不動産価格指数にみる住宅取引価格の動向
みずほ不動産販売 不動産市況レポート 1月号
公開日:2021年1月15日
この記事の概要
- 国土交通省「不動産価格指数(住宅)※1」によると、共働き世帯の増加などに伴い都心や駅近など利便性の高いマンション需要が高まったことなどから、全国ベースでのマンションの価格指数は上昇しており、2020年1月には150台に達し、8月には151.8となった(原数値)。
- 新型コロナウイルの感染拡大に伴う緊急事態宣言(2020年4月)を受け、不動産会社の販売自粛などから、特に戸建住宅で価格指数が下落していたものの、足元では回復の兆しもみられる。
1)全国
全国の不動産価格指数(住宅)をみると、2013年以降、マンションの価格指数の上昇幅が大きく、2015年の前年比7.0%を上昇率のピークに、今年8月まで90カ月連続で前年比プラスとなった。住宅地は、2017年は2.5%、2018年1.4%と緩やかに上昇したものの、2019年は-0.5%と小幅マイナスに転じ、2020年以降の低下幅はやや拡大した。戸建住宅は毎月の振れ幅が小さく、2017~2019年にかけて1%程度の小幅上昇したのち、2020年以降は小幅下落となった[図表1、図表2]。
2)南関東圏
南関東圏もマンションの価格指数が90カ月連続で上昇しており、今年8月時点で146.0となった(原数値)。新型コロナウイルス感染拡大によるマンション販売自粛の影響については、東日本不動産流通機構※2による成約件数が、4月を底に増加し、成約価格も上昇していることから、マンションの価格指数は当面、底堅さが続く可能性が高いと考えられよう。戸建住宅の価格指数は2019年に前年比マイナスに転じ、2020年以降も小幅下落が続いていたものの、8月には前年比とほぼ同水準にまで回復した。8月以降、中古戸建住宅の成約件数は大きく持ち直しており、リモートワーク定着により住宅に広さを求めるニーズも高まっている可能性も考えられ、当面は、戸建住宅の価格指数が大きく下落する蓋然性は少ないと思われる[図表3~5]。
3)名古屋圏
名古屋圏は、取引件数が少ないため、例えば、マンションの価格指数は前年比10%を上回る月がある一方、小幅マイナスの月もあるなど価格指数の変動幅が大きい傾向がある。マンションの価格指数をみると、全体でみれば上昇トレンドで、2020年5月に162.2と最高値に達したのち、上昇からほぼ横ばいで推移した(原数値)。中部圏不動産流通機構※2によれば、不動産会社の販売自粛が一服後は、中古マンションの成約件数は前年並みを大きく上回る水準に回復し、成約価格も緩やかに上昇している。また、2020年以降、前年から下落していた戸建住宅の指数についても、8月以降、中古戸建住宅の成約件数が急回復しており、足元、持ち直しの動きがみられた[図表6~8]。
4)京阪神圏
京阪神圏のマンション価格指数は上昇が続き、2020年1月には160台を超え、その後も上昇傾向となった。2020年以降、下落傾向にあった戸建住宅指数について、近畿圏不動産流通機構※2によれば、中古戸建住宅の成約件数が、8月に急増した後も前年並みの水準を維持しており、新型コロナウイルス感染拡大によるリモートワーク定着により戸建住宅のニーズが強まっている可能性があると思われる[図表9~11]。
- ・不動産価格指数(住宅)は、国土交通省が実施する「不動産の取引価格情報提供制度」により蓄積されたデータをもとに、個別物件を同一品質に調整し、月ごとの変化を把握出来るよう作成された指数。図表の指数の推移は、原数値の後方12カ月移動平均値。2020年6月より即時的な動向把握のため、季節調整値の公表を開始した(2010年の平均=100)。2020年8月時点までの数値による。
- ・不動産価格指数(住宅地)における3大都市圏は以下のとおり
- 南関東圏:埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県
- 名古屋圏:岐阜県、愛知県、三重県
- 京阪神圏:京都府、大阪府、兵庫県
- ・住宅地は宅地で土地のみの取引
- ・マンションは「区分所有建物」もしくは「区分所有建物の敷地」として所有権移転登記がなされたもので主に中古マンションが対象
- ・2008年4月~2020年8月の毎月の取引サンプル数の平均は右表[参考]のとおり
[参考]平均月間取引事例サンプル数(単位:件)
住宅総合 | ||||
---|---|---|---|---|
住宅地 | 戸建住宅 | マンション | ||
全国 | 13,369 | 3,747 | 5,749 | 3,873 |
南関東圏 | 5,001 | 934 | 1,950 | 2,117 |
名古屋圏 | 1,051 | 337 | 509 | 205 |
京阪神圏 | 2,134 | 415 | 946 | 773 |
データ出所:国土交通省「不動産価格指数(住宅)」
- ※2:公益社団法人東日本不動産流通機構、公益社団法人中部圏不動産流通機構、公益社団法人近畿圏不動産流通機構による中古マンションや中古戸建住宅の取引は会員不動産会社の登録、報告によるものであり、都市圏における対象県も異なりそれぞれの市場全体の動向を示すものではないが、速報性や需給動向をみる上で参考となるため取り上げている。
発 行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部
〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル
レポート作成:株式会社都市未来総合研究所 研究部
※本コンテンツは参考情報の提供を目的とするものです。
※2021年1月15日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。
※当社は、読者に対し、本資料における法律・税務・会計上の取り扱いを助言、推奨もしくは保証するものではありません。
※本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成していますが、その正確性と完全性、客観性については当社および都市未来総合研究所は責任を負いません。本コンテンツに掲載した記事の無断複製・無断転載を禁じます。