2019年、消費税率アップの住宅購入への影響はどうなる

消費税関連トピックス

この記事の概要

  •  2019年、生活に大きなインパクトを与えそうなのが消費税の税率アップです。住宅など金額の大きい買い物をする時には、特に多大な影響を及ぼします。そこで消費税改正のチェックポイントやスケジュールを改めて解説します。

財務・会計のイメージ図

これまで2度にわたって先延ばしされてきた消費税の税率アップですが、いよいよ2019年10月1日から、消費税率が8%から10%への変更される見通しです。

消費税率アップのインパクトが大きくなるのは、やはり高額な買い物をする際です。高額な買い物といえば、やはり住宅購入でしょう。住宅購入を考えている方は、消費税改正の影響についてチェックしておく必要があります。

消費税が課税されるケースと非課税のケースとは

まず、最初に知っておきたいことは、不動産の物件価格すべてに消費税がかかるわけではないということです。具体的には、土地の取得代金には消費税はかかりません。一戸建てはもちろん、分譲マンションにおいても、物件価格のうちの建物価格分は課税となりますが土地価格分については非課税になります。

もう一つ、覚えておきたいのは、個人間売買の場合、消費税がかからないことです。中古住宅流通においては、個人間売買を不動産業者が仲介しているケースが一般的です。こうした仲介による取引では、物件価格に消費税が加算されることはありません。

一方、同じ中古住宅でも、不動産業者が、販売している場合、消費税がかかります。もちろん、新築の一戸建てやマンションは、基本的に業者が売主となるので消費税がかかります。

また、中古住宅の仲介の場合でも、不動産業者への仲介手数料については消費税がかかります。また中古住宅を購入後、リフォームをして、快適に暮らそうと考えている場合も、工事代金にはもちろん消費税がかかります。このように消費税が課税されるケースと非課税のケースがあります。

それでは同じ4000万円の新築と中古の一戸建て、マンションで消費税がどの程度変わるのかモデルケースで概算してみましょう(下表)。下表の通り、消費税改正の影響が大きいのは新築を購入する場合です。

税率アップの影響の試算

消費税率8% 消費税率10% 税率アップによる上昇
物件価格 土地 建物 仲介手数料(3%+6) 物件価格に対する消費税 手数料に対する消費税 物件価格に対する消費税 手数料に対する消費税
マンション 新築 4000 1600 2400 0 192 0 240 0 48
中古(仲介) 126 0 10.08 0 12.6 2.52
一戸建て 新築 2000 2000 0 160 0 200 0 40
中古(仲介) 126 0 10.08 0 12.6 2.52

(単位:万円、マンションの土地と建物の比率は4:6、一戸建ての土地と建物の比率は5:5と仮定)

実際は上記以外に、税率アップにより、住宅ローン手数料、引っ越し代などに関する消費税も上昇しますから、新築でも中古でも増税のダメージはもう少し大きくなります。

注文住宅などの検討者は「経過措置」を活用しよう

住宅の購入は、契約と引き渡しの時期が異なることがあります。消費税の10%へのアップは、2019年10月1日ですが、どのようなタイミングで契約をしたり、引き渡しを受けたりしたら、以前の税率が適用されるのかタイミングを理解しておきましょう。

住宅購入における消費税率の切り替わりは、原則「引き渡し日」が基準です。つまり、2019年9月30日までに契約や支払い等を済ませ、引き渡しが行われれば消費税は8%で済みます。ただし契約が完了していても、引き渡し日が10月1日以降になると、消費税率10%が適用されてしまいます。

ただ、注文住宅の建設においては、少し、異なったルールになります。契約から引き渡しまで長い時間を必要とするため、「経過措置」が適用されるためです。これは、消費税率アップ実施の半年+1日前となる2019年3月31日までに契約を完了していれば、実際の引き渡し日が2019年10月1日以降であっても増税前の8%税率が適用されるというものです。この経過措置は、新築のマンション、一戸建てでも、壁の色やドアの形状などを特注できる等の契約であれば対象になります。分譲業者に確認してください。

経過措置の概念図

経過措置の概念図

ただし、このようなルールだからといって、契約内容を詰めずにあわてて3月31日までに契約すると、後で後悔することになりかねません。経過措置を利用するなら、できるだけ早く検討を開始して、無理なく契約できるスケジュールにしましょう。

消費税負担増を軽減する様々な施策をチェック

政府は、2014年4月消費税率を5%から8%に変更した際、景気悪化を恐れ、住宅購入の落ち込みを防ぐため、様々な対策を打ち出しました。代表的なのは、住宅ローン減税の拡充と、すまい給付金制度の新設です。

住宅ローン減税は、毎年末の住宅ローン残高または住宅の取得対価のうちいずれか少ない方の金額の1%を10年間に渡り所得税の額から控除する制度です。2014年4月以前にも存在した制度ですが、最大控除額を2倍にするなど制度拡充が行われました。すまい給付金は、引上げ後の消費税率が適用される住宅を取得する場合、引上げによる負担を軽減するため現金を給付する制度です。

今回の税率アップに際して、こうした制度がさらに拡充されそうで、最新の情報をチェックしていく必要があります。

ここまでの説明でお分かりいただけると思いますが、消費税率改正を前に、住宅購入を考える際のポイントは何を買うかと、どれだけ住宅ローン減税制度などを受けられるのかをチェックすることです。

住宅購入は人生の一大イベントです。後悔のないように、少しでも早くから検討を始め、納得のいく選択をしてください。

執筆

谷内信彦(たにうち・のぶひこ)

建築&不動産ライター。主に住宅を舞台に、暮らしや資産価値の向上をテーマとしている。近年は空き家活用や地域コミュニティにも領域を広げている。『中古住宅を宝の山に変える』『実家の片付け 活かし方』(共に日経BP社・共著)

※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。