。それだけでなく地方自治体が独自に住宅関連の支援制度を設けているケースもあります。そちらもチェックして活用を検討しましょう。そのための見つけ方と活用のポイントを紹介します。
住宅取得やリフォームの際の支援制度には、所得税の控除や固定資産税の減額といった税制優遇を受けられる減税制度だけでなく、費用の一部を負担・給付してくれる補助金や助成金などの制度もあります。国の補助金や助成金の制度としては、「すまい給付金」や「次世代住宅ポイント」などが挙げられます。こうした支援制度は、国だけでなく都道府県や市区町村といった地方自治体も設けています。
国のように全国一律でなく、地域ごとに支援内容が違っていたりしますが、住宅の購入、リフォーム等を予定・検討しているのであれば、こうした制度の有無をチェックすることでよりリーズナブルに住宅取得やリフォームが実現できる可能性があります。
自治体の支援制度は地域価値を高めるためのサポート
地方自治体の支援制度は、その地域ならではの独自性が表れます。自治体ごとに「自分たちの暮らすまちにどのような地域資源が必要か」「どんなまちにしていきたいか」という観点や重要項目があり、それらの環境づくりを推進していくための施策のひとつとして、独自の支援制度が設けられていると考えれば分かりやすいのではないでしょうか。これが全国一律で実施される国の支援制度との相違点です。
例えば、ある自治体が地域に若い人口を増やしたいと考えれば「子育て世帯」向けの支援をはじめ、「移住促進」「空き家活用」のための支援制度を手厚くしたりします。また、木材産業の盛んな地域ならば、地場材を使用した場合に支援措置を設けるケースもあります。屋上や生垣などの緑化支援は地域にもっと緑を増やしたいという思いや、ヒートアイランドの防止を目的とした支援です。支援制度はその自治体の地域事情等と密接にリンクしています。
言うまでもなく住宅は個人の私有財産ですが、そのあり方は地域の居住環境と密接に関係していますから、家づくりは半公共的な面もあります。自治体の目的に沿った支援制度を活用することは、まちづくりの面でも意義があります。自治体の支援制度の利用は、自分のお財布にも優しく、その地域の価値を高めることにもなる一石二鳥なのですから積極的に活用しましょう。
地方自治体の支援制度の例
支援制度例 |
概要 |
備考 |
省エネ住宅化 |
住宅を高気密・高断熱にし、高い省エネ基準にマッチさせるための工事費を補助するなどの取組み |
・健康的で光熱費等のランニングコストが低い省エネ住宅の普及促進を目指す等の目的 |
・CO2排出量の削減を目指す意図もある |
地場材の使用 |
地場の木材や建材を使用した住まいづくりに対して一定額の補助を行うような取組み |
・地位の風土に合った家づくり支援と、地域産業の保護という側面がある |
耐震診断・耐震改修の補助 |
旧耐震基準の住宅(1981年5月以前に建築確認を行った戸建て目集合住宅)を現行基準に適合させるための診断・改修費用を補助する取組み |
・万が一の大震災にも強い住宅の普及による住民の安全性の向上 |
・地域全体の防災力を高める取組みでもある |
屋上緑化・壁面緑化 |
戸建て住宅やマンションに緑を増やすことでヒートアイランド化防止、防災性向上、デザイン性向上等のための取組み |
・グリーン関連では他に、生垣の設置などもある |
・地域価値の向上につなげる狙いもある |
空き家活用 |
地域に多く残る空き家の利活用、リフォーム等を支援することで、地域の活性化や移住・定住の促進を図る |
・危険空き家ストックの除却など、防災性を向上させる面も |
水洗化・浄化槽設置支援 |
下水道の整備に伴ってトイレを水洗化させたり、下水道未整備の地域において浄化槽普及のための取組み |
・汚水・下水の環境配慮を目的とする |
支援制度が適用できる要件に注意しよう
地方自治体の支援制度を利用する場合の注意点を挙げておきましょう。例えば、1つのリフォーム工事において、国の支援制度と地方自治体の制度の両者を同時利用できるのかという問題。これについては、制度の内容や財源等によってケースバイケースですが、一般的には、財源が同じであれば併用できないというのが一般的です。
例えば、耐震性や省エネ性能など、性能向上を目指す「長期優良住宅化リフォーム」を実施する際、要件を満たすことで補助が受けられます。これとは別に、地方自治体の支援制度について、国費が充当されていない場合は併用が可能です。「国費が充当」というのは、地方自治体が用意した支援制度であっても、実はその財源として一部(または全部)について国から交付されているケースです。
地方自治体が財源も含めて独自に用意したものであれば、併用できる可能性があります。また、1つのリフォームでも、対象となる工事部位が違うのであれば併用可能というケースもあります。フルリフォームを行った際、断熱改修工事について国の補助制度、耐震改修工事について地方自治体の補助制度を利用するといった活用法です。こうした併用の可否については、建設会社やリフォーム会社を通じて国の補助制度事務局や地方自治体の担当部署に必ず確かめましょう。
なお、利用する補助制度が国のものであっても地方自治体のものであっても、補助制度と減税制度の併用は可能です。例えば、国や地方自治体の補助制度を利用して耐震改修や省エネ・バリアフリー改修を行った場合、適用要件を満たしていれば所得税の控除や固定資産税の減額措置が受けられます。
こうした地方自治体の支援制度は、住宅の所有者本人が申し込むものと、建設会社やリフォーム会社等、事業者が申し込むものがあります。新築やリフォームの場合、使えそうな制度については依頼する業者に相談する際に「この制度を活用したい」と意思表示しましょう。また、こうした多くの支援制度は上限が定められていることが多く、一定枠を超えると期間内であっても適用されないケースがあります。そうした確認のためにも、業者の選定時からこうした支援制度を活用したい旨を伝えたほうがいいでしょう。
補助金など公的な支援制度の活用によって、住宅建設や購入、リフォームをよりリーズナブルでコストパフォーマンスの高いものにすることが可能です。国だけでなく、地方自治体の支援制度を上手に活用していきましょう。
建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
※ 2020年4月30日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。