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コロナショックの地価への影響が大きい地点と小さい地点の特徴~東京23区と名古屋市、大阪市を対象に分析~

みずほ不動産販売 不動産市況レポート 12月号

この記事の概要

  • コロナショック前の2020年1月とショック後の7月で比較可能な地点の地価は、東京23区と名古屋市、大阪市で商業地のほとんどが下落した。同じく住宅地も、名古屋市と東京23区は過半の地点で下落した。
  • その中で地価が上昇した地点の主な特徴は、従来から定評のある高級住宅地や高級分譲マンションなどが立地する地域の地点であること。
  • 相対的に地価が大きく下落した地点の主な特徴は、商業地で高地価、高上昇率だった地点。東京の西浅草や銀座、大阪の宗右衛門町など、インバウンド需要をはじめコロナショックによる需要減が急な下落圧力となったとみられる。

1)コロナショックの影響を受け2020年7月時点の地価(基準地価)は上昇鈍化ないし下落

国土交通省が2020年9月に公表した7月1日時点の「都道府県地価調査」によると、「新型コロナウイルス感染症の影響による先行き不透明感から需要が弱まった」※1ことなどから、基準地価の全国商業地平均が2015年以来5年ぶりに下落に転じ、同じく全用途平均も3年ぶりに下落した。東京23区と名古屋市、大阪市(以下、3都市。)では、対前年平均変動率が昨年までの上昇基調から一変して上昇鈍化ないし下落に転じた[図表1、2]。名古屋市は、住宅地平均も商業地平均も共に下落に転じた。3都市とも、インバウンド需要や再開発等の効果が顕著だった商業地の地価上昇が急減速となった。

2)2020年1月と7月で比較可能な地点では、3都市の商業地の地価はほとんどの地点で下落

3都市の中で、公示地価(1月1日時点)と基準地価の両方とも調査した地点(以下、共通地点。)を対象に、1月と7月の地価を比較すると、3都市とも商業地のほとんどの地点で下落し、住宅地も、名古屋市と東京23区の過半の地点で下落した[図表3]。3都市で、上昇地点の割合は非常に小さい。

名古屋市の共通地点は、上昇地点がゼロで横ばいが1地点、残る44地点は全て下落であった。

3)従来から定評のある高級住宅地などの地点で、地価が上昇

3都市の共通地点のほとんどで地価が下落または横ばいとなる中で、数少ない上昇地点のうち半数が住宅地であった[図表4]。特に大阪市と名古屋市※2の地点は全て住宅地で、従来から定評がある、いわゆる高級住宅地や閑静な住宅街の地点が含まれる。東京23区についても、商業地に区分される地点ではあるが、大型の戸建て住宅や高級分譲マンションが立地する地域が3地点中2地点ある。

これら上昇地点についても、前の半年、すなわち2019年7月と2020年1月の間の地価変動率([図表4]の右から2列目に記載。)と比較すると上昇率が縮小しており、上昇基調が弱まっている。

4)地価が相対的に大きく下落した地点は、商業地で高地価、高上昇率だった地点

2020年1月と7月を比較して地価下落の程度が相対的に大きかった共通地点を[図表5]に掲げた。上記の2)で述べたように全体の中で下落地点が多くを占めていてその全ては列記できないため、概ね5%以上下落した地点を抽出し一覧にしたものである。内訳は全て商業地で、東京・西浅草や東京・銀座、大阪・宗右衛門町など、昨年まで主にインバウンド需要などの消費・宿泊需要がけん引して大幅な地価上昇が続いてきた地点と、東京・神田駿河台(御茶ノ水駅周辺)、名古屋・名駅、大阪・大深町(梅田北ヤード周辺)など、再開発や大規模ビル建設等による集積と利便性の向上が地価上昇に繋がった地点が多くを占める。

相対的に高地価の地点が多く、地価に天井感が生じて従前から上昇率が鈍化していて(例えば東京・銀座)、コロナショックによる需要減が急な下落圧力となったことや、前の半年である2019年7月から2020年1月の地価上昇率が高かった地点(例えば東京・西浅草)で、入国禁止によって地価上昇のけん引力であったインバウンド需要が消失したことなどが、相対的に大幅な下落となった背景と考えられる。

※1:国土交通省「令和2年都道府県地価調査結果の概要」

※2:名古屋市は共通地点に上昇地点がなく、唯一横ばいの1地点(文教地域として知られる、昭和区南山町のいりなか駅周辺にある地点)を上昇地点に準ずる地点として含めて採り上げた。この地点以外は全て下落地点である。

[図表1]2020年7月の基準地価で住宅地の地価が弱含み

[図表1]2020年7月の基準地価で住宅地の地価が弱含み

データ出所:国土交通省「地価公示」と「都道府県地価調査」から都市未来総合研究所が作成

[図表2]上昇していた商業地の地価は急ブレーキ

[図表2]上昇していた商業地の地価は急ブレーキ

データ出所:国土交通省「地価公示」と「都道府県地価調査」から都市未来総合研究所が作成

[図表3]2020年1月(公示地価)と7月(基準地価)で共通の地点※3を比較すると、商業地の大多数で地価が下落

[図表3]2020年1月(公示地価)と7月(基準地価)で共通の地点※3を比較すると、商業地の大多数で地価が下落

データ出所:国土交通省「地価公示」と「都道府県地価調査」から都市未来総合研究所が作成

※3:図中( )内の数字は対象地点数。地価公示の総地点数に対して8.5%相当であり、統計的には信頼水準95.0%・許容誤差6.4%の精度で全体の傾向を表していると考えられる。

[図表4]東京23区と名古屋市、大阪市の共通地点(公示地価と基準地価で共通の地点)で、2020年1月と7月を比較して地価が上昇した地点の一覧(名古屋市は上昇地点がなく、横ばいの1地点を掲載)

[図表4]東京23区と名古屋市、大阪市の共通地点(公示地価と基準地価で共通の地点)で、2020年1月と7月を比較して地価が上昇した地点の一覧(名古屋市は上昇地点がなく、横ばいの1地点を掲載)

データ出所:国土交通省「地価公示」と「都道府県地価調査」から都市未来総合研究所が作成

[図表5]東京23区と名古屋市、大阪市の共通地点(公示地価と基準地価で共通の地点)で、2020年1月と7月を比較して、地価が大きく下落した地点(小数点以下第一位を四捨五入して5%以上下落)の一覧

[図表5]東京23区と名古屋市、大阪市の共通地点(公示地価と基準地価で共通の地点)で、2020年1月と7月を比較して、地価が大きく下落した地点(小数点以下第一位を四捨五入して5%以上下落)の一覧

データ出所:国土交通省「地価公示」と「都道府県地価調査」から都市未来総合研究所が作成

発    行:みずほ不動産販売株式会社 営業統括部

〒103–0027 東京都中央区日本橋1–3–13 東京建物日本橋ビル

レポート作成:株式会社都市未来総合研究所 研究部

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