- 2020年の一棟賃貸マンション※1の売買取引額は7,205億円で、2000年以降の最高を記録。主に外資系法人が取引主体の複数物件の一括取引が寄与。2020年は複数物件の一括取引の売買取引額、売買取引件数ともに、2000年以降最高となった。
- 外資系法人と不動産・建設セクターは取得、売却ともに前年比増加。新型コロナウイルスの感染拡大による1回目の緊急事態宣言の発令に伴う取引活動の制限などから一時的に取引が停滞した局面はあったが、2020年後半は相当数の取引がみられた。
1)2020年の一棟賃貸マンションの売買取引額は複数物件の一括取引が寄与して前年比大幅増
株式会社都市未来総合研究所の「不動産売買実態調査※2」によると、2020年に公表された国内に所在する一棟賃貸マンションの売買取引額は7,205億円(前年比61%増)で、2000年以降最高となった。売買取引件数※3は152件(前年比12%減)で、2015年以降は概ね150件前後で推移している[図表1]。近年は外資系法人を中心に複数物件の一括取引が目立つようになってきており、2020年は複数物件の一括取引の売買取引額、売買取引件数ともに、2000年以降最高となった[図表2]。
四半期ごとにみると、2020年1~3月期の売買取引件数は42件で、前年同期(41件)と同水準であったのに対して、売買取引額は米Blackstone Group が賃貸マンション220棟を中国の安邦保険集団から約3,000億円で取得した事例(2020年1月公表)が寄与して前年同期(681億円)を大幅に上回る4,458億円となった。2020年4~6月期は19件(前年同期比21%減)、511億円(前年同期比15%減)で、1回目の緊急事態宣言の発令に伴い取引活動が大きく制限された面があるとみられる。2020年7~9月期は36件/1,104億円、2020年10~12月期は55件/1,131億円で、2019年同期と比較すると概ね減少しているが、2018年同期と比較すると増加している[図表3]。
[図表1]一棟賃貸マンションの売買取引額と売買取引件数(暦年ベース)
データ出所:(株)都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」
[図表2]一棟賃貸マンションの複数一括取引の売買取引額と売買取引件数
データ出所:(株)都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」
[図表3]一棟賃貸マンションの売買取引額と売買取引件数(四半期ベース)
データ出所:(株)都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」
2)複数物件の一括取引が寄与して外資系法人の取得額が大幅増
買主セクター別では、「外資系法人」は複数物件を一括取得する事例が多く、2000年以降で最高となる4,613億円の取得額となった。取得件数も前年比大幅に増加した(3件→14件)。
「J-REIT」の取得額、取得件数はそれぞれ1,195億円、89件で、前年(1,199億円、88件)と同水準であった。
「不動産・建設」は収益不動産の取得を目的とする複数物件の一括取引が複数あったことなどから取得額は前年を大きく上回り(138億円→419億円)、取得件数も前年を上回った(10件→16件)[図表4、5]。
[図表4]買主セクター別の取得額
データ出所: (株)都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」
[図表5]買主セクター別の取得件数
データ出所: (株)都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」
3)J-REITによる売却が減少した一方、不動産・建設セクターと外資系法人による売却が増加
売主セクター別では、「J-REIT」は2019年は小型物件・築古物件の売却を中心とする資産入替が多くみられたものの、2020年はかかる動きが減少し、売却額、売却件数ともに前年比減少した(953億円→410億円、58件→23件)。
一方、「不動産・建設」は傘下のJ-REITや私募REITへの物件供給の売却が目立ち、売却額、売却件数ともに前年比増加した(1,045億円→1,536億円、65件→76件)。また、「外資系法人」も複数物件の一括売却が目立ち、前年比増加した(1,428億円→3,433億円、2件→4件)[図表6、7]。
[図表6]売主セクター別の売却額
データ出所: (株)都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」
[図表7]売主セクター別の売却件数
データ出所: (株)都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」
4)東京23区で売買取引件数が増加
物件所在地別※4に売買取引件数をみると、「都心6区」および「都心6区以外の東京23区」は前年比増加、それら以外の分類は前年比減少となった[図表8]。
[図表8]物件所在地別の売買取引件数
データ出所: (株)都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」